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じゃあ俺、死霊術《ネクロマンス》で世界の第三勢力になるわ。  作者: 万怒羅豪羅
17章 再会の約束
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19-4

19-4


俺とライラは、ドルトヒェンの待つガラスの壁の向こうへと向かった。ガラスの一枚板のような扉に近づくと、招き入れるように、自動でパッと開いた。


「ようこそ」


ドルトヒェンはずいぶん待たされたにもかかわらず、丁寧に頭を下げる。


「こりゃご丁寧に、どうも。待たせて悪かったな」


「いいえ。問題ございません」


うーん……今から戦おうって奴らの会話じゃ、ないよなぁ。気合が抜けていきそうだ。と、ドルトヒェンが小首をかしげる。


「あなた方が、お相手下さるのですか?……ご気分を悪くしないでいただきたいのですが、あなたがた二名は、人間と言う種族においては、かなり若い方々であるとお見受けするのですが」


少年と幼女の組み合わせじゃ、そういうリアクションにもなるか。


「まあな。確かに俺たちは子どもだけど、いちおう、元勇者なんだ。少しはいい勝負ができると思うけど」


勇者と聞いて、ドルトヒェンの顔が少しだけ強張った。


「なるほど、そういうことですか。失礼いたしました。では、あなた方二名の勇者で、戦いに望まれるのですね」


「厳密には違うけれど……まあいいや、細かいことは。それよりも、ライラ。ちょっと頼まれてくれるか?」


「ん?なぁに?」


俺はライラの耳もとに口を寄せる。


「いいか……こら、くすぐったがるな。大事なことなんだから」


「んふふふ……いいよ。それで?」


「これから話すことを、連合軍に聞かれないようにすることって、できるか?」


ライラはきょとんとしたが、すぐにうなずいた。


「できるよ。完全にではないけど。いい?」


「聞こえづらくしてくれれば、十分だ」


「わかった。……スフィアリウム!」


それほど複雑な呪文でもなかったのか、魔法はすぐに完成した。ふわ、とそよ風があたりに吹く。空気の膜が、俺たちの周りでうねっているみたいだ。


「これでもう、ライラたちの声はほとんど聞こえないはずだよ」


「ありがとう、ライラ。さてと……ちょっと、ドルトヒェンさん」


このために、わざわざ慣れない役目を買って出たんだ。さて、上手くいくといいのだけれど。


「少し、俺の話を聞いてほしいんだけど」


「かしこました。なんでございますか」


「そう固く構えないでくれよ。もしかしたら、お互い無駄なことしないで済むかもしれないってことさ。ええっとさ、実は俺たち、あんたのことは前から知ってたんだ」


「ん……?すみません、以前どこかでお会いしていましたか?」


「いいや。そうじゃなくて、話を聞いたんだ。ある筋からの情報さ。それによると、あんたはどうやら、心優しい魔族ってことになるらしい」


「……そんな話は、初耳ですね」


む。あんまり、嬉しそうじゃないな。不本意な評価ってことか?


「その話は、どちらからお聞きになったのですか」


「ああ。レーヴェって子、知ってるだろ。その子にだ」


「……」


レーヴェの名前を聞いた、ドルトヒェンの反応は……無反応だった。え、マジかよ?レーヴェの話じゃ、ドルトヒェンもかなり気に掛けていたようだったのに……ほんのわずかに、片方の眉を持ち上げたようにも見えたけど、それだけだ。ずいぶん薄いリアクションだな……なんだが雲行きが怪しくなってきたが、とりあえず話を続けてみよう。


「あーっと。で、そのレーヴェから聞いた話と、あんたの提案を合わせてみると、こういう道も選べるんじゃないかな。つまりあんたとなら、戦わずに済むんじゃないかってことなんだけど」


「……わたくしが、犠牲を少なくしようと提案したからですね」


「ああ。信じてもらえるかは分かんねーけど、俺も殺しはしたくないんだ」


「殺しを?失礼ですが、こちらには戦争のために来たのでは?」


「いや。俺たちは、攫われた人たちを取り戻しに来ただけだ。あんたら魔物が立ちはだかるなら戦うし、そうじゃないなら戦わない。無駄なことする必要はないだろ。あんたも、同じ考えなんじゃないのか?」


だからこそこいつは、こんな提案をしてきたんだろ。なら、お互いの利害は一致しているはず。


「もし同じなんだったら、協力し合えないかな。つまり、あんたは、俺たちを無事に通してくれる。その見返りに、俺たちはあんたのことを尊重する。要求があるなら言ってみてくれよ。できる範囲で……」


「お断りします」


「……へ?」


……なんだって?拒絶は、あまりにも淡々と、あまりにも冷徹に告げられた。そのせいで俺は、とっさに反発ができなかった。


「……ひとまず、理由をお聞かせ願えないか」


なんとか、それだけを捻り出す。いったい、どうして?


「理由は、三つあります」


ドルトヒェンは、黒い爪の生えた指を三本立てる。


「まず一つ、わたくしの使命は、みなさまをこの先に通さないことです。それが守れない以上、あらゆる取引は無意味となります。二つ、わたくしは犠牲を出さない提案をしましたが、それは無駄を省くという観点からの提案です。死を拒んだつもりはございません。この後に起こる戦いは、わたくしか、あなた方か、どちらかの死によってのみ幕を引かれるでしょう。そして、三つ」


ここまで一気にまくしたてると、ドルトヒェンは軽く息を整え、そして言った。


「わたくしは、レーヴェなどという名前に聞き覚えはありません」


「なっ」


「なに、それ!」


俺と、それからライラが声を荒げる。ずっと大人しくしていたライラも、さすがにこれは看過できないようだ。


「そんなはずない!だってあの子、お前のこと、すごく大事そうだった!」


「では、それは一方的な感情だったという事でしょう。わたくしは、誰かと懇意になったつもりはありませんので。そのような歪んだ視点だったからこそ、わたくしが優しいなどという誤解が生まれてしまったのでしょう」


「な、何言ってんの?ぜんぜん、意味わかんないよ!」


俺は唇を噛むと、ドルトヒェンを睨む。


「……すべては、レーヴェのお人形遊びだった。そう言いたいのか?」


「詩的な表現です。単なる誤解、勘違いでしょう」


……そんな、馬鹿な!レーヴェはとても親し気に、ドルトヒェンのことを語っていた。あれが勘違いだなんて……そんなの、悲しすぎる。


「……信じられねーな。あんたは、嘘を言っている」


「そう思われますか?ですが、残念です。これが嘘か(まこと)かに、意味はありません。この部屋へとやって来た時点で、わたくしとあなたは、殺し合う運命にあります」


「どうして……!なんであんたは、魔王を守るんだ?今の魔王は、魔物ですらないんだろ。人間のために、どうして魔物が命を懸けるんだよ!」


すると、ドルトヒェンの顔に影が差した。


「……おっしゃっていることは、正しいと思います」


「なら、考えればわかるだろ!あんたにとって、本当に大事なのは誰だ?魔王か?それとも、あんたを慕ってくれてる子か?一体どっちが、あんたを幸せにしてくれるんだ!」


「……わたくしは、自分の幸福に興味がありません」


くっ!このわからずやめ、あくまで譲らないつもりか……


(……ん?)


ちょっと、待ってくれよ。今こいつ、自分の幸福に興味がないって言ったか?それに、さっきの俺の問いかけに対しても、正しいと肯定してきた。それなら、こいつが戦う目的って……


「もしかして、あんた……」


「さて、問答はこのくらいでよろしいでしょうか。嘆かわしいことですが、言葉による解決は望めないようです。原初の法則に従い、血と闘争によって、解決を図ることといたしましょう」


「え?おい!まだ話は……」


「いいえ、ここで終わりです。さあ、武器を。さもなければ、こちらから仕掛けさせていただきます」


ぐああ、くそったれ!やるしかないのか!


「ちくしょう!こうなったら、ぶん殴って言うこと聞かせてやる!やるぞ、ライラ!」


「うん!」



つづく

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読了ありがとうございました。

続きは【翌日0時】に更新予定です(日曜日はお休み)。


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Twitterでは、次話の投稿のお知らせや、

作中に登場するキャラ、モンスターなどのイラストを公開しています。

よければ見てみてください。


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https://twitter.com/ragoradonma

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