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6 いざ魅了!

本日四回目の更新です!


 午後八時。

 オープニングイベントの開始時間だ。


「おー、空が赤くなったー!」


 マーサは空を見上げていた。

 満天の星空が一瞬で赤く染め上げられた不思議な光景に感動を隠せず、飛び跳ねながらはしゃぐ。


「景色とかすっごいリアルだけど、こういうの見るとやっぱりファンタジーって感じがして楽しいなー! ――えっ?」


 不意に景色が切り替わった。

 街並みや人混みが消え、不穏な気配が漂う場所にマーサは居た。

 周囲の雰囲気には特に気付かず、ただ先程までとは違う場所にいる事に驚いている。


「吾輩の名はアルディエル・ゴールドライト! 破滅と絶望から生まれた魔神の王である!」


 可愛らしさ全開の声が、マーサの意識を混乱から引き戻した。

 そして、再び混乱させた。

 更に、自分の周りからは歓喜の声が爆発した。


「うおー! きったー!」


「やっべ、マジ可愛い! 今月の生活費と引き換えにした甲斐があったぜこれは!」


「あああああかわわわわわわわわわわ!!」


「フラグ、どうにかしてフラグは立てられないか! 駄目だ、こっちを欠片も見てくれない!」


「えっ? ええっ?」


 慌てて周囲を見渡すと、マーサの側には四人の男達がいた。

 誰もがとても嬉しそうな顔で、思い思いに叫んでいる。

 恐怖を感じて思わず距離を取りそうになったが、身体は動いてくれなかった。

 まるで何かに縛り付けられるかのように、足が地面から離れない。


(あっ、もしかしてこれがガチャS賞の効果かな?)


 そして一つのアイテムを思い出し、マーサは落ち着くことが出来た。

 その予想通り、マーサをこの場所に連れて来たのはとあるアイテムの効果である。


「吾輩の力を見せつけてやる為に、こやつらには終焉(しゅうえん)狼煙(のろし)となってもらう!」


 アイテムの名前は≪地獄への招待状≫。

 その効果は、オープニングイベントの際にラスボスである魔神王アルディエル・ゴールドライトによる演説を間近で見ることが出来る。

 そしてもう一つ。


「≪終焉導く金の極光デッドエンドゴールドライト≫!!」


「あっ――!?」


 魔神王アルディエルの必殺技をその身で受ける権利である。





「ふーはっはっは! やはり吾輩最強であるな!」


 撮影が終わったところでアルディエルは満足そうに高笑いをあげた。

 自分に絶対の自信を持つロリ魔神王。

 アルディエルはそう設定されたNPCであり、このゲームのラスボスである。


「さーって、吾輩の力の証明をしっかり眺めてから城に帰って宴会を――んん?」


 光の奔流が収まり始めたところで、アルディエルはふわりと浮き上がって爆心地へと向かった。

 自分の必殺技を炸裂させた光景を眺めて、酒の肴にするつもりだったのだ。

 しかし、光の中に動く陰が見えたような気がした。

 

 本来ならば有り得ない。

 ラスボスである彼女の必殺技は間違いなくこの世界において最強。

 しばらくプレイヤーと邂逅することはないだろうということで、ステータスは雑に最強に設定されているのだから。


「やっと収まったー……ってええぇ!? なにこれ、何これ!?」


 クレーターの中心に立っていたのは、マーサだ。

 光が収まったのも束の間、荒れ果てた周囲を見て驚いている。

 

「な、ななな、何だとぅ!?」


「きゃっ!?」


 驚いたのはアルディエルも一緒だった。

 まさか自分の必殺技を受けて無事な者などいる筈がない。

 そう思った彼女は弾丸のように飛び出すと、マーサの目の前に着地した。

 そしてマーサへと詰め寄った。

 

「貴様、何者だ!?」


「え、えっと私はマーサっていう名前で――」


 ジッと目を見て問いかける。

 その問いにマーサが答えようとしたところで、視線を合わせて五秒が経過した。


「ふむ、マーサというのだな。では、吾輩を僕にしてはくれないか!?」


「し、僕?」


「そうである。吾輩、マーサの目に惹かれてしまったのだ。こんな気持ちは、初めてなのである。――だから吾輩を僕に!」


(な、何何? この子ってさっき魔神王って言ってた子だよね……? これって何かのイベント? さっきまでここにいた人達もいなくなってるし、どうしたらいいんだろう!?)


 困惑するマーサを助けてくれる者は誰もいない。

 見える範囲にはクレーター状にえぐられた地面しか無いし、そこにいた四人のプレイヤーは先程の攻撃で消し飛んでいる。


「え、えっと、まずはお友達からお願いします?」


「まさかこの魔神王たる吾輩を前にして、友達からなどと――!!」


 アルディエルは語気を強めて、顔を伏せてしまった。

 握り締めた拳は小刻みに揺れて、全身から圧力が噴き出す。


(お、怒った? どうしよう、なんて返すのが正解だったの? こういう時ってどうしたらいいの!? 助けてメリアちゃーん!)


 慌てるマーサだったが、それは杞憂であった。

 がばっと顔を上げたアルディエルは満面の笑顔を浮かべていたのだから。


「マーサは謙虚なのだな! 吾輩を支配したり手籠めにしようとした者は数多くいたが、まさか僕になりたがった吾輩にまずは友達から等と、器の大きさを思い知らされた気分なのである!」


「え、え?」


「ではゆくゆくは吾輩を伴侶にしてくれるのだな! では婚約の証として、マーサと吾輩は親友の(ちぎ)りをここに交わすのだ!


 アルディエルはマーサの頬に口づけをした。

 少し背の低いアルディエルが精一杯に背伸びをする姿は、ロリコンと百合好きが涙に溺れる程の奇跡の光景であった。


「わっ、あ、うん、よろしくね、アルディエルちゃん!」


(よく分からないけどお友達が出来たのは嬉しいな!)


 マーサはその行動の意味をよく理解しないまま、友達が増えたことを純粋に喜んだ。


「吾輩のことは愛を込めて、アルディと呼んでくれ!」


「うん分かった、アルディちゃん!」


「うむ。では親友であるマーサを我が居城に案内しよう!」


「えっ、わあぁ……!」


 アルディエルが上機嫌で指を振るうと、二人の身体がふわりと浮き上がった。

 先程自身にも使用していた浮遊の魔法≪フロート≫である。

 最強のラスボスである魔神王アルディエルは、中級以下のスキルは詠唱も発動呪文も無しで発動することが出来るのだ。


 こうして魔界の空を駆け、マーサは魔神王城へと招待された。



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