19-6
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(桜下!まずは、敵の魔法を知らないと!)
「おっけー!確かにこっちだけ知らないってのも、不公平だよね!」
まずはドルトヒェンに、手の内を明かしてもらおう!
「フェアに行こうじゃない!ガスト・オブ・スカイラーク!」
ロッドに魔力を込める。塵が集まり、無数の鳥へと姿を変える。このロッドを媒体にすれば、こちらも詠唱をスキップできる。だけどこの方法は、諸刃の剣だ。魔力の消費量が、何倍にも膨れ上がるから。だからこそ、向こうにだけ休まれるわけにはいかない!
「かける二十!」
(ええっ)
ライラの驚きも無視して、ボクは通常の二十倍の小鳥を出現させた。それは一般的に大群と呼ばれる規模であったし、鳥たちの持つ意味を考えれば、砲弾の雨あられとも言えるだろう。
「いっけー!」
ダダダダダッ!小鳥たちが、ミサイルのように突撃していく。ドルトヒェンは一瞬迎え撃とうか迷った様子を見せたけど、すぐに走って逃げだした。魔法を使わない気?こっちの意図に気付かれた?どっちにしても……
「逃がさないよ!」
ボクが手を振ると、小鳥たちもぐいんと軌道を曲げて、ドルトヒェンを追う。三百六十度、どこにも死角はないぞ!
やがてドルトヒェンは、壁際に追い詰められた。チェックメイトだ!
「つっかまえ……」
え?ドルトヒェンは、すぅと息を吸うと、両手を前に突き出した。
「エクシチューム!」
パァーン!彼女の両手から、弾けるような衝撃波が放たれた。まさしく煙が吹き飛ばされるように、小鳥の大群はかき消されてしまった。
「うっそー!?」
(あいつ、ただ逃げてたんじゃない!壁を背にして、まほーの有効範囲に、鳥を誘導したんだ!)
くっそ、やられた!ボクは悔しさを堪えて、にやりと笑う。
「やるじゃない、おねーさん」
ドルトヒェンは涼しい顔で、顔に掛かった前髪を払う。
「お褒めにあずかり光栄です。ですがこう見えて、かなりギリギリなのですよ、こちらも」
「あら、そう?だったら嬉しいねぇ」
くっ。ピキピキと青筋が浮きそうなんですけど。
(桜下。あの人の……じゃないや、あの魔族の言ってること、たぶん嘘じゃないよ)
「え?ライラ、それほんとう?」
(よく見て、魔力が乱れてる。疲れてるんだよ)
ありゃ、ほんとだ。さっきまで綺麗に集約していた魔力のラインが、今はノイズが走ったように乱れている。
「なるほど、青天井ってわけじゃあないんだね」
それなら、条件は五分と五分だ。てことはこの戦い、そう遠くないうちに、決着になりそうじゃないか。
「短距離走なら、出し惜しみはナシだ。フルスロットルで、飛ばしていくよ!」
どのみちボクらも、持久戦は得意じゃない。なら取るべき作戦は、ガンガンいこうぜだ!
「ジラソーレ!」
ボウッ!僕のロッドから、燃える火の玉が発射される。対してドルトヒェンは、手のひらをこちらに向けた。
「コメット!」
シュウウウウ!青い流星が真っすぐ飛んできて、火の玉にぶつかった。
ガガーン!火の玉が爆発四散した。黒煙が視界を遮る。けど、ボクには魔力が見える!
「バンブーシュート!」
「エクシチューム!」
間髪入れずに次の魔法を唱える。ボクの放った石筍は、正確に敵の魔法とぶつかった。スガーン!ガラガラガラ!二度の魔法の相殺によって起こった黒煙と砂煙とで、目の前がすっかり覆われてしまった。
「げほ、けほ!さすがにこれじゃあ、なんにも見えないね」
(桜下!なら、目を呼び出して!)
「いいね!それ採用!ダンデライオン!」
ズズズズ……スガガ!床を砕くようにして、太い前足と、たてがみのついた頭が生えてくる。岩石のライオンが、ボクの前に姿を現した。
「いけっ!」
ライオンは一声吠えると、煙の中に飛び込んでいく。少しすると、煙の向こうで、何かが光った。
「トライウィザード!」
グシャ!何かが砕ける音と、続けて、煙が激しく渦巻く!
(くるよ!)
「うん!」
ボクは空気を蹴って、宙へと舞い上がった。煙を突き破って、光り輝くオーブが飛び出してくる。オーブは今さっきまでボクがいたところをすっ飛んで行き、壁にぶつかって弾けた。
「くっそー。攻撃を防ぐどころか、撃ち返してきたよあいつ。やるなぁ」
(感心してる場合じゃないよ!)
「はーい。けど、困ったな」
煙が晴れると、その奥から、無傷の姿のドルトヒェンが現れる。ボクが呼び出したライオンは無残にも、そのわきで粉々に砕かれていた。
「……驚きました」
「うん?なにが?」
「あなたはこれまで、風、炎、そして地の魔法を使いましたね。つまりあなたは、三つの属性を魂に有しているということですか」
「へえ……さすが。詳しいね」
「三属性の魔術師は、人間では極めてまれだと聞いておりますが。勇者の成せる業、ということですか」
「ま、そーいうことにしといて。あ、でもおねーさんのことも、なーんとなく分かってきたよ……おねーさんの魔法、原理は分からないけど、ぜんぶ無属性魔法だね?」
さて、ちょっぴりカマも掛けているけど……どう出てくるかな?
誤魔化してくるかもとも思ったけれど、意外にもドルトヒェンは、あっさりそれを認めた。
「ええ。わたくしたち魔族の魔法は、主に無属性が中心です」
「へぇー……びっくり」
「驚かれることですか?無属性魔法は、もっともありふれた魔法でしょう」
「だからこそ驚きなんだよ。普通、無属性魔法は、威力が出ないものでしょ?」
無属性魔法は、世界に普遍的に存在する、マナと呼ばれる魔力を利用する。だからこそありふれていて、強くないのが一般常識なんだ。少なくとも、人間の間では。
「だけどおねーさんの魔法は、ボクのを全部打ち負かした。面目丸つぶれだよ、もう」
「わたくしの種族は、マナの扱いに長けているようです。あなた方人間が知覚できない、より微細なマナまで使用することができますから。その為ではないでしょうか」
「ふーん……にしてもおねーさん、ずいぶんあっさり、手の内を明かしてくれるね?」
「構いません。この程度を明かしたところで、戦況に影響を与えることはないでしょうから」
むっ。その発言、場合によっちゃ、ボクを舐めているってことにならない?それにさっきから、全然顔色も変えないし。余裕しゃくしゃくってこと?
「……よぉーし。それじゃ一発、驚かしちゃおっかな!」
その冷たいお面を、引っぺがしてやる!ボクはロッドを強く握ると、意識を集中した。
「アメフラシ!デザートラット!!ウィンドローズ!!!」
(い、いっぺんに三つも!?)
さあ、とくと見よ!闇雲に連発したわけじゃないぞ。これは連発じゃなくて、連結だ!
つづく
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読了ありがとうございました。
続きは【翌日0時】に更新予定です(日曜日はお休み)。
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