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じゃあ俺、死霊術《ネクロマンス》で世界の第三勢力になるわ。  作者: 万怒羅豪羅
17章 再会の約束
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三幹部、ドルトヒェン……!


「あっ!桜下さん、あれですよ!レーヴェさんの!」


言われるまでもない。レーヴェが言っていた、優しい魔族だ。俺はまじまじと、ドルトヒェンを見つめる。しかし、見れば見るほど、気味悪いくらい落ち着いている。それに、華奢で弱そうだ……けど、侮っちゃいけない。あいつは魔王軍三幹部の一体。相当な実力者だな。見た目に騙されるところだった。


(つっても、いったいこれは、何のつもりなんだ?)


彼女は、レーヴェが捕えられていることを知っているのだろうか?こんなおかしな出迎え方をしたのには、それが関係しているのか?

ドルトヒェンは俺たち連合軍を端から端まで眺めると、落ち着いた調子で続ける。


「さて、みなさまがここにおいでになった理由は、わたくしもよく存じております」


おいでになった理由だと?冗談で言っているんじゃないよな。


「そこで。わたくしから一つ、みなさまに提案があります」


「提案……?」と、連合軍がざわついた。


「そうです。このまま両軍がぶつかり合えば、まず間違いなく、わたくしは敗北するでしょう」


……ん?俺の耳がヘンになったのか?敗北する?俺たちじゃなくて、ドルトヒェンが?


「三幹部と聞いて誤解されたかもしれませんが、わたくしの実力は、それほど高くはありません。みなさまの総攻撃にあえば、わたくしはあえなく殺されることでしょう」


……は?なんだ、なんだ。敗北宣言?

どうにも様子がおかしいというのは、じんわりとみんなに広がっていった。兵士の中からも、失笑や、せせら笑いがちらほら聞こえる。やじのような声が飛んだ。


「だったら、そこをどけ!しっぽを巻いて逃げ去るがいい!」


「あいにくですが。わたくしとしても、おいそれとみなさまを通らせるわけにも参りません。分かり切った敗北は、逃走への免罪符とはならないのです」


……つまり、それは。


「申し訳ありませんが、抵抗させていただきます」


やっぱり、そういうことか……もしかしたら、戦わずに済むかと思ったのに。だってあいつ、根は優しいやつなんだろ?


「さて、わたくしの推定では、みなさま方の総兵力に、三十パーセントほどの打撃を与えることが可能かと存じます」


空気が再びひりついた。俺たちの三割をぶっ殺せるだって?それも、たった一人で。なかなかな言い分だが、腐っても三幹部様の言うことだからな。連合軍の屈強な兵士たちであっても、笑い飛ばすことは難しいようだ。


「いかがなさいますか。それでも構わないとおっしゃるのであれば、不本意ですが、お相手いたします。が、わたくしの提案をお聞きくださるのであれば、そういった無駄な犠牲を出すことなく、勝敗を決することができるでしょう」


ドルトヒェンは一度言葉を区切ると、喉を整えるように、軽く咳払いをした。


「んんっ……すでにこの戦争では、数多くの血が流されました。双方にとっても、犠牲は少ない方が得策でしょう。そこで、提案します。今からわたくしと、一対一で戦っていただきたいのです」


なんだって?サシでタイマン勝負しようって言うのか?さすがに看過できないと見たのか、兵士たちの中からだみ声が上がった。エドガーだ。


「何をふざけたことを!集団戦ではかなわないからと、自分の有利な条件に持ち込もうとしているだけではないか!」


「そういった意図はございません。その証拠として、戦う相手はみなさまが選んでいただいて構いません。無論、それが勇者と呼ばれる方であってもです」


勇者の名が呼ばれて、仲間たちがびくんと緊張した。確かに勇者が相手なら、タイマンでもいい勝負になりそうだが。


「わたくしはあくまでも、被害を大きくしないために提案しているのです。大人数での乱戦よりも、一騎打ちの方がより消耗も少なく、短時間で決着が付くでしょう?」


「魔物の言うことなど信じられんわ!一騎打ちだのと抜かして、他に伏兵がいない証拠がどこにある!」


「ご安心ください。この部屋に、わたくし以外の魔物は存在しません。もし仮に、そのような事態になったとしても、みなさまの行動は制限いたしません。つまりみなさまは、いつ何時でも、戦いに参加されて結構だということです。しかしその場合、余波が及ぶ可能性があることをお忘れなく」


「は、はあ?」


「提案に従っていただける場合、このガラスの壁の内側に来ていただきます。この壁は、魔力を遮断します。この壁の外にいる限り、被害が及ぶことはありません。危険だと思われましたら外に出ても構いませんし、逆に助太刀に入っていただいても結構です」


「……」


とうとうエドガーは、二の句が継げなくなったみたいだ。呆れてしまったのか、驚いて言葉を失くしたか。このドルトヒェンとかいう魔族、本気で、最小限の戦いをしようって気らしいぞ。


(なかなかどうして、面白いやつもいるじゃねーか)


魔王軍ってのは、どいつもこいつもヴォルフガングみたいな奴なんだと思っていたけれど。こいつの言っていることは、狂おしいくらいに、俺好みだ。


「その勝負、乗ったぜ!」


俺が大声で名乗り出ると、仲間たちはびっくりして(ウィルなんて、数十センチほど飛び上がった)、こっちに振り返った。


「ち、ちょっと!何考えてるの!」


「だから、一対一で戦おうってんだろ?その相手にもがもが」


「あ、あー!混乱してるみたい!ダイジョウブチョットオチツイテ!」


俺は口を塞がれたまま、フランにぐいっと引っ張られた。肩に腕を回されると、フランが顔を寄せて、ひそひそ声で噛みついてきた。


「あなたまさか、あの女の言ってること、信じてるの?」


「もちろん……とは、さすがに思ってないかな」


「え?」


フランがきょとんとする。他の仲間たちも集まってきた。


「桜下さん、どういうつもりですか?」


「ああ。一度、あいつと話してみたいんだよ」


「あいつって……あの魔族と?」


「そう。レーヴェが言ってたろ。あいつは、争いを望んでいないって」


「でも、戦うつもりではあるみたいですけど……」


「ああ。何か事情があるのかもしれねえ。確かめるためにも、な。それに、勝算が無いわけでもないんだ」


「え?勝算、ですか?」


「もちろん。じゃなきゃ、危険な賭けはできないよ。幸い、あいつは一騎打ちがしたいってことしか言わなかった。あの中に入るのは、二人以上でもいいんだったよな?」


「それって……まさか!」


ウィルが目を丸く見開く、俺はうなずくと、キーパーソンの方を向いた。


「ライラ。俺と一緒に来てくれないか」


ライラは二つ返事に、こくんとうなずいた。俺の隣に来ると、きゅっと手を握ってくる。


「使って、桜下。ライラの、魂」



つづく

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読了ありがとうございました。

続きは【翌日0時】に更新予定です(日曜日はお休み)。


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