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襲撃のナイト・ストライカー

 荒野から古代遺跡へと侵入したナイト・ストライカーは、先陣を切ってドワスガルの学生や教師を襲撃する。攻撃魔法をバラ撒き、反撃の隙を作らせないレベルで乱撃を放つ。


「フ、雑魚どもは引っ込んでいるといい。死にたくなければ妙な正義感で私に盾突かないことだ」


 パニックになる学生達は逃げるだけだが、それを引率する教師の一部からは反撃が飛んでくる。

 しかし、ナイトは華麗に回避と防御を使い分け、圧倒的な戦闘力で吹き飛ばしていく。詠唱をしないで強力な魔法を行使する彼は正真正銘のS級魔法士であり、A級の教師陣では対抗するのは難しかった。


「チッ、派手にやりやがって…! 隠密しようという考えは無いのか、あの秘密結社マンには…!」


 ナイトの後方から付いてきていたグレジオは、舌打ちをしながらナイトのやり方を非難する。グレジオとてS級魔法士だが、敵の数が多いので少しでも安全策を取っておきたかったのだ。


「臆病者のキミ達はそうするといい。この程度でビビる根性無しには用はないよ」


「言いたい放題言いやがって! こんなになって今更隠密もクソもあるかよ!」


 もはや隠れる意味などなく、グレジオは怒りを露わにしながらも仲間の闇魔法士に交戦を命じる。こうなれば一気に敵を排除して、道を切り拓くしかない。

 やがて教師陣は生徒らを保護しながら後退していく。彼らにとっての優先事項は生徒の安全であり、軍人はないので闇魔法士を倒すのは二の次なのだ。


「ふむ、どうやら地下があるらしい。私は先に行くから、キミ達は残った雑魚の処理をしておくれ」


「ハァ!? 面倒だけを押し付けるな!」


 古代遺跡の中央部に存在する地下へのゲートを発見したナイトは、地上に残った敵の対処をグレジオらに任せ、自らはサッサと階段を下っていく。


「さて、私を楽しませてくれる品の一つでもあればいいけど……」


 この新たに発見された遺跡は他に比べても規模が大きく、有用な古代の遺産が存在している可能性が高い。秘密結社ヨーツンエイルの具体的な目的は不明で闇魔法士にも知らされていないが、遺物をコツコツと収集するといった活動もしているのだ。

 しかし、遺物を展示する歴史博物館を建設するなどといった殊勝なものではなくて、独占してよからぬ事に使おうとしているのは間違いない。


「地下にも雑魚共がいるか。けれど、私の敵ではない」


 ナイトは散り散りになって逃げる学生らを腰抜けと評価しつつ、悠々と歩を進めて行く。目標は、光点となっている魔石の近くのテント群だ。


「キミ達の成果は全て頂いていくよ」


 この場においては自らが絶対強者だと自負しながら、ナイトは不敵な笑みを浮かべていた。

 だが、そんな彼の前に一人の学生が立ちはだかる。漆黒のシャツに赤いネクタイを締めていて、他の生徒とは異なる制服を身に着けていることから特待生なのだなとナイトは多少警戒する。


「ふ、私を前にして退かない度胸は認めよう。がね、勇気と無謀は違うものだとキミは理解していないらしい」


「その傲慢な言い方、気に入らないな」


 特注の制服を纏う少年アルトは、目の前の純白の燕尾服を着こなす男に苛立ちを覚える。口調こそ違えど、ヴァルフレアやグレジオと同じように他者を見下している態度が不愉快だったのだ。


「傲慢とは違うね。真実、私は強い魔法士なわけだもの。だからこその警告だと分からないか?」


「そうかよ。アンタら闇魔法士は許せたものじゃないし、皆のためにも俺は引き下がるわけにはいかない」


「結構な心意気だ。ならば、お望み通りに殺してあげるよ」


 ナイトは仮面の下で不気味に口角を上げ、アルトに対して人差し指を向ける。

 直後、眩い閃光が指から照射され、魔石の光よりも強烈に地下世界を照らしたのだ。


「レイ・ルクスだと…!」


 間一髪、アルトはバリアフルシールドで防御したものの、光線のあまりにも高い火力に押されて後ずさる。

 その威力を感じ取ったアルトは冷や汗をかき、これまでに戦ったどの魔法士よりも強い相手だと直感した。


「防いだのか、キミは。やるじゃないか」


「アンタこそ、まさかレイ・ルクスを使えるだけの魔法士とはね……」


 レイ・ルクス、これは攻撃魔法の一つでレーザーにも似た光線を放つ。極めて威力が高く、しかもフレイムバレットよりも弾速が速いために防ぐのが困難な魔法である。

 そして、発動難易度が高いのも特徴の一つだ。S級の中でも限られた真の実力者でなければ扱えず、レイ・ルクスを発動できる魔法士は歴史に名を残せるとまで言われている程なのだ。


「これはマズいかも……」


 アルトが焦るのも仕方がないことだ。

 何故なら、アルトもS級魔法士ではあるもののレイ・ルクスを扱えるレベルにはなく、つまりはナイトの方が明確に強者だという証拠が示されたのだから。


「どうやらキミもS級魔法士のようだね。私の攻撃を耐えきれるバリアフルシールドを張れるという点では見どころがある。大抵の魔法士や魔物は一瞬で蒸発してしまうからさ」


「簡単にやられるものかよ…!」


「けれど、これまでだね。次の一撃までもを耐えられはしまい」


 再び、ナイトはレイ・ルクスを放った。

 しかし、それをアルトは防ぐのではなく全力で横にジャンプして回避する。ナイトの言う通り、バリアフルシールドの耐久値が回復しきっていないため、次弾を受けたら破壊されるのは目に見えていたからだ。


「よくも避ける…!」


 アルトの反射神経にナイトは眉をひそめる。

 光線とは言っても純粋な光ではない。魔力を凝縮した一種のエネルギー砲であり、光速の域には達していないことから、相手をよく観察すれば発射後の僅かなタイミングで避けるのも理論上は可能なのだ。

 とはいえ、普通には無理な話である。これは、故郷の自然環境の中で培われたカンの良さと、身体能力ゆえに出来たことだ。


「偶然が続くものかい」


 二発も撃ったのに仕留められなかったという事実がナイトのプライドを傷つけ、アルトにもう一度魔法を叩きこもうと構える。

 しかし、


「何ッ…?」


 側面からウインドトルネードがナイトに襲い掛かった。かなり強烈な一撃で、バリアフルシールドを全開にして耐える。


「アルト、今のうちに後退しろ!」


 この風魔法はウィルが行使したものだ。友人のピンチを目の当たりにし、A級という格下だと自覚しながらも援護をしたのである。


「雑魚が…でしゃばるな」


 反撃を行おうとしたが、既にウィルは身を隠してナイトの視界から消えていた。光源があるとはいえ地上に比べたら薄暗く、身を隠すには丁度いい状態であったのも味方したようだ。

 普段は飄々として不真面目な男であるウィルも、こういう時は危機感を露わにして冷静に立ち回れるらしい。


「…まあいい。私の目的は大昔のお宝だからね」


 先程は思わぬ足止めを食らってイラついたものの、やはり自分こそが強者であると再自覚して機嫌を良くし、既に無人となっている点とへと向かう。

 そのナイトにグレジオと仲間の闇魔法士も合流した。


「上の敵は片付けたのかい?」


「ああ、逃げていった。後は地下を制圧するだけだ」


「そうか。なら、敵の対処はキミ達に任せよう。S級の多少実力がある学生もいるから気を抜かないことだね」


「ドワスガルのS級……恐らくヴァルフレアでないのだから、アルト・シュナイドか!」


 グレジオは、以前のドワスガル襲撃で邪魔をしてきたアルトの顔を思い出し、強く歯ぎしりをする。あの時、アルトさえいなければ作戦は成功していたはずで、ナイトにバカにされることもなかったのだ。

 この場にその怨敵がいるのならば、今度こそは始末してやると強い闘志を燃やすのであった。

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