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裏切りの副会長

 校長室を出たアルトは、リンザローテと共に学校敷地の外殻をなぞるようにして巡回を行う。人気は無いものの強い緊張感に学校全体が包まれており、息が詰まりそうであった。


「まったく、アルトさんは無茶をなさる。闇魔法士に単独で立ち向かうなんて、危険そのものですよ」


 そうして二人で歩いている中、リンザローテは非難するわけではなく心配から口を尖らせる。犯罪を躊躇わない闇魔法士に立ち向かうのは、いくらS級であっても危ない行為であるのは間違いなく、こう言われるのも当然であろう。

 リンザローテの言葉にアルトは頭を掻きながらバツが悪そうに釈明する。


「確かに成功したから良かったですが、一歩間違えば大惨事を引き起こしていたかもしれませんし反省はしています。けど、グレジオは自分達の本気度を見せるべく、人質にした生徒を処刑して校長に送りつけようとしていたんです。なので、犠牲者を出さないためにも動くしかなくて……」


「本当に立派ですね、あなたは。自分の身を顧みず、そうも頑張れる人は少ない。エミリーさんを救った時もそうでしたが、アルトさんの勇気と行動力は称賛に値すると思いますよ」


 普通であれば、人質に取られるような状況では恐怖心で動けなくなるものだ。それこそ呂律も回らなくなって魔法詠唱どころではなくなってしまう。

 しかし、アルトは非常事態でも勇敢且つ冷静で、自分の身の安全などかなぐり捨てて立ち向かうことの出来る男であり、リンザローテも心から尊敬していた。


「いやぁ、褒めて頂いても何も出ませんよ?」


「べ、別に対価を求めているワケではありません……それと後一つ言っておきたいのですが、もう少し自分の事も大切になさってくださいね。今回と前回は怪我も無く乗り切れましたけど……」


「心配してくれているんです?」


「当然心配もしますわよ。人助けをするのは善い行いですが、それが原因で身の破滅を招く事だって有り得ますわ」


 助けた人間の代わりに犠牲になってしまった例は幾らでもある。それこそ最近では、闇魔法士の攻撃から庇って亡くなるなどよく聞く話だ。


「仰る通りだと思います。ですので俺も無茶はしないつもりではありますよ」


 無茶という概念を知らないのではとリンザローテは訝しむ。


「一人で多数を相手にするのは無茶を通り越して無謀では……ともかく、お一人で突っ込み過ぎないように」


「あ、でも今回は一人だけでやったんじゃないんですよ。エミリーが援護してくれましてね」


「エミリーさんが何を!?」


 エミリーもあの場にいたというのは知っているが、まさか彼女がアルトの役に立っていたとは知らなかった。先を越されたような気持ちになって、ぐぬぬと思わず喰いつくように問うてしまう。


「サイクロプスと戦った話を校長室でしたでしょう? あの時は詳細を省きましたが、エミリーが錬成魔法で作ってくれた石斧があったからこそトドメを刺せたんです。アレが無かったら更に苦戦していたでしょう」


「エミリーさんもやりますわね……さすがはライバルたり得る存在……」


 いわゆる吊り橋効果というべきか、ピンチの時ほど絆が深まったりするもので、アルトとエミリーの仲がどれくらい縮まったかも気になっていた。魔物のような脅威相手に共闘したとなれば尚更だ。


「ですが! わたくしだって緊急時にはそれなりに役に立つ女ですわ。是非、今度はわたくしにも頼って頂きたい」


 張り合うようにリンザローテは胸をポンと叩き、そう訴える。ここで退いてしまっては完全に勝機を失ってしまうという焦燥感も抱いていた。


「そうさせてもらいます。会長の助力を請えるなら心強いですよ」


「そうでしょう! さぁグレジオの阿呆が隠れていないか警戒も強めませんとね!」


 ニカッとしたアルトの笑顔を向けられたリンザローテは、さっきまでの必死感から一転してテンションを上げ、いつもの尊大で強気な態度になりながら周囲に視線を送る。

 ここで頼りがいのある姿をアルトに見せて、エミリーとの差を付けようという算段のようだ。






 一方その頃、当事者の一人であるヴァルフレアは自分の寮部屋にて不機嫌そうに外を眺めていた。


「ったくさ、ワザワザ校長室まで呼び出されて面倒だったよ。アイツら案外鋭いというか、俺を疑っているんだろう?」


 これは独り言ではなく、部屋にはもう一人の人物がいた。生徒会の腕章を付けた真面目そうな女子生徒で、ヴァルフレアやリンザローテと同じく二年生でもある。

 その女子生徒はヴァルフレアの横に立ち、彼の腕に寄り添った。


「そうみたいよ。リンザローテが特にね」


「チッ……あのアマ、新しい男に媚を売るだけでなく、俺を貶めようとしているのだな」


 未練がましく呟くヴァルフレア。リンザローテをアルトに寝取られたような感覚を抱いているようで、しかも反発してくるのだから許せたものではない。


「それでね、あなたを監視するよう校長から言われているの。もし妙な動きをしたり、グレジオとの繋がりがあるようなら報告するようにって」


「へっ……だが、当の生徒会副会長サマが俺と通じているのは想定外だろうな。俺達はあまり表立って交流があるようには見せてこなかったもんな、ホラン?」


 ホラン・キューミー、生徒会副会長を務める彼女にはヴァルフレアを見張る役目を与えられていた。

 しかし、肝心のホランはヴァルフレアと隠れて繋がりのある人物である。普段は彼のハーレムに加わらず、裏から手を回して不祥事を揉み消したりする暗躍者として飼いならされているのだ。

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