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じゃあ俺、死霊術《ネクロマンス》で世界の第三勢力になるわ。  作者: 万怒羅豪羅
17章 再会の約束
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8-1 ウィルの秘密兵器

8-1 ウィルの秘密兵器


ウィルの、秘密兵器?

俺はこの戦争が始まる直前の、一の国へと移動する馬車の中を思い出した。


(あの時、俺とウィルは……)


そうだ、二人で一緒に、新し戦い方について話し合ったんだ。それからウィルは、ライラと一緒に、何かの準備を進めていた。俺が訊いても教えてもらえなかったが、それが今、ついに火を吹くのか!


「私が、あの球体の出所を、破壊します。この方法なら、魔法を防ぐバリアを抜けて、砲台にも察知されずに、城に侵入することが可能です。この方法は、私にしかできません」


ウィルにしか、できない方法。あの馬車の中で俺は、ウィルの強みを活かしたらどうかとアドバイスした。そしてウィルは、とうとうその方法を見つけたんだ。


「ウィル。わかった、お前に頼む。あいつらの基地を、ぶっ飛ばしてくれ」


ウィルは強くうなずき返す。


「任されました!」




ウィルはキャンプ地まですっ飛んでいくと、あっという間に戻ってきた。パンパンに膨れたカバンを持って。


「それ、何が入っているんだ?」


「スクロールです」


スクロール?魔法を閉じ込めた巻物のことだったよな。


「確かそれ、恐ろしく高価だったんじゃ……?」


「ああ、これは全部手作りなので。ライラさんにも手伝ってもらって、今まで作っていたんですよ」


な、なに?スクロールって作れるの?それを早く聞いておけば、一儲けできたのに……なんて、今銭ゲバ根性を見せてもしょうがない。そう言えば前に、ウィルに大量の紙を手配してくれって頼まれたことがあったな。そうか、あの時のあれが……


「で、それをどうするんだ?」


「私が城の中まで運んで、全部ぶっぱなします」


「な、なに!」


「私一人じゃ、破壊力のある魔法は使えません。なのでいざという時のために、あらかじめスクロールという形で、魔法を溜めておいたんですよ。これをすべて使えば、一瞬ですが、ライラさんの最大火力に迫ることくらいはできるはずです」


そぉ、それはすごいな……カバンに無造作に突っ込まれた巻紙が、全部ダイナマイトに見えてきたんだが……


「でも、それをどうやって運ぶ?」


「はい。そこで、桜下さんの力を借りたいんです」


「俺の力?」


「このカバンを、一時的に、私と同調させてくれませんか?」


ああ、そうか!ネクロマンサーである俺がありったけの魔力を込めれば、物を一時的に霊魂と同調させることができる。シェオル島では、それでウィルが水着に着替えるのを手伝ったっけ。あれは刺激的な経験だった……って、思い出に浸っている場合じゃない。


「わかった。そうやって忍び込むんだな」


「ええ。用心のために、私は地面の下を移動します。カバンは私に同調していますし、あのバリアは魔法以外は防がないはずですから、すり抜けられるはず。ただ、絶対に探知されないとは限らないので……」


「そうだな。ウィルは普通の人間には見えないけど、モンスターには見えるらしいから」


「ええ。ですので皆さんには、あの砲台の注意を引いて欲しいんです」


ウィルが目を向けると、仲間たちは固くうなずいた。


「決まりだな。よし、始めよう」


俺はウィルのカバンに手を付き、全力で魔力を込めた。カバンが一瞬、輪郭を失ったようにブレる。ウィルはそれを引っ掴むと、水に潜るように、地面の下へと消えた。そのちょうど同時くらいに、浮遊砲台の攻撃が始まった。漆黒のビームが、容赦なく連合軍を襲う。


「ちくしょう、来やがったな!あいつらの気を引こうだなんて、ゾッとするぜ!」


フランはにやりと笑うと、スピアを投げた。お返しとばかりに、三本のビームが飛んでくる。ロウランは盾を展開すると、さらに自分の足を包帯で地面に固定した。それでもビームを防ぐと、ロウランは数センチずつ後ろに押し戻されている。


「ライラ!なんでもいい、なにか派手な魔法で目を引けないか?」


「派手なまほー……」


ライラは考えるように下を向いたが、アルルカはすぐにうなずくと、肩に掛かった髪をかき上げながら言った。


「ようは、倒せなくってもいいんでしょ?大騒ぎさえすれば。簡単じゃないの」


アルルカが挑発するようにちらりと見ると、ライラはかーっと頬を赤らめた。


「ら、ライラだってそれくらい、あさしめ(・・)まえだよ!」


「あーら、その割にずいぶん悩んでいらっしゃったみたいですけど?」


「お前と違って、ライラはちゃんと考えてるからだもん!」


「そ、それじゃあたしが考えなしみたいじゃないのよ!」


「みたいじゃなくて、そうじゃん!」


「二人とも、口喧嘩は生き残ってからにしてくれ!」


この状況で口論できるっていうのは、ある意味ものすごい胆力だ。二人はいがみ合いながらも、ぴったり息を揃えて詠唱を開始した。


「アントルメ・グラッセ!」


ザシャシャー!パキパキパキ!アルルカの杖から冷気がふき出し、氷の塊をどんどん大きくしていく。


「プレイング・マンティス!」


ライラが地面に両手を付けると、目のまえに巨大な岩の塊が出現した。氷と岩、二つの柱が立ったわけだが……これが目を引く魔法か?俺が首をかしげていると、二つの柱に、同時にひびが走った。え?く、砕けるぞ!


ガシャァァアン!けたたましい音を立てて、氷柱が砕け散った。その中から、巨大な翼と四肢を持つ怪物が姿を現す。ガーゴイルだ!

バガアァァァァ!うわっ、今度は石柱が砕けた!中から現れたのは……細い足、ぎょろりとした目玉、そして鋭い鎌。か、カマキリ!?牛を丸ごと平らげてしまいそうな、馬鹿でかいカマキリだ!


「こんだけでかいのが暴れたら、嫌でも目を引くってもんよ。さあ、行きなさい!」


「ライラも!負けてられないよ!」


二人の気合に合わせて、ガーゴイルとカマキリは、猛然と突撃を開始した。


「うわあぁぁぁ!」


事情を知らない連合軍からは、悲鳴が上がった。そうだよな、どこからどう見ても、怪獣はこっちだ。二体の魔導獣は地響きのような足音を響かせ、そして飛んだ!ええ、あの巨体で飛べるのかよ!?ガーゴイルは翼で、カマキリは羽を羽ばたかせて、浮遊砲台に襲い掛かる。二体の攻撃はバリアに阻まれはしたが、その質量をも無効化することはできない。ガーゴイルの丸太のような腕に殴りつけられた砲台は、ガキンと快音を響かせて吹っ飛んだ。そしてカマキリの鎌に叩かれた砲台は、他の砲台にぶつかって玉つきになった。こっちはビリヤードか?


「む、むちゃくちゃだ……」


前に、炎と水の竜の戦いを見た時にもそう思ったけれど。やっぱり魔法ってのは、俺の常識のはるか上を行く技術だ……



つづく

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読了ありがとうございました。

続きは【翌日0時】に更新予定です(日曜日はお休み)。


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作中に登場するキャラ、モンスターなどのイラストを公開しています。

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