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65 いざ相談

本日二回目の更新です!


「というわけでミリアはマーサの妹になったから、協力して欲しいのである! うむ、うむ、了解である」


「メルドさん怒ってなかった?」


「マーサの望みをあやつが断るわけないのである。万事任せてくれと張り切っておったぞ」


「それなら良かった」


 アルディが通信用魔道具を使用して会話をしていた相手は魔神王軍幹部である暗黒四魔神が一柱。軍勢の魔神メルドであった。

 彼女は眼鏡を掛けた男装の麗人。見た目通り仕事の出来る有能。

 そのせいか魔神王であるアルディのお目付け役も兼ねており、アルディ自身も含めて周りからの信頼は厚い。


「その、お姉様、別にワタクシの為に手間をかけなくてもいいのですよ」


「駄目だよミリアちゃん。私の妹になったとは言っても、今までは家族だったんだから。お別れの挨拶はちゃんとしとかないと」


「うむ。マーサの言う通りである」


 協力を要請していた内容は、ミリアの件であった。

 マーサの要望により妹となったミリアだがその身分は大国の第三皇女。

 第三とはいえ皇女には変わりなく、それなりの立場にある。

 それをそのまま連れて帰るのは流石に良くないだろうと考えたマーサが実家に伝えるべきだと主張した。


 アルディも全くだと頷いている。

 同意しているだけで特にそうすべきとは思ってはいないが、マーサがそうすべきだと言うのならそうすべきなのである。


「お姉様……ありがとうございます」


 喜び感謝の言葉を口にするミリア。

 彼女にとって元の実家など、既に血の繋がりがあるだけの他人に成り下がっているので特に連絡する必要性を感じていない。

 マーサが気を遣ってくれたという事実に感謝しているだけである。


「それじゃあ、どういう風にするか話し合おっか」


「はい」

(お姉様の水着姿、こうして見ると殺人級の美しさだわ……気を強く持たないとワタクシも死んでしまうかもしれないわね)


「うむ」

(マーサの水着姿はやはり最高であるな。そして妹に言い聞かせる姿もまた美しいのである!!!!)

 

「まず、ミリアちゃんはどうしてこの島に流れ着くようなことになったの?」


「それは、魔導列車に乗っていたら列車が怪物に襲われて、海に放り出されたのです。その後は爆発した列車の破片に必死にしがみ付いて、流される内に気を失ったらしく後の事は覚えていません……。気が付いたらここでお姉様と出会ったのです。日数からして、かけていた生命維持の魔法が上手く維持出来ていたお陰で助かったようですね」


 ミリアはツリ目がちな目をやや伏せた。

 その時の恐怖を思い出して気分が落ち込んでしまったのだ。

 実際、ミリアは海を数日間漂っており、繊細なコントロールと膨大な魔力を持つミリアでなければ流れ着く前に体温を奪われ、脱水症状を起こし死んでいただろう。

 それほどまでに危険な状態だった。


「なるほどー……」


 対して、マーサは複雑そうな顔を浮かべた。

 ミリアが漂流する羽目になったのは魔導列車を破壊する計画を立てたからであると気付いたからだ。


「その怪物はマーサのペットでな、魔導列車の爆破は我々の仕業である!」


「実はそうなの。その――」


 アルディが高らかに宣言をした。

 それを聴きながらマーサは申し訳なさそうに謝罪の言葉を口にしようとしたが、その前に遮られることとなった。


「ありがとうございますお姉様!」


「――え?  ありがとう?」


「ええ、そうです。感謝の気持ちでいっぱいです。そのお陰でワタクシはこうしてお姉様達に出会うことが出来たのですから」


「ミリアちゃん……!」


「うむ、殊勝な心がけであるな」


「勿論です」


「えーっと、じゃあミリアちゃんは今のところ行方不明だと思われてるのかな?」


「多分そうなりますね」


「そうなると尚更連絡しないとね。私の妹になった、っていうのも併せて連絡するでいいかな? やっぱり理由もきちんと知っておきたいだろうし」


「はい、ワタクシもはっきりと伝えておきたいです」


「それじゃあ手紙を用意しよっか。ここには紙もペンもないからメルドさんに代わりに書いてもらうとして、それならミリアちゃんからの手紙だって分かるようにしないといけないよね」


「皇女は皇族の証としてこの指輪をしているので、これを同封すれば信じてもらえると思います」


 ミリアは左手に嵌めていた指輪を抜いてアルディへと差し出した。


「ふむ、しかしこれだけだと弱いかもしれぬのである。髪を一房もらってもいいか?」


「いいですよ」


「では失礼するのである」


 アルディはミリアの薄水色の髪の毛を軽く一房握ると、反対の手で切り取った。

 その髪の毛を指輪に括りつけると満足そうに頷いた。


「これで証拠としては問題ないのである」


「ありがとうアルディちゃん。手紙の内容だけど、まずはもう帰らないっていうことと、その理由だね。理由は私の妹になって仲良く暮らすから、って感じ?」


「お姉様ったら、恥ずかしいです」


「えへへ、でもそうでしょ?」


「そうなんですけど、やっぱりまだ恥ずかしいです」


「ええへ。……また脱線しちゃった。あと考える事ってあるかな」


「ミリアよ、一つ聞きたいんだが、お前のいた帝国とやらはお前を取り返そうと動くようなところであるか?」


「それは……」


「どういうこと?」


「いくら手紙を書いたとしても、ヒトというものは都合の悪いことを信じようとしないものである。そうなった時に躍起になって取り戻そうとするような連中かどうか確認しておきたかったのである」


「なるほど」


 説明を受けて納得するマーサ。

 そのタイミングで、考え込んでいたミリアも渋い顔のまま口を開いた。


「正直な話、第三皇女であるワタクシにはあまり価値はありません。政略結婚の材料に使うにしても、国力を考えれば政略結婚自体にメリットがほとんどありませんし。ただ……」


「ただ?」


 言いよどむミリアに対して、オウム返しをしながら小首を傾げるマーサ。

 その仕草だけでアルディは三日は生きて行くだけの栄養が補給出来る。


「元お父様……皇帝がその自分で言うのもあれなんですけど、とてもワタクシを溺愛していまして……」


 皇帝の期待を受けて短期留学に臨んだ彼女であったが、それは表向きの話である。

 実際は皇帝は大反対。

 僅かな時間すら手元から離したくないと大騒ぎ。臣下も全員ドン引く程の駄駄っ子ぶり。

 五十を過ぎた髭面強面のおっさんが泣きわめきながら床を転げまわる姿は宮殿を震撼させた。

 結局ミリアの母親である妃に説得(物理)されたことで留学が決定したという経緯があった。


「分かった。それなら取り戻しに来たりしないようにしないとね」


「そうであるな」


「それじゃあ今言ったような内容でメルドさんに伝えてもらっていい?」


「うむ、任せておくのである!」



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― 新着の感想 ―
[一言] >アルディはミリアの薄水色の髪の毛を軽く一房握ると、反対の手で切り取った。 >その髪の毛を指輪に括りつけると満足そうに頷いた。 >「これで証拠としては問題ないのである」  いやいや、これだ…
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