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第四十二話 予想もしなかった再会




「ピンポン〜、ピンポン〜」


「もお〜、うるさいなぁ」




 余りにも、シツコク押されているインターホンに。

悪態を付きながらも、一階へと降りていく。




「誰だよ〜」


(ポチッ)


「えっ!」




 玄関に行き、インターホンのポタンを押し、モニターを見ると。

画面に写った人物の姿に、驚いてしまった。



 ーーどうして、千早ちゃんが……。



 画面には、この時代に居ないはずの、千早ちゃんが写っていて。

僕は幻を見ているのでは無いかと、目をこすってもう一度見る。




「ええっ、水樹ちゃん?」




 しかし、もう一回見直すと、今度は別の意味で驚いてしまった。

画面に写っていたのは、何と、大昔に別れを突き付けられた、水樹ちゃんだった。


 しかし、パッと見た目、前髪を切り揃えた背中までの長さの黒髪。

そして、小さな顔にクリクリとした大きな瞳。

見れば見るほど、千早ちゃんに似ていた。


 ただ今までは、釣り上がり気味の眼に、鋭い視線。

嫌悪感丸出しの、雰囲気をただわせていたので、全く気が付かなかったのだ。


 しかし、今の彼女は。少し垂れた眼に優しい眼差しをたたえ。

柔らかな笑顔を見せていたのである。


 その表情が千早ちゃんにソックリで。

だから一瞬、彼女に見えたのだ。




「あ、早く開けないと」




 予想もしてない人物の出現に、僕は混乱していたが。

取り敢えず、会って話をしないとイケないと思い、急いで玄関を開けた。




 ・・・




(ガチャ)


「……」




 玄関を開けると、出てきた僕を、水樹ちゃんが息をむ様に見た後。




(ポロポロ……)


「なおくん、会いたかったよ……」




 泣き笑いの様な表情になり、声を絞り出すように出した。


 僕の呼び方を聞いて、違和感を抱く。

昔だけど水樹ちゃんは、僕の事を“尚ちゃん”と呼んでいて。

“なおくん”とは呼んでいなかった。


 これでは丸っきり、千早ちゃんではないか?




「水樹ちゃん、どうしたの急に?」


「なおくん、私、思い出したの」




 イキナリの豹変ひょうへんぶりだけで無く、千早ちゃんと見間違えた事に、混乱していたが。

話をしない事には始まらないので、彼女に問い掛けると。

話し方も、千早ちゃんみたいにして話し始めた。




「昨夜、寝ている時に、前世の事を急に思い出したの」


「えっ?」


「前世で私は、吉塚千早と言う女の子で。

体が弱く長く生きていられないから、理想の男の子と会って恋愛をしたいと思って。

それで儀式をやって、なおくんを呼び出した事を」


「ええっ!」




 突然言われた、全く想像も付かない内容に。

何回目になるか分からない、驚きの声を上げた。




「じゃあ、本当に千早ちゃんなの……」


「そう、正確に言えば、千早は前世で。

今は、水樹なの」




 ようやく、目の前の彼女が水樹ちゃんだけど。

千早ちゃんでもある事を理解した所で、彼女が、僕が帰った後の事を話し出した。




 ・・・




 ************





 魔法陣の中で光に包まれながら、未来へと帰ったなおくん。




「はあ、帰っちゃった……」




 光が次第に消えてゆく中、儀式が無事に済んだ感慨かんがいふけっていると。




「ところで、千早。

アンタの望みは何ね()?」


「えっ?」


「もう忘れたとね()、アンタの望みはまだ聞いてなか(無い)よ」


「ああ、そう言えば」


「もう儀式()したけん(から)、寿命はどぎゃん(どう)しようもか[無い]とばってん(けど)

人の命に関わる事以外の事なら、出来るだけ聞くけんが(から)




 中に浮いている、精霊さんに言われて。

まだ、自分の望みを決めてなかった事を思い出す。


 急に言われて、どうしようかと悩んでいると。




「千早、今、アンタがしたか[したい](こつ)ば[を]、思い浮かべれば良かけん(良いから)




 精霊さんに言われて思い浮かべたのは。

“もう一度、なおくんと一緒に居て。今度は、絶対離れたくない”

と言う事であった。




 ーーもう、長くは生きられないから。

   どうせなら、今度は、なおくんの時代に生まれ変わりたい。


 ーー確か、なおくんには、冷たい幼馴染が居たよね。

   私がその幼馴染になって、なおくんを慰めてやりたい。




 すると、私はどうしたいかが、自然と思い付く。




「精霊さん。

私をなおくんの、幼馴染に生まれ変われる事は出来ますか?」


「なるほど、転生ね。

私は、転生は管轄外ばってん(だけど)

せやけど(でも)、転生の精霊には貸しがあるけん(から)、それを盾にすれば出来るばい()


「じゃあ、出来るんですね」


そうたい(そう)、出来るけん(から)

大船に乗ったつもりで()らんね[居なさい]」




 精霊さんが、短い翼で胸を叩きながら、そう言った。




「じゃあ、私はもう戻るけど。

千早、体は大丈夫ね?」


「ええ、結構、疲れてしまいましたけど。

特に目眩めまいがしたりとか、気分が悪いとかは有りません」


「うん、今はそうやけど(だけど)

これから、生命力が無くなるに従い、体調が悪くなって行くけん(から)

気を付けんね(付けなさい)


「はい」


「もう会う事は無か(無い)けど。

望み通りに、生まれ変われたら良か(良い)ね」


「ありがとうございます」


「それじゃあ、ここでお別れ()ね」


「どうも、ありがとうございました」




 別れの言葉をべた後、精霊さんの体が光りだしたかと思っていたら。



(カッ!)




 閃光がした瞬間に、目の前が真っ白になり。

それからしばらくの間、目がくらんで。

目が慣れた頃、精霊さんの姿は見えなくなっていた。


 後には、静まり返った草原と少しだけ欠けて月、地面に描かれた魔法陣。

そして、一人きりになってしまった私。


 一転して、寂しくなった周囲だが。

私の心は反対に、とても満たされていた。




 ーーなおくんと、再び会える事が出来る。




 そう思うと、これから命が尽きようとしていく恐怖も。

何だか、薄まった様な気がした。





 ************




 ・・・




「そうだったの……」


「うん、私がお願いして、この姿(水樹)に生まれ変われる様にしたの」




 僕は彼女から、僕が帰った後の事を聞いて、驚いていたのであった。


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お姉さん先輩に可愛がられる、後輩男子のイチャイチャした物語です。
図書室の天然天使
男として生きるのに疲れた少年が、女の子に肉体転移して。
その可愛い弟を可愛がる物語。

優しいお姉ちゃんと可愛い弟
姉弟物の短編が多いので、どうか、お越し下さい。

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