9 いざ≪魔神姫≫就任!
本日二回目の更新です!
純黒のドレスから初心者用装備への着替えを終えたマーサは、ベッドへ倒れ込んだ。
魔神王サイズのその柔らかベッドはボフンと音を立てて、疲れ果てたマーサの身体を包み込んでくれる。
「ふぁああ……結婚なんて初めてだったから、すっごく緊張しちゃった。ちゃんと出来てたかな……?」
魔神王城ではこの日、盛大な結婚式が催された。
花婿は褐色ロリ魔神王アルディエル・ゴールドライト。
花嫁はマーサ。
二人とも性別は女だが、ここはゲームの世界。
そんな些細なことは気にする必要など無いのである。
「でも私、本当に結婚しちゃったんだ……。なんであんなこと言っちゃったんだろう、恥ずかしいよ~!」
枕に顔を埋めて、足はバタバタと暴れる。
改めて自分の行動を思い返し羞恥心で燃え上がりそうになってしまう。
後悔はしていないし、アルディの微笑みを見てマーサも幸せを感じてはいた。
ただ、明らかに勢いで変な行動に出たことが羞恥心を刺激した。
コンコン。
「あ、はーい」
ノックの音に反応してマーサは身体を起こした。
「良い式であったな! どうだ、疲れてはいないか?」
部屋に入って来たのはアルディだった。
ここは魔神王、つまりはアルディの部屋だ。
結婚式の終了後に用事があったアルディは、マーサに先に自室で休んでいるように伝えたのだ。
ちなみに、マーサの部屋は新しく用意されていない。
結婚が決まったと同時に、アルディの部屋を二人で使用することに決めたのだ。
「少し疲れてたけど、先に休ませてもらったから大丈夫」
「そうか、それならば良かったのである」
「アルディちゃんは? 大丈夫? もう用事は終わったの?」
「うむ、吾輩は大丈夫である。人前に立つことには慣れているし、マーサとの結婚式だ。う、嬉しいばかりで疲れなど感じるわけがないぞ!」
「えへへ、ありがとう、アルディちゃん!」
少し照れながらも断言する。
その姿に、マーサも照れ笑いを浮かべる。
そしてアルディもまた照れる。
これぞ照れスパイラル。幸せの螺旋。
美少女二人が照れ笑い合う姿はとても尊い。暗黒古事記にもそう書いてある。
「しかしマーサよ、服は他に持っておらんのか?」
「服? うん、私これしか持ってないよ」
マーサの装備品は完全なる初期装備。
ゲームを始めた状態から一切変わっていない。
「マーサは魔神王たる吾輩と結婚した。ということは、それなりの地位になるのだぞ。魔神王妃? ……いや、それではマーサの可愛さが表現出来ていないのである……!」
「アルディちゃん?」
「それならば、うむ、やはりマーサには姫が相応しい。マーサはこれから、≪魔神姫≫となるのだ!」
『称号≪魔神姫≫を獲得しました』
(称号? なんだろうこれ、後で確認しておかないと)
「あ、ありがとう?」
「魔神姫たるもの、そのような格好ではいけないのである。立場に相応しいものを身に着けるのも、上に立つ者の責務であるからな」
「そうなんだね。姫になるのも初めてだから知らなかった……ごめんね」
「あ、謝る必要などないのである! 魔神姫たるマーサに相応しい服を、宝物庫を引っくり返して見つけ出してきた素材から造り出したぞ!」
アルディは傍らに発生させた暗黒空間から、一着の服を引きずり出した。
両手で掲げるように持ち、マーサへ見せつける。
それは黒を基調としたブラウスに、レース柄のチュールが深紫のスカートを柔らかく覆っている。
その他にもレースやフリルが各所にあしらわれている。
腹部のコルセットは金色の紐で編み込みがされており、更には金色の糸や刺繍が随所に散りばめられている。
正に、気品と可愛さを両立させた逸品であった。
現実世界ではゴシックロリータ。所謂ゴスロリと呼ばれるジャンルのドレスである。
「うわぁ! 可愛い!」
「そうであろう? さあさあ、着てみるのである!」
「うん!」
アルディ謹製のドレスはマーサの琴線に見事触れた。
差し出されたドレスをギュッと抱きしめるように受け取り、早速着替えようとしたところで固まった。
「えっと、どうやって着るんだろう」
「どうした? そうか、少し席を外すからゆっくり着替えるがよいぞ! ここに取り揃えた装備一式も置いておくから、それもしっかり装備しておくのである!」
「あ、うん、ありがとう!」
マーサが固まったのは、装備の変更の仕方が分からなかったからである。
しかし目の前で着替えるのを恥ずかしがっていると考えたアルディは、他にも何点かの装備をベッドに盛り付けた後ご機嫌な様子で部屋を出た。
力作が気に入って貰えたことが嬉しくて仕方がないのだ。
「メリアちゃんに教えてもらう予定だったから、よく考えると基本的な事知らないんだよね……。どこかに説明無いかな?」
画面を呼び出し、色々突いてみる。
すぐにヘルプの項目を発見し、そこからチュートリアルを呼び出した。
五分後には装備の部位や変更の手順について、マーサは完璧に把握することが出来た。
「これはもう私が所有者になってるから直接ここをタップして、と」
両腕で抱きしめるように抱えていたドレスを右手でつつく。
すると仮想ウインドウが出現する。
そこにある≪装備≫のボタンを押すことで、マーサの腕の中から重みが消えた。
そして次の瞬間には、見違えた姿になっていた。
「チュートリアルの通り一瞬で変わるんだ~! すごい、フリフリで可愛い!」
マーサは着心地を確かめながら身体を回して全体を眺める。
ふわりと広がっていたロングスカートが柔らかくなびくのが心地よい。
「あ、装備してたのはストレージの中に入ってるんだね。ほんと便利だなぁ」
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