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下剋上を狙ったデュエル

 クラスメイトのウィルからデュエルを挑まれたアルトは、ひとまず担任教師であるミカリアの確認を取る。いくら生徒がやる気になっていても、さすがに教師のストップが掛かれば中止にせざるを得ない。


「ミカリア先生、ウィルが俺とのデュエルを所望しているようなのですが……授業中にマズいですよね?」


「う~ん……でもまぁ、実戦形式の訓練というものも有意義でしょうねぇ。どうやらウィルさんは腕に覚えがあるようでバリアフルシールドを既に扱えるようですし、ここはお互いの実力を確かめるという意味でもやってみたらどうですぅ?」


「マジですか……」


 どうやらミカリアは特に反対する気は無いらしく、むしろ基本を抑えた二人には実戦的な訓練を積ませたいと考えているようだ。


「仲間のパワーアップに手を貸すのも強者の役割だと思いますし、他のクラスメイトの皆さんにとっても二人の戦いは参考になると思うのですぅ。ですので、どうでょうかぁ?」


「わ、分かりました。先生が仰るのならやってみます」


 そのミカリアの意思を無碍にするのは申し訳ないと、アルトはデュエルを受ける。

 他のクラスメイト達が見守る中、コロシアム型闘技場の中心でアルトとウィルが向かい合った。


「フフ、オレってば女の子達のアツい視線を受けているぜ……俄然気力が漲ってキター!!」


 何を勘違いしているのか、ウィルは女子達の期待の目が向けられていると思っているらしい。それによって全身に力と魔力が漲り、アルトに多少のプレッシャーを感じさせている。


「案外やるのかもしれないな、ウィルは」


「アルト君、あんなヤツすぐにボコボコにしちゃってよ!」


「いや、これは競技だから必要以上に攻撃するのは……それに、なんだかアイツは悪いヤツじゃないって思うな」


 最初こそ警戒したものの、ウィルはお調子者の軟派な男というだけで害悪ではないとアルトは直感する。本当に外道であるのなら、もっと生理的な嫌悪感を感じるものだろう。


「では、このミカリア先生が立会人を務めちゃいますよぉ。ルールは簡単、相手を行動不能や魔法行使不能状態に追い込んだ方の勝ちとなりまぁす。あと、勝敗判定や戦闘中の制止については先生の指示にキチンと従ってくださいねぇ」


 リンザローテと戦った時のように相手の体を動けなくさせるか、魔法が使えない状況に追い詰めれば勝ちとなる。その手段として魔法攻撃は許可されているが、戦争ではないので殺傷を目的とした過剰な攻撃は禁止となる。

 だが、デュエル中に負傷する可能性は充分にあるので、治療魔法を扱える魔法士が立会人を務める必要があった。その点では一通りの基礎魔法を習得し、確かな実力のある教師であれば申し分はない。


「アーマーだとかの防具を身に着けなくていいのか、アルト・シュナイド? 怪我してからじゃ遅いぜ?」


「防具は体の動きを阻害するからいらない。当たらなければいいだけだしさ。ウィルこそいいのか?」


 身の安全を考慮して防具の着用も認められてはいるのだが、重量などの関係で機動性が落ちるデメリットもある。そのため、実力のある魔法士ほど身に着けずに挑んでいるのだ。


「あんなの付けてデュエルなんてカッコ悪いだろ? さ、始めようぜ!」


「ではデュエル開始ですぅ」


 ミカリアの宣言の直後、先手必勝とウィルが動く。


「すぐに終わりにしてやる! 喰らえ、アクアボム!」


 右手をかざしてウィルが水系魔法のアクアボムを唱えた。

 すると、アルトの頭上に魔法陣が現れ、そこから巨大な水球が形成されてアルト目掛けて一気に落下してきたのである。


「そうくるか…!」


 アルトは咄嗟に回避機動に移り水球の落下地点から逃れるが、水球は地面との接触時に爆散して周囲に激しい波を撒き散らす。ボムの名の通り、この魔法は爆発する事で周りに高水圧の波を発生させて、敵をまるで濁流に巻き込むようにして無力化するのである。

 そのため、着弾地点から退避しても近くにいれば影響は免れられず、アルトは逃げきれず波に飲み込まれそうになった。


「このくらい防いでみせる!」


 だが、アルトの反射神経はダテではない。バリアフルシールドによって防御膜を張り、ボムの攻撃を防いでみせた。


「次はコチラからもいかせてもらう!」


 バリアを解き、ウィルを視界に捉えたアルトは無詠唱でフレイムバレットを撃ち放つ。威力は抑えてあるのだが、それでも直撃すれば気を失うレベルのダメージはある。


「やらせるかよ!」


 しかし、ウィルもまた次の魔法を準備していた。

 フレイムバレットの射線上にいながらも臆することなく、再び右手をアルトに差し向けて魔力を流し込む。


「A級のオレでもS級に勝ってやるってんだ! いけよ、ウインドトルネード!」


 今度の魔法は風系で、右手の掌に出現した魔法陣から激しい竜巻が生み出される。薄緑色の旋風が激しく渦を巻き、真っすぐ伸びていくのだ。


「ウィル・ステーク、アイツの魔法習得度は高いようだな」


 そう呟くアルトの目の前でフレイムバレットがウインドトルネードに巻き込まれて消滅してしまった。あの竜巻の威力は相当なようで、いくら威力を抑えているとはいえアルトの魔法を打ち消したのだから大したモノである。


「威力はあるが…!」


 ウインドトルネードによる竜巻がアルトを捉えるも、これもバリアフルシールドによる全方位防御で防ぎ切った。先程の手加減したフレイムバレットは無力化されたが、この防御魔法は全力で展開しているため容易に突破されることはない。

 そんなアルトとウィルの戦いを見学する生徒達に、ミカリアは授業の続きを行う。


「皆さん、あれがバリアフルシールドというものですよぉ。見事に攻撃を防いでいるでょう?」


「さすがはアルト君! 私もアルト君ぐらいの魔法力があればなぁ……一瞬発生させるのが限界だものなぁ」


「大丈夫です、エミリーさん。確かにアルトさんのような性能の良いバリアを形成するのは難しいですが、練習すればキチンとしたバリアを作り出せますよぉ。それに、鍛錬を重ねたことで魔法力自体を向上させた魔法士も沢山いますし、まだまだ成長途中の皆さんならもっと上を目指せるハズですぅ」


 アルトのS級やエミリーのC級のように魔法力はランク分けされるが、鍛錬によって魔法力をアップさせることが可能だ。実際に、幼少期はC級でも青年期にはA級まで成長した例もある。

 その成長を促進するのが魔法高等学校であり、今はランクの低いエミリーであっても努力次第では更に上を目指せる希望はあるのだ。


「そうですね。せっかく魔法学校に入ったんですし、アルト君みたいにカッコイイ魔法士になれるよう頑張ります!」


「その意気ですぅ。さぁ、そろそろ勝負が付きそうですよぉ」


 ミカリアの予測通り、アルトは決着を付けるべく動き始めていた。


「悪いが勝たせてもらうぞ、ウィル・ステーク!」


「なにッ!?」


 猛威を振るったウインドトルネードが消滅したタイミングで飛び出したアルトは、バインドロープをウィル目掛けて射出する。発光する一本の太く長いロープが素早く迫って、ウィルは慌ててバリアフルシールドを展開した。


「へっ、こんな程度でオレを倒せるものかよ!」


「そうかな?」


 ウィルを覆うバリアに接触してロープは受け止められてしまうが、アルトの攻撃はこれで終わりではない。

 なんとバインドロープは枝分かれをして、ウィルのバリアを包み込んでいった。まるで蜘蛛の巣に引っかかったように絡まっていき、脱出路が無くなってしまう。


「なんと…!?」


 そして、ロープはバリアを圧壊させるべく全方位から圧力を掛け、これによってバリアにヒビが入って耐久値がゴリゴリと削られていく。


「アルト・シュナイド、ヤツの力はこんなに…うわっ!」


 パリンとガラスの砕けるような音と共に遂にバリアは崩壊した。

 そして無数の細長いバインドロープがウィルを狙い、す巻きのようにグルグルと纏わり彼を捕まえる。

 もはや反撃は叶わず、デュエルはアルトの勝利に終わるのであった。

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