50 いざ一件落着!?
引っ越しやらでバタバタしております。
すみませんが、気長にお待ちください
鉄の街アインボックスは魔神姫へと献上され、魔神王の傘下へと下った。
そんな展開は誰も想定していなかったが、この世界の運営は生きているようなNPC達によるほぼ全自動アドリブ型。とんでもないプレイヤーがとんでもないことをすれば世界もまた、とんでもない方向へと突き進むのだ。
勿論あまりにも酷ければ待ったがかかるが、運営が下した決断は≪様子見≫であった。
「マーサ様ー!」
「魔神姫様ー! 可愛いー!」
「魔神姫様ばんざーい! 魔神王様ばんざーい!」
その結果、マーサが街を歩くと住民達から大歓声が上がる。
どこからともなく現れる人々。人人人。
左右に広がるのは人の壁。道の両脇を固め、老若男女が手や手作りの旗を振る。
飛び交う花弁や紙ふぶき。
軽快な音楽を鳴らしてマーサの前後を歩くのは偶々この街を訪れていた吟遊詩人達。
楽しそうにステップを踏んで楽しそうに演奏している。
マーサが魔神姫であることは街中に広まった為、もう正体も隠していない。
魔神王アルディエルから贈られた装備一式に身を包み、黒に近い紫の毛色をした立派な馬に揺られている。人々を魅了する笑みを振りまきながら、緩やかに片手も振る姿はとても愛らしく美しい。
愛馬に並んで歩くのは、紫色の長い毛皮を着た山羊である。
立派な角であらゆる障害を跳ね除けると言わんばかりに誇らしげな、けれどどこか眠たげな眼をしている。
さらにその山羊の上には、凛とした姿で大鷲が佇んでいた。
時折見せつけるように広げるその翼は二メートル程にもなり、飛ばずともその威容を見せつけていた。
マーサが領主の息子を返り討ちにした翌日、宿屋から出掛けたらこの騒ぎであった。
どうしてこうなったのかは本人にも分からない。
もはやパレードの主役として笑顔で手を振る事しか出来なかった。
▽
「マーサ様ありがとー!」
「可愛かった! 最高!」
「撤収! 撤収してください!」
「即解散しないと魔神姫様のご迷惑になりますよー!」
住民達の声を背中に浴びながら、マーサは扉を開けて冒険者ギルドの中へと入った。
外に残しておくとファンにもみくちゃにされる危険があると考え三匹のペットも一緒である。
「はぁ、やっと着いたね」
「ピィ」
「ヒヒン」
「メェ」
遠ざかって行く民衆の気配に、マーサはため息を吐いた。
喜んでくれるのは嬉しいあそこまでの規模となると恥ずかしさが勝ってしまうようだ。
そんなマーサに気付いた受付嬢が小走りで駆け寄ってきた。
「ああ、マーサ様、このような汚い所へわざわざお越しいただくなんて恐縮でございます。ご用件があるようでしたらお呼び出しいただいて差し支えありませんよ」
「いえ、大した用件じゃないので申し訳ないです」
「申し訳ないだなんて、私達はもうマーサ様のものなのですから、気遣いは無用です」
「私のもの……?」
「はい、魔神姫マーサ様のものです」
マーサは言葉の意味が理解出来ず聞き返した。
しかし受付嬢は至って真面目な表情で同じ言葉を繰り返す。
やっぱり理解することが出来ないマーサは、スルーすることに決めた。
「ここに来た用件なんですけど」
「マーサ様に立ち話をさせるなどあってはなりませんので、一先ずこちらへどうぞ」
「あ、はい」
こうしていつもの部屋に通されたマーサは、用件を伝えた。
そこには受付嬢だけでなくギルドマスターも同席していた。
「なるほど、もうこの街を出るんですかい」
「はい、そろそろ帰らないと、アルディちゃんが心配してくれてるらしいので」
「では先日の報酬を用意しやしょう。例のものを持って来てくれ」
「はい」
ギルドマスターが声を掛けると、受付嬢は一礼して退室した。
そしてすぐに大きな袋を持って戻ってきた。
どちゃりと重量感のある音を鳴らしてテーブルに置かれる。
「こいつが今回の討伐の報酬です。納めてくだせぇ」
「わ、ありがとうございます!」
こうしてマーサはアインボックス周辺の領地を丸ごとと、それなりのお金、そして希少な金属を報酬として手に入れ、魔神王アルディの待つ城へ帰るべく街を出た。
▽
称号≪救世主≫を手に入れた!
アインボックス領を手に入れた!
称号≪影の支配者≫を手に入れた!
200000cを手に入れた!
ミスリル×10を手に入れた!
オリハルコン×5を手に入れた!




