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宿泊学習開始、いざビーチへ!

 魔法列車に搭乗して約四時間、途中で街に立ち寄り休息を挟みながらも、ようやく目的地近くの駅まで辿り着いたアルト達一行。

 木製の椅子の上で長時間過ごしていたため、全身が痛くなって快適な旅路とは言えなくなっており、皆一様にヘトヘトになりながら下車する。


「魔法列車は短時間の利用に限るな……なあアルト、座席を改良してくれるようリンザローテ会長に言っておいてくれ。そうすればガルフィアカンパニーを経営しているご両親に直接要望を届けてくれるだろ?」


「ああ……そうするよ」


 アルトは老人のように腰を叩きながら生返事し、周囲を見渡す。

 ここはムジート地方の南東部に位置する観光地で、王国の中でも特に暑く一年を通して夏季なのだが、海岸が整備されて海水浴客で賑わっている場所である。

 実際に駅舎は観光地に相応しい豪勢さとなっており、ドワスガルに隣接する物より大型で煌びやかな印象だ。


「では皆さぁん、まずは宿へと移動しますよぉ。迷子にならないように注意してくださいねぇ」


 引率のミカリアは自らが受け持つクラスの生徒に手を振り、予約が取り付けられている宿へと先導する。どちらかというと、のほほんとしているミカリアが一番はぐれてしまいそうな不安さがあるのだが、アルト達はそれには言及せずに大人しく付いていく。


「アルト君ったらもう疲れちゃったの?」


 と、リュックを背負ったエミリーが、大地を照り付ける太陽のように明るい笑顔を浮かべながらアルトの背を叩く。どうやら体力満タンのようで、一切の疲労を感じさせないパワーであった。


「エミリーは元気だね?」


「アルト君が出発の時に言ったように、今からが本番なんだよ! ここからがお楽しみなんだから!」


 両手でガッツポーズをキメ、そこにシュカも合流する。エネルギッシュな彼女達の眩しさに感化され、アルトも気力が湧いてくるような気がした。


「にしても観光地ってのはスゴイものなんだな。こうも人が沢山いるなんて、俺の地元じゃ祭り時くらいだよ」


「この辺は王国でも有名だからねぇ。ビーチもイイんだけど、お土産店とかも多いし見て回るべき場所は色々あるよ」


「あ、お土産店もあるの? リンザ先輩に何かお土産を用意しますねって約束していて……」


 アルトがリンザローテの名を出した途端、エミリーはプクーっと頬を膨らませて話を遮る。こんなトコロに来てまで聞きたい名前ではないのだ。


「今は生徒会長のことはいいでしょ。ほら、早く行かないと置いてかれちゃうよ!」


「お、おい待ってくれ」


 ミカリアと少々距離が離れてしまっていて、駆け出すエミリーをアルトも追いかけていく。

 その頭の中はどんなお土産をリンザローテに送ろうかと思考していたのだが、これ以上口にするのは止めた。何故ならリンザローテとエミリーの仲があまり良くないとアルトも察しているからなのだが、その原因が自分であるとは未だ気が付いていない。






 そうして観光地の外れにある大きな宿へと辿り着いた一行は、チェックインを済ませて必要な荷物を置いた後で自由行動となった。一日目は遺跡見学はせず、完全なフリーの状態で遊んでいいとお墨付きを得ているのである。

 生徒達は財布や水着など必要な物だけを所持して飛び出し、海や商店街に解き放たれていく。

 

「オレらも行こうぜ、アルト!」


 女子達の歳相応のはしゃぎ様を見てウィルもテンションが上がってきたようで、いつもの不敵な笑みを顔に貼り付けながら親指で宿のエントランスの方向を示す。

 そのウィルに連れられてエントランスへ行くと、既にエミリーとシュカが二人を待っていた。


「エミリーちゃんの水着、期待しているぜ!」


 そう言って下心全開のままエミリーの前に立つウィルであったが、すかさずシュカの膝蹴りが炸裂してウィルは悶絶したままうずくまる。

 どんな魔法よりも強力そうな一撃に、アルトはシュカだけは怒らせないほうがいいと心に留め置く。


「あんたってヤツは……まずは幼馴染に言うべきなんじゃないのかね」


「だってシュカの水着は前にも何度か見てるし……」


「こーいうシチュエーションはまた特別なモンでしょ! それに、せっかくだからと新しいの用意したんだから!」


「マジ? それなら楽しみかも」


「でしょ? あでも、別にあんたのために新調したワケじゃないんだから勘違いしないでよね!」


「あ、ああ……」


 蹴られた脚をさすりながらウィルは返答をし、シュカを上機嫌にできたなら良かったと胸を撫で下ろす。アルト以上にシュカの恐ろしさを理解しているので、これ以上刺激しない方が得策だと本能が警告を出していた。


「シュカちゃんみたいに浮気者を好きになっちゃうと大変だね~。その点、アルト君は誠実だものね?」


「まあパートナーが出来たのなら当然浮気はしないよ」


「じゃあ安心だ」


「?」


 何が安心なのかは分からないが、ともかくアルトはウィルを魔法で治癒して痛みを取り除いてあげる。こういう気遣いが出来るポイントもエミリーが好意を抱く要素で、やっぱりアルトはイイ男だなとニコニコとして見つめている。

 ある意味で青春の一コマとも言える騒動が終わり、アルト達は宿を出て海へと向かった。


「お、アルトの水着もサーフパンツタイプか」


 人でごった返す更衣室にて着替えている中、ウィルは隣のアルトが自分の水着と色違いの同型を持ってきていることに気が付いた。


「オレと同じ店で買ったんだな?」


「そうみたいね。でも、どんなのを選んでいいか分からなくてさ、結局リンザ先輩に選んでもらったんだよ」


「オマエ……そんなに生徒会長と仲良いのかよ。いいよなぁ、まったく」


 そんなのもうデートじゃないか、とウィルは口を尖らせている。

 彼はリンザローテの美に惹かれて声を掛けたはいいものの、アッサリと撃沈されてショックを受けていたこともあり、アルトがリンザローテに気に入られていることが羨ましくて仕方がないのであった。


「俺のセンスの無さをリンザ先輩は知っているから、心配になって付いてきてくれたんでしょ。実際、店で俺が手に取ったヤツは却下されちゃってさ」


「どんなのを選んだんだ?」


「競泳用だったらしいんだけど、ピッチリと体にフィットしたヤツ」


「ああ、そりゃ止めてもらえて良かったと思うぜ。ありゃ競技する選手には最適だがな、その……誤魔化しがきかないんだ」


「誤魔化し…?」


「オマエも男なら分かるだろ? つまりだな、いきり勃ってしまった時の話さ。ギンギンだって周囲にモロバレになるんだぜ」


「なるほど……」


 それは致命的かもしれないと、アルトは盲点だった短所を教えてもらって納得する。

 まさかリンザローテはソレを慮ってはいないだろうが、結果的にナイスな行動であった。アルトとて思春期男子であり、反応してしまう可能性は充分にあるのだから。


「…最高だな、ココは」


 着替えが終わった二人は女子よりも先に混雑するビーチに出て、その雰囲気を全身に浴びる。

 特にウィルは感激のあまりにナニかを拝んで手を擦り合わせていた。


「なあアルト、あそこにいるお姉さんなんか超美人だと思わねぇか?」


「ん、確かに綺麗な方だね。でも俺の感性ではリンザ先輩の方が美人かなって思うな」


「オマエ……やっぱり生徒会長に気があるだろ」


 すぐにリンザローテの名前を出すじゃないかとウィルはジト目になりつつ、背後から声を掛けられて振り向く。

 そこに居たのは、水着を纏ったシュカとエミリーであった。

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