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第74話

40話とか諸々の伏線回収です

 皇会長に「すぐに親御さんに事実確認をしてくれないか!?」とお願いされ、そのただならぬ剣幕に僕は急いで家でのんびりしている筈の母さんに電話を入れた。


 でも、いくらコールを鳴らしても電出る気配がないので、次は休日だけど何をしているかわからない父さんに電話を入れた。母さんと違って父さんは数コールして出た。



『もしもし、どうした』


「あ、俺俺」


『息子は自分を吾輩っていいますが』


「ああ、今はそういうのは無しで、ちょっと父さんに聞きたい事があるんだけどさ」


『・・・わざわざ電話をしてまで聞きたいことってのはなんだ』


 何か勘違いをしているのか、父さんから居住まいを正す雰囲気が伝わってきた

 電話越しに、カツンと何かが当たる音がする。恐らくゴルフの打ちっぱなしに来ているんだろう。



「僕が小さい頃に、家族で東北のどこかの花火大会に行ったことあるよね?」


『あぁ、秋田の大曲の花火大会だな。懐かしいけどそれがどうした』


「僕って迷子になったりした?」



 そう言うと、父さんは『よく覚えてるな』と驚いた。


『あの時は本当に焦ったぞ』


「それでさ、どこかの家族連れに僕って保護されたかな」


『そうそう、聡明そうな旦那さんと綺麗な奥さん、あとお前と同じ位の歳の子だったな』


「・・・そうか、わかったありがと」


『お、おい、愛しのパパへの電話の用件ってそれd』



 これだけ聞ければ充分だった。もう間違いない。


 僕はすぐに、父さんから聞いた「秋田県の大曲」というワードを皇会長に報告し、僕が迷子になっている事も証言が一致している事を告げた。


 そうすると、糸が切れたようにソファにもたれかかった皇会長が「まさか・・・こんなことが」と呟いた後に、「そうか・・・ガオ君、元気にしていたんだな・・・」と、涙を堪えながら言うものだから、僕はとにかく戸惑うしかなかった。



◇◆◇◆◇◆◇◆



 "「あの子、元気でやってるかな。『またいつか会おうねって』って、私言っちゃったんだよね。心残りがあるとすれば、ガオ君とした約束を果たせなかったことかな」"



 棗さんのお母さん・・・苗さんが亡くなる直前に、花火大会で迷子だった僕の事を言っていた話を皇会長から聞いて、僕はどんな感想を口にすればいいのかわからなかった。


 言葉を失うほどにそれはよく出来た偶然で、脳が理解を拒むようでもあった。


 でも、紛れもない事実で、写真に写った僕が動かぬ証拠であり、僕と皇家を結ぶ拙い糸でもある。


 柊家と皇家の深い縁と比べれば大したことじゃない。

 結局は何にも繋がりのない他人である事に変わりはない。


 でも、椿と棗の運命に少しだけ参加できたような気持ちになった。




 客間の外で慌ただしい足音が聞こえたと思ったら、勢いよくドアが空き、棗が肩で息をしながら客間に入ってきた。


 知らない間に皇会長は棗に連絡を入れていたみたいだ。確かクラスの女子と遊んでいるはずだったけど、来るの早くない?

 


「お父さん本当なの!?」


 そういった瞬間には、棗は僕を捉えてズンズンと大股で近づいてきた。


 僕の全身をコピーして読み取るみたいな執拗な視線に思わずたじろぐ。

 そして、恐る恐るといった様子で口を開いた。その口ぶりから、棗の方がまだ心の整理が着いていないようにみえた。


「確かに面影は似ているけど・・・それでもこんな事って・・・あるの?」


「写真も確認したし、父さんにも聞いたから間違いと思う。僕が花火の時の迷子の子供だよ」



 そう言うと、突如視界が揺れた。そして身体に強い衝撃と温かみが伝わってきた。


 棗が僕に抱きついていた。実の親の前でなんとも大胆な、と思ったけど、皇会長も目に手をあてて涙を堪えていた。



 暫くは抵抗しないで受けれていた方がよさそうだ。

 それに、不思議と変な気持ちにもならない。



 彼女の身体が震えている。

 過去に会ったことがあるくらいで大袈裟すぎるんじゃないかと思ったけど、棗が今にも消え入りそうな声で「やっぱりあなただったのね」と囁いた。



 ようやく身体を離した棗が僕の目を見据える。

 縫われた糸が解け、緩々と口元が綻ぶように笑顔を作った棗が僕に言う。



「大きくなったね、迷子の少年」


「そっちも、随分と可愛くなったね」



 この時間だけ、幼い過去に戻ったようなやり取りに思えた。



◇◆◇◆◇◆◇◆



 その翌週末。


 丁度苗さんの命日が近いという事で、皇親子と椿と楓さんの5人で墓参りに訪れた。


 線香をあげる皇さんがお墓に手を合わせながらこう告げる。



「苗、ガオ君、見つかったよ。見つかったというよりも、とっくに棗の友達になってたんだ、凄いだろ」



 当たり前だけど墓は何も答えない。でも、目の前で、苗さんが僕に向かって微笑んでくれているような気がした。


 もしも苗さんが生きていたら、棗が僕に言ったように、「大きくなったね、ガオ君」と微笑んでくれるんだろう。


 こんなに一途に愛される人なんだ。きっとそうに違いない。




「ねぇ、雄君、せっかくだからみんなで写真撮らない?」


 帰り際、そう提案したのは椿のお母さんの楓さんだった。 



「も、喪服でですか?」


「もちろん。それに、苗のお墓を背景にして」


「いやいや、モラルってものがありますよ」


「法律で禁止されてはないしいいじゃない。それに、苗だってそうしないと『せっかくの機会なのに勿体ない』って騒いでるわよ」



 楓さんがそう言い切ると、皇会長が「確かに」と苦く笑った。

 苗さんは楓さんに似て結構破天荒な性格だったのかもしれない。




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