第二幕 第一章【3】 夢蜘蛛②
「私が以前排せつ物を作ったのは、その屋敷の住人を、じわじわと弱らせるためでした」
「弱らせるって」
「私が弱らせたのは、心のほうですけど。けれど、この毒を用いれば、身体を弱らせることも容易いんですよ」
え、とナルは、ぽかんとした。
「ど、く。毒⁉」
「ええ。排せつ物の内部に毒を入れて、放置するんです。気化した毒は皮膚吸収性なので、十分すぎるほど効力を発揮します」
ジーンの表情から、いつもの柔和さが消える。
疲れて誤魔化せなくなったのではなく、あえて、義賊『月光花師団』の棟梁の顔をしたようだ。
ジーンは、ふんと鼻を鳴らす。
「その毒は、『夢蜘蛛』と言いましてね。風花国で採れる、とある花を精製して作るんです。この毒の使用勝手のよいところは、僅かな水分があるだけで、効力を発揮し続けるところでして」
「水分だけ?」
「これまで、毒を仕込むといえば、食べ物やお香に混ぜたりと、対象に『何かをさせることで』毒が発生するというのが、当たり前だったんです。けれど、夢蜘蛛は違います。例えば、水槽ですね。そこに濃度を調節した夢蜘蛛を一滴垂らして放置しておくだけで、空気に溶け込み、やってきた人の皮膚から体内へ侵入します。濃度によりますが、濃いものだと一瞬で死に至ることもあるんですよ」
「それを、ジーンさんも使ってたの?」
問うたのは、その詳しさに驚いたからだ。
けれど、つとナルに視線を向けたジーンの瞳は、自嘲の色を浮かべていた。
「あ、違う」
咄嗟にナルは、手を振った。
それでもジーンの目が変わらなかったので、ジーンの傍へ歩み寄ってから、以前にシンジュにされたように、アイアンクローをしてみた。
少しばかり、指が届かなかったけれど。
「――っ」
「目が覚めた?」
ジーンはナルの手を叩くと、ソファの端へ身体をのけぞらせた。
「何するんですかっ!」
「顔面を鷲掴んだの。アイアンクローって技よ。……まぁ、ちょっと指の長さが足りなかったけど」
「掴めてませんよ、っていうか、鼻の穴に指突っ込まないでください!」
「あはは。いやぁ、前にシンジュ様にしてもらったとき、一気に目が覚めたから、つい」
「嫁にアイアンクローかますんですか、あの人⁉」
ジーンは、はぁとため息をつくと。
もぞもぞと元の場所に戻ってきた。
その瞳は、いつものジーンに戻っている。
「で、話の続きなんだけど――」
「使ってましたよ。だってこれ、私が作り出した毒ですから」
「え。……ジーンさんって、こういう科学的な分野も得意なの⁉」
「かがく? 薬物に関しては、まぁ、それなりに。……先ほども言いましたが、濃度によって効力が変わってくるんです。私が使用した夢蜘蛛は、あくまで眠剤変わりでした。……これは、ある屋敷を襲ったときの話なんですけど。なかなか夢蜘蛛を仕込むのが難しい屋敷で、困っていたんです。使用人も義理堅く、忠誠心の塊でしたから。でも逆に、そこを利用したのが、排せつ物作戦でした」
その屋敷は、徹底して警備されていた。
月光花師団の名も知れていたし、警戒していたのだろう。
そこで、ジーンは人工的な排せつ物をつくり、その中に毒を仕込んだ。
人工的に作ったため、水分も調節可能。
好きな効力を、封入できる代物だった。
それを、屋敷の庭へ放置する。
当然使用人は気づくだろうが、明らかな不審物にも関わらず、毒物の有無も確認せずに捨ててしまったのだ。
しかも、主へ報告さえしない。
そこまで聞いて、ナルは頷いた。
(そりゃそうよ。嫌がらせとしか思わないし、わざわざ調べたりしない。すぐ捨てたいと思うし。何より、いちいち家主に『こんな嫌がらせがありました』って報告するはずもない)
ジーンは、排せつ物をその屋敷に放置することで、使用人たちの皮膚から徐々に夢蜘蛛を仕込んでいった。
だがさすがに途中で怪しんでくる者が出てくる。
その頃、屋敷に『怪奇現象』を起こした。
屋敷の使用人の意識は怪奇現象へ向かい、それが続くことで、彼らの「おかしい」という感覚が麻痺していく。
最初こそ、僅かな違和感でも丹念に調査していた使用人たちが、ほんのちょっとのことでは、疑問を持たなくなったのだ。
そしてそれが続くことで、警戒心が、心が、乱れ始める。
窓がいきなり割れても、また怪奇現象だ、と済ませてしまい。
排せつ物が屋内に出現しても、また怪奇現象か、で片付けておしまい。
「こうして聞くと、ありえないでしょう? でも、実際にあったんです」
「それで、そのあとどうしたの」
「私の狙いは、あくまで屋敷にあるお宝でしたから。某日、あちこちに複数の眠剤を仕込んで、屋敷の者たちを眠りにつかせました。予め眠剤作用を促す夢蜘蛛を、その日まで多く吸収させておいたので、当然の結果ですね。……そうしてめでたく、屋敷の奥でガチガチに守られていた宝を盗み出したんです」
すべてを聞き終えたナルは、腕を組んで唸った。
(今の状況と似てない? だって実際、二日前の夜、私、幽霊のうんこだって、思ったもの……ありえないってわかっても、調べようとしなかったし)
「まぁ、あくまでそれは、私の目的が屋敷のお宝だった場合の話です。もしこの屋敷を襲っているだろう敵が、この手段を用いているとすると……狙いは他にあるかもしれませんね」
ナルは、がばっと顔をあげた。
「排せつ物のほかにも、あなたが気づかないだけで仕込んであると思いますよ。この屋敷に、毒が」
当たり前のように生活してきた屋敷。
そのあちこちに、毒が――。
ぞくりと悪寒が走った。
両腕を抱きしめる。
「なにそれ。屋敷に毒って……徐々に弱らせていくってこと? 私、別におかしなところもないし」
「そうやって否定から入ると、見えるものも見えなくなり――」
ふと、ジーンが目を見張った。
おもむろに手を伸ばして、ナルの左手首を掴む。
「どうしたんですか、これ」
「シンジュ様が、改めてプロポーズを」
「指輪ではありません、っていうか知ってます。長官も、同じものをつけて、頭ふわふわさせてましたから。……左手の感覚が、ないんですね?」
しまった。
両腕を抱いたつもりだったのに、左手側が緩んでいたようだ。
すっと細めたジーンの視線に射抜かれて、ナルは観念した。
「……気づいたのは昨日の朝だった」
「医者に見せましたか」
「ううん、誰にも言ってない。気のせいだと思ってたし。でも、ただの痺れじゃないみたいだなって、思ってきたとこ」
「もしかして、排せつ物を掴んだのは、左手ですか?」
「――あ」
そうだ。
この手で鷲掴みにしたのだ。
不意に、手首が掴まれた痛みに軋んで、顔を顰めた。
軽くジーンを睨むと。
彼は、大きく瞳を見開き、憎悪のこもった色を灯した視線で空中を睨んでいる。
月光花師団。
義賊の集団で、父が目の上のたん瘤に思っていた勢力。
ありえぬ方法で盗みを働き、盗んだ品々を貧民へ配っていたという。
今更ながら、気づく。
ありえない手段とは、こういった眠剤などを用いた技のことだったのだ。
毒を盛られた記憶もなければ覚えもない、そんな貴族が全員眠りに落ちて。
気づけば、盗賊に入られたあと。
本人たちは、何が起きたのかわからないままだろう。
――私が作り出した毒ですから
ジーンは先ほど、そう言った。
月光花師団御用達の毒が今、この屋敷に、何者かの手によって使われている。
開発者の知らないところで。
(……こういうの聞くと、ノーベルやライトを思い出すよねぇ)
どちらも前世では有名な科学者である。
前者はダイナマイトを、後者は飛行機を開発した人物だ。開発後、彼らは自らの開発したものが兵器として利用されたことを知り、後悔の念に囚われたのは有名な話である。
「ジーンさん……ジーンさん」
虚空を睨むジーンの意識は、過去へ遡っているのだろうか。
視線はぼんやりとしていて、どこか遠くを見ている。
仕方なく、ナルは本日二度目のアイアンクローをした。
むぎゅ、と顔面を掴むけれど、どうしても指が足りなくてすべり、鼻の穴に指を突っ込んでしまう。
「――っ、やめなさいっ、あなた一応、妙齢の女性でしょう⁉」
「だって、話聞いてくれないんだもん」
「だからって、アイアンクローは止めてください!」
ジーンはハンカチを取り出して、自分の鼻をふいた。
指を突っ込むことになったナルが拭くのならわかるが、なぜジーンが鼻を拭うのだ。解せない。
「……はぁ、まったく。でも、そうですね。少し冷静になりました。あなた、素手で掴んだから、それだけ吸収が早まったんですよ。つまり、調合は分量型ということになります。配合型であれば、どれだけ接種しようと進行は一定のはずですし」
「な、なんとなくわかる……ような?」
「でも、おかしな話ですね。これだけ即効性がある毒を仕掛けるなんて」
「うん?」
「あなたが排せつ物を見かけたのは、二度でしたね?」
「うん」
「その間、半年の空間があります。この策を用いるということは、じわじわと追いやるタイプの罠を仕掛けていることになります。つまり、空白の半年間にも、何かしら仕掛け続けていたのでしょう。あなたが気づいていないだけで」
「……怖いわね」
まるで蜘蛛の巣に絡めとるように、じわじわと毒を浸透させるなんて。
ジーンは、ざっと寝室内を見回したあと、軽く前髪を掻き上げた。
「あなたが目撃したという二度の排せつ物に、共通点はありませんか?」
共通点。
うーん、と考える。
「そう言われても、何も。あ、私よりベティのほうがわかるかもしれない」
「ベティエール殿ですか。なぜ彼が?」
「だって、二度とも私とベティが発見して――」
はっ、と口元を押さえた。
言葉にしてやっと、その違和感に気づく。
ジーンを見れば、彼も眉をひそめている。
「二度とも、一緒だったんですね」
「そう。……待って、でも、一度目に排せつ物を見つけたとき、私はそこへ行く予定なかったの。っていうか、ベティのあとをつけて行った先にあったのよ」
「なるほど。ベティエールに夢蜘蛛、ですか。偶然ではないでしょう。彼はルルフェウスの戦いで、自らの判断ミスを理由に辞任していますから」
また、ルルフェウスの戦いの話だ。
先ほど、ジーンは『自分も無関係ではない』と言った。
以前ルルフェウスの戦いとはどんなものか、簡単に話をして貰ったこともあったけれど。もしかしたら、ジーンにとっては、あまり触れてほしくない話なのかもしれない。
そんなナルの思考を読んだのか。
ジーンは自虐的に笑って、自ら話し出した。
「ルルフェウスの戦いの被害者は数十万人。大陸始まって以来最大の、大量毒殺事件ですから」
ひゅっ、と息を呑む。
「……え……大量、毒殺事件……?」
国境間の小競り合いが激化したものだと聞いていた。てっきり、争いが大きくなって、戦争のような大規模な戦いに発展したものだと思っていたのだが。
「ええ。それも毒殺されたのは、それぞれの陣営の遥か後方にあった、拠点となる街で暮らす人々でした。心優しい商人が、戦の貧困であえぐ子どもらに、玩具を配ったんですよ。……その玩具を配ってもよいと許可を出したのが、フェイロンです。本来ならば隊長に報告し指示を仰ぐものですが、独断だったそうですね」
「待って、それって」
「ご想像通り。その玩具に、夢蜘蛛が仕込まれていたんです」
当時、夢蜘蛛を扱っていたのは月光花師団だけだった。
その毒が、いきなり国境間で使用され、戦を煽る道具に使われた。
結果、争いは激化して、飛ぶように武器が売れる。
だが、貧困や犠牲で戦が続けられなくなり、停戦の話が出る頃。
死の商人――刑部省が言うところの第三者だ――は、証拠隠滅でも図るかのように毒を町中にばらまいて、ゴーストタウンへと変えてしまったという。
それが、ルルフェウスの戦いで起きた、大まかな内容だった。
「私もね、又聞きなので詳しいことは知りません。でも、大量毒殺事件に関しては、鎖国していた風花国にも噂が流れてきまして。使用された毒が夢蜘蛛であることも広まり、皆が、主犯は私たち月光花師団だと言いました。当然ながら国には居れず、柳花国へ、さらにモーレスロウ王国へ逃げて来たんです」
ナルは、ふらりとよろけて、そのまま床に座り込んだ。
想像ができてしまうのだ、当時、前線基地となった街の様子を。
前線基地にされた街の子どもが、つまらなそうに日々を過ごしている。そこへやってきた商人の玩具に、子どもたちは瞳を煌めかせて。
そして、師匠が善意で、その玩具を商人と共に配るのだ。
その玩具が、どんなものかも知らずに。
――万能薬を作る。
そう言って、あの家屋にこもっていた師匠。
どんな思いで、彼はたった一人、あの家にいたのか。
「ベティエールの身体は、毒の後遺症です。彼の場合、元が頑丈だったので奇跡的な回復でした」
「その毒って、進行性なの?」
「いいえ、追加で夢蜘蛛を摂取しない限り、悪化はしません」
ナルは口元を押さえた。
込み上げてくる酸っぱいものを吐き出したくて堪らないが、ここで吐き出して、すっきりするのも嫌だった。
当時多くの者が亡くなった。
今もなお、苦しんでいる人がいる。
「……許せない」
ぎり、っと歯を食いしばる。
口の中を噛んでしまって、血が出た。けれど、そんなことどうでもいいくらい、許せないという憎悪が沸き上がる。
「誰を、です? この屋敷に毒殺目的の殺し屋を誘い込んだベティエールですか。商人の善意を信じて受け入れたフェイロンですか。それとも、毒そのものを作った私ですか?」
「私自身がよ」
「はい?」
「父やベルガン公爵が加担していたのを知っていたのに、実際に何が起きて誰が犠牲になったのか、今なお知らない私自身が、許せないの」
ナルは悪人の娘だ。
多くの命を奪った父親が得たカネで、生きてきた。
けれど、心のどこかで、自分は被害者だと思ってはいなかったか。
最悪の父を持ってしまった、無力な令嬢だと。
さらに、ぎりっと強く歯を噛んだ。
「私、何度も考えたの。もしかしたら、私は被害者なんじゃないかって。あの父の娘に生まれた時点で、被害者として『可哀そうな娘』になれるんじゃないかって」
絨毯を掴む。
高級な素材は、柔らかくて心地よい。
今はその手触りが、無性に悔しかった。
「でも、私はどう考えも、加害者なの。あの父の行動を見過ごした時点で、多くの命を奪ってきた。……師匠はミスをしたんでしょう? 私は違う。知ってて、見ないふりをしてきた」
「……奥方」
ぎりり、と一層強く歯を食いしばる。
つつ、と口の端から血がこぼれて、絨毯に真紅の染みを作った。
多くの死者が『出た』。
違う、多くの死者を出して私腹を肥やしたのだ。
今なお、後遺症に苦しんでいる者がいる。
彼らの苦しみに成り立つカネで、ナルは衣食住を与えられてきた。
「っ、ナルファリア嬢」
「いいえ、違う。理解しようと、しなかったの」
力いっぱい絨毯の毛並みを握り締める。
力の入らない左手は、うまく絨毯が掴めずにだらりとそこにあるだけだ。
自分の手を見て、この世に大勢いるだろう、父の被害にあって苦しんでいる人々を思うと、涙があふれてきた。
「ただ計画と数字だけで何が起きたのか知ったつもりになって、そのまま、処刑されるつもりだった。……ジーンさんが話してくれるまで、ルルフェウスの戦いの詳細だって、自分から知ろうなんて思えなかった‼」
父を処刑に追い込んで己の正義を勝手に貫き、自分自身のためにナルは死を望んだ。
結局は死ななかったけれど、自分はなんて、傲慢だったのだろう。
嗚咽を飲み込むと、全身が震えた。
身体の内側から、張り裂けてしまいそうな痛みと眩暈を感じて、いっそ意識を手放せば楽になれるのではないかとさえ思った。
身体が浮いた。
強い力に引っ張られて、気づけば抱きしめられていた。
ジーンの胸に顔を押し付けられて、涙が、ジーンの服を濡らす。
「……壊れないでくださいよ」
ぽつり、とジーンの呟きが降ってくる。
ナルは、両手で口を押さえた。
ボロボロ溢れる涙はそのままに、嗚咽だけを堪える。
「あまり抱えすぎると心が壊れてしまいます。……あなたは、ルルフェウスの戦いについて、知りたくなかったですか?」
ぶんぶんと首を横に振る。
(知らなくていいはずなんか、ない)
「はは、やっぱり」
ふと。
ジーンが、くすりと笑う。
「あなたなら、そうだろうと思いました。……私は、夢蜘蛛が悪用されたとき、自分は被害者だと長らく思っていました。人のせいにしたことだって、あります。……でも、結局は、私自身が招いたことだったって、そう理解できたのは、つい最近なんですよ」
ナルは、ぐっと目をつぶった。
どれだけ涙を流しても、悩んでも、解決するはずがない。
いつだったか、バロックスが言った。
ナルは、とても残酷な人間だと。
あの言葉が示した本当の意味は、ここにあったのだ。
ナルは、顔をあげた。
ゴン、と後頭部が何かに当たる。
顎を押さえるジーンが、痛みでぷるぷると震えていた。
「あ……大丈夫?」
「……顎って、人の急所なんですよ。知ってます?」
「勿論。顎と鳩尾は人間の急所よ! 脛や金的も急所だけどね」
「やめてくださいよこれ以上は。ちょっと抱き寄せただけじゃないですか、そんなに怒らなくても」
「え。いやいやいや、怒ってないから! むしろありがとう、恥ずかしいけど」
ナルは、拳を握り締めて、立ち上がると、袖で涙をぬぐった。
口の中を切ったときに流れた血の味が、苦い。
「まずは、一歩ずつよ。この屋敷で何が起きてるのか調べるから。もし本当に、夢蜘蛛って毒が使われてるのなら、誰がなぜやっていることなのか、はっきりさせないと」
「あなた、前向きすぎません?」
「いつまでも泣いてたって、仕方ないじゃない。次に泣くのは、もうやることがなくなって、何もできなくなったときだけ。何もせずに『できない』は、ただの甘えだから」
「わぁ、きっつーいこと言いますねぇ」
おどけてみせるジーンに、ふんと鼻を鳴らしてみせた。
「まずは、ベティを狙ってる犯人を突き止める。そのためには、何を調べてきたらいい?」
「そうですねぇ。第一に確認して頂きたいのは、ベティエールの身辺です。身体の不調の悪化はないか、彼が一人でいる時間と誰かといる時間に具体的なリズムがあるのか。その辺りでしょうか」
「わかった。明日お茶をすることになってるから、そのときに確かめる」




