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55 いざ観光!

体調不良の為遅くなりました

なるべく毎日更新しますが、たまに不定期でお休みします

ご了承ください


 ついにやって来た旅行当日。

 それはただの旅行ではない。愛し合う二人が結ばれ、祝い絆を更に深める為の神聖なる儀式。

 そう、新婚旅行である。


 主役は勿論新婚ホヤホヤである二人。

 プレイヤーであるマーサと、このゲームのラスボスである魔神王アルディエル・ゴールドライト。

 いくつもの奇跡や偶然の結果、二人は結婚することとなった。

 ここはゲームの世界でしかないが、だからこそ楽しみ方は人それぞれ。NPCであろうと愛する人と結ばれることは祝福されるべきことでしかない。


「マーサ、準備は出来たであるか?」


「うん、大丈夫だよ!」


「では行くとするか。≪転移の門(ワープゲート)≫」


 二人の前に光の渦が現れる。

 アルディはとてつもない魔力を持っており、あらゆる魔法を使いこなすことが出来る。

 どこか誇らしげなアルディと、楽しみで仕方ないマーサ。

 笑顔の二人はどちらともなく手を繋ぎ、一歩踏み出す。


「アルディエル様、マーサ様、いってらっしゃいませ」


「「「「いってらっしゃいませ」」」」


「では行ってくるのである!」


「行ってきます!」


 見送りの為にずらりと並んでいた臣下達の見送りを受けて、二人は光の中へと駆け出した。





 魔法都市フェーブル。その名の示す通り魔術の発展した都市である。

 街並みは石造りの建物が乱雑に建ち並び、中央には塔と呼ばれる最高教育機関を兼ねる中央大陸でも最大級かつ最高峰の魔術の教育機関がそびえている。


 この街の興りとしてはすごくシンプルだ。

 かつて古の賢者と呼ばれる超越的な魔法使いがおり、何も無かったこの場所に円形の平屋を建てた。

 その話を聞きつけた魔法使い達は弟子入りをする為に押しかけた。

 賢者は自らの知識を広める為にこれを快く受け入れ、最初の家を囲うように新たな施設を建設した。

 後は、周囲を囲うようにどんどん拡張していき、それと同時に周囲にも魔法使い達の建てた家が生えていった。


 賢者の家を囲うスペースがなくなったので、二階を作り始めた。

 それが続き、やがて巨大な塔となった頃にはもう立派な街が出来上がっていたのである。


 魔法使い達が住みつき他の者たちも便乗して集まって出来た街であるが、そのお陰か魔法に関しては随一の発展を見せている。

 そこかしこで魔法使い達は自らの研究成果を売りにした商品を宣伝して回っている。

 魔法使いの住む家はそのほとんどが工房であり、商店なのだ。


 そんな魔法の街を二人の少女が歩いていた。

 アルディとマーサである。

 マーサはアルディからもらった一式装備でフルコーディネイト。黒や黒に近い紫を金の紐や刺繍が彩ったゴスロリに近いドレスは、魔法使いの多いこの街でもおおいに目を引いた。

 

 対して隣を歩くアルディもいつもの格好である。

 お腹丸出しにショートパンツにニーソックス。翻るマントから覗くその絶対領域は輝かんばかりの魅力を備えている。

 そして、その頭頂部、やや左側に傾くようにして、金の王冠が乗っていた。


「うわぁ、すごいねアルディちゃん。ここが魔法都市、ってところなの?」


「うむ、そうなのである。今日はここを観光するのである」


 アルディがまず選んだのがここであった。

 魔法の最先端発信地であるここには色々なものがある。例え魔法に興味がなくとも、新たな魔法を使った道具や設備などは人気が高い。

 それらの情報を優秀な部下によって得たアルディはやっと、候補地を人間の生活圏から選ぶことが出来た。

 次の目的地を加味しての選択ではあるのだが。


「しかし、妙に視線を感じるのであるな」


「そう? 全然分からないけど、アルディちゃんはすごいね!」


 キョロキョロと辺りを不思議そうに見た後、にっこりと笑顔を見せるマーサ。

 アルディは癒されつつも不安を覚えた。


(ううむ、もしや吾輩が魔神王であることに気付かれたか? うむ、吾輩のオーラは隠せんだろうからな、そうなっても当然であるな。それに、マーサもこの可憐さである。吾輩が丹精込めて作ったこの衣装と合わされば魔神姫として吾輩以上の存在感に違いない。)


 実際はアルディが思っている理由とは違う。

 とてつもない美少女が二人、仲良く手を繋ぎながら楽しそうにしているのだから誰だって目を引かれてしまう。

 老若男女、森羅万象を吸い込んでしまう力がそこにはあった。

 しかし間に挟まろうとする者は万死に値する。

 今も二人の肩に手を置いて間から声を掛けようとした不届き者が、路地裏へと引きずり込まれ断罪されていた。


「んー、観光楽しみだね。どこか目当てのお店とかある? もし無かったら適当に見て回るのも楽しそうだよね」


「ん、ああ、とりあえずそうだな、あそこなんてどうであるか?」


 アルディが指差したのは、服屋であった。

 軒先は色鮮やかな服の数々が掛かった衣装台が並び、そのまま店内まで続いているという中々に大きなお店だ。


(今回は仕事を全て放り投げての新婚旅行。正装である必要も無し。であるならば、変装も兼ねて服の一つや二つプレゼントしておくのは良いアイデアである。流石吾輩であるな)


「あ、私も丁度あそこ気になってたんだ。行こう、アルディちゃん!」


「そんなに慌てると転んでしまう、気を付けるのである」


(守りが減るのは気がかりではあるが、万が一に備えて保険は多重にかけてある。ならば今は楽しむのである)


 楽しそうに服屋へと入って行く二人。

 マーサに服を選ぶつもりのアルディであったが、マーサも同じことを考えていた。

 露出を抑えつつも可愛いワンピース等を着せられて照れるアルディの姿は、他の客が正気を保っていられずに自ら外へ飛び出していく程の尊さであった。


 そしてそれを遠巻きに見守るのは気さくな筋肉こと筋肉の魔神ゴッスル。

 暗黒四魔神の一柱である彼は魔法で全身ササミとなった鳥の丸焼きに齧り付きながら、片手で腕立て伏せをしていた。



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― 新着の感想 ―
[一言] てぇてぇかと思ったら最後カオス笑笑
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