出揃った代表選手
校内デュエル大会の進行は順調で、想定していたよりもスムーズに決着が付いていく。
これは、戦闘慣れしていない生徒が多いためであり、まともな戦いの駆け引きなど起こらず魔法力が強い方が一方的に相手を攻撃し、一瞬で終わってしまう試合がほとんどであったからだ。
「アルトさん、AグループとBグループ共に決勝戦まできましたわ。いよいよ代表者が決定されますわね」
コロシアム型のデュエル会場では、仕切りによって二つのバトルフィールドが形成され、AグループとBグループ両方の決勝戦が開始された。会場内のボルテージは最高潮に達しており、観戦する生徒達からは声援や闘志を焚きつけるような煽りが飛び交う。
そんな中でリンザローテとアルトは観客席の最上階から双方のフィールドを眺め、デュエルの行く末を見守っていた。
「Aグループの方は、もう終わりですね」
「ヴァルフレアの勝ち、ですわね」
Aグループの決勝へと勝ち進んでいたのはヴァルフレアで、そのS級魔法士としての力はダテではないことを証明してみせる。
デュエルの相手に対しフレイムバレットを叩きつけ、更にウインドトルネードによる追撃を仕掛けて瞬時に無力化したのだ。
「約束通り、ヴァルフレアは代表として選手団に加わってもらうことになりますわ。あとは、彼が協調してくれると願うだけですわね」
ヴァルフレアとアルトは因縁があるため、この二人が共同戦線を張るシーンがどうしても思い浮かばない。
特にヴァルフレアの方は明確な殺意をアルトに対し抱いており、二か月前には自分を慕っていたホランを利用して殺そうと画策していた程なのだ。
だが、そうとは知らないアルトは、こうなったら学校のためにも私情を抜きにして事に当たろうと決意する。
「Bグループは……ウィルが頑張っているな」
普段のウィルはおちゃらけているものの、確かな実力を持っている。ここまで危なげなく勝利を掴んできて、このBグループ決勝でも対戦相手を圧倒しているようだ。
そのウィルは、相手を魔法で牽制しながら観衆の、主に女子生徒達に向けて手を振りながら何やら呼びかけていた。
「キミ達ー! このオレ様、ウィル・ステークの活躍をちゃんと目に焼き付けておいてくれよなー!」
この男、相変わらずである。いつでもどこでもモテたいという欲求だけが最優先らしい。
そんなウィルに黄色い歓声が飛ぶのは、分かりやすい強さを見せてくれるからだろう。ついでに顔もいいとなれば、注目を集めて当然ではある。
「下級生如きが調子に乗るんじゃねぇぞ! ウィル・ステーキだかなんだか知らんが、ブッ飛ばしてやる!」
「ステーキじゃねぇ! ウィル・ステークだ!」
対戦相手に煽られて怒りながら、ウィルは攻撃を再開する。フレイムバレットの火炎弾を放ちつつ、距離を詰めていく。
「んなもん知ったことかと言った!」
「上級生だからって手加減すると思うなよ! いけ、カース・サイレンス!」
ウィルが唱えた沈黙魔法であるカース・サイレンスは、紫色の魔法弾となって対戦相手である上級生へと飛び出す。これがヒットすれば、魔法の詠唱が不可能になるので確実に勝利できる。
しかし、魔法弾はバリアフルシールドによって防御されて弾け散ってしまった。爆発するように四散し、モヤだけが立ちこめる。
「へっ、こんな程度で……何ッ!?」
「甘いんだよ!」
対戦相手がバリアフルシールドを張るため足を止めた隙を突き、ウィルは一気に接近していく。まだ両者の間には五メートル程の距離があるが、この距離ならば狙いを付けずとも攻撃魔法を直撃させるのは容易だ。
「フレイムバレット!」
ウィルが差し向けた掌から、高速で火炎の弾が撃ち出された。魔法の中でも特に速度が速く、S級でもなければ防ぐのは難しい。
だからといって回避しようにも、戦闘慣れしていない者では咄嗟に動けはしないのだ。
「しまった…ッ!」
上級生は肩にフレイムバレットの一撃を受け、負傷して大きく体勢を崩す。
「勝たせてもらうぞ!」
そして、そこにウィルの再びのカース・サイレンスが飛んだ。
これによって魔法を唱えることが不可能になり、Bグループ決勝戦はウィルの勝利が確定した。
校内デュエル大会で勝利したヴァルフレアとウィルの二名は表彰を受け、選手控室にてリンザローテとアルトに対面する。本戦とも言える全国デュエル大会では、この四人でチームを組んで他校と競い合うこととなるのだ。
「リンザローテ、オマエの言うように勝ってみせたぞ。これで文句はないな?」
「…ええ。アナタも代表の一人になったわけですわ。そのご自覚をお忘れなきよう」
「フン、強ければいいんだろ? ヴァルフレア・ドートルの力を発揮すればな」
ヴァルフレアは不愉快そうに吐き捨てて、アルトを一睨みしてから控室から出ていく。仲間として力を合わせる気など毛頭無いようで、高慢な己惚れだけを抱いていた。
「なんだ、アイツ。機嫌悪ィのか?」
「お気になさらず、ウィルさん。彼は……わたくしやアルトさんが気に入らないんですのよ」
「ふーん……ま、そりゃどうでもいいんですよ! こうして生徒会長とご一緒できるなんて、オレ感激っス! よろしくお願いしますです!」
「よ、よろしくですわ」
いけ好かないヴァルフレアなど忘れ、ウィルはリンザローテの手を握りブンブンと振るう。憧れのリンザローテとお近づきになるのも今回のデュエル大会に参加した理由の一つで、それが叶えられて本当に感激して涙を振り撒いている。
「Bグループを制したウィルさんには、わたくし達と共に全国の舞台で戦っていただきます。チーム対抗戦の四対四での勝負となりますから、個々の能力は勿論のこと、お互いをカバーし合う協調性も必要となってきますわ」
「任せてくださいよ! オレ、リンザローテ会長のためにも死ぬ気で頑張りますから!」
「そ、そうですか。期待しておりますわ」
「ところで、もしよろしければオレとデートを……」
どさくさに紛れてリンザローテをデートに誘おうとするウィル。
この勢いならば承諾してもらえると思ったが、
「ウィル! あんたってヤツは下心しかないのかーッ!」
控室に轟く女性の怒声。
その声の正体はシュカで、ウィルが変な気を起こしてリンザローテに迫ろうとするのではと危惧して様子を見に来たのだが、まさに思った通りの行動を起こしているのを発見したのだ。
「シュカ!? なんでココに!?」
「あんたの考えなんてお見通しだからよ! 生徒会長から手を離しなさい!」
どこから取り出したのか巨大メガトンハンマーを手にしたシュカは、それをウィルに叩きつけて吹っ飛ばす。まるでインパクトウインドが直撃したように、リンザローテの視界から勢いよく横に飛んでいった。
「申し訳ありません、リンザローテ会長。ウィルはウチが叱っておきますから、代表権の剥奪は勘弁してあげてください……」
「べ、別に彼を罰しようとかは思っておりませんわ。デートはお断りさせていただきますが……」
「なら良かった! あんなのとデートしたらロクなことになりませんから」
ウィルと同じようにシュカも素直な性格ではなく、ヤキモチを焼いているのを悟られないよう誤魔化す。本当なら自分だけを見ていてほしいのに、ストレートに言えるだけの度胸は無いのだ。
「くっそー、もしかしたら上手く誘えたかもなのに……惜しかったぜ」
「そうかな…?」
「次こそはキメてみせるもんね!」
まだ諦めていないウィルは、シュカのいない隙を狙って再チャレンジするつもりのようだ。
アルトはヤレヤレと首を振りつつも、ウィルが代表選手としてメンバーに加わって良かったと思う。
だが、ヴァルフレアのことを考えれば、前途多難と言わざるを得なかった。




