表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

5/66

5 いざガチャガチャ!

本日三回目の更新です!


 十九時になってから数分の後、待ち合わせ場所にメリアがやって来た。

 いつになくご機嫌な様子だ。


「待たせた?」


「少し前に来てたけど、色々調べたりしてたから大丈夫だよー」


「そっかそっか。で、輝石どんくらい集まった?」


「えーっとねー……一万二千個くらい!」


「いっ!? い、一万二千ってあんた、どんだけ掘ったの」


「一日十八時間くらいかな。眠かったけど、楽しかったからあっという間だったよ!」


「いやすごいな。マーサを仲間に誘って正解だったよ」


「えっへへへ。メリアちゃんはどのくらい採れたの?」


「私はまぁ、ぼちぼちってとこかな。そんなことよりマーサ、ガチャは引いた?」


「ううん、まだこれからだよ」


 メリアの露骨な話題の転換も特に疑問に思わず、マーサは笑顔で答えた。

 輝石を掘ることは目的ではない。

 ガチャを引く為の手段である。


「それじゃあさっさと引いちゃいなよ。二十時からは正式サービスを記念してのオープニングイベントもあるんだしさ」


「そうだね。それじゃあえーっと……」


「そこを押して、一括を選ぶと持ってる輝石で引けるだけ引くから、それ選んで」


「分かったー。一括を選んで、えいっ」


 一括でガチャを引いた為、入手したアイテムもまた一覧となって表示された。


 ガチャは輝石三百個で一回引ける。

 一万二千四百二十九個の輝石は、ガチャに換算すると四十一回分にもなる。

 余った端数の輝石はゲーム内通貨に変換される親切設計だ。


「何かいいの出た?」


「ちょっと待ってね……どれがいいのなのか分からないよ?」


「一覧はランクで分けられてると思うよ。S賞からE賞まであって、S賞に近い程レアでE賞に近い程普通のアイテムだからね」


「なるほどー。S賞は無いけど、A賞は四つあるし、B賞も六つあるよ!」 


「おー、運がいいね。でも、私はS賞当てたよ」


「え、ほんと?」


「ほんとほんと。すっごくいいアイテムだけど、もしマーサが欲しかったら交換してあげるよ」


「いいの? だってS賞だよね?」


「そうだけど、この三日間別行動してたからそのお詫びも兼ねて? 悪く感じるんなら、AからD賞までのアイテム全部でいいよ」


「うん、いいよ! だってS賞だもんね!」


「それじゃあ交渉成立ということで」


「うん!」


 メリアは取引を申し込み、マーサがそれを受諾。

 メリアからはS賞のアイテムが一個。

 マーサからはA賞からD賞までのアイテム、計三十七個が差し出された。


「ありがとねー」


「私の方こそ、ありがと! これって、どんなアイテムなの?」


「なんか、持ってるとこの後のオープニングイベントで特別なことが起きるらしいよ」


「そうなんだ、すごいね!」


 マーサは一番レアなアイテムが手に入って上機嫌。

 メリアも、記念以外の意味を持たないS賞よりも遙かに有用なA賞やB賞のアイテムが手に入ってご満悦であった。

 質問に適当に返しながら、アイテムの説明を眺めては笑みを噛み殺すのに必死だ。


「ああそうだ、このアイテムは私よりも初心者のあんたの方が持ってた方がいいよ」


「どれ?」


「B賞に入ってた≪身代りの宝珠≫ってやつ。どんなダメージも一回だけ無効化してくれるんだってさ」


「へー、それもすごそうだね」


「そりゃすごいよ。完全にゼロにしてくれるわけだからね。これさえあればどんなに強いラスボスだろうと裏ボスだろうと、一撃を耐えられるよ」


「そんなにすごいアイテムを返してもらっちゃっていいの? 私はS賞をもらったのに」


「いいよいいよ。もし気になるなら、E賞のアイテムと交換でいいよ」


「分かった。それじゃあはい、これ!」


「うい、確かに。それじゃあ私は他の友達と約束があるからもう行くわ。またねー」


「え、そうなんだ。うん、それじゃあまたね!」


(すぐ一緒に遊べると思ってたけど、残念だなぁ。でもまたすぐに遊べるよね)


 メリアは、マーサの気が変わらぬ内にと足早に去って行った。

 マーサに背中を向けた途端浮かべた愚劣な笑みは、誰も気付く者は居なかった。


「んー、それじゃオープニングイベントまで少し休もうっと」





 メリアが向かった先は、一軒の酒場。奥まった四人掛けの席。

 そこには少し良い装備を身に着けた、三人のプレイヤー達が居た。

 一人は女で、二人が男。

 メリアを合わせればバランスの良い四人パーティーとなる。


「お待たせ―。色々ゲット出来たよ」


「うおっ、マジか。黒鉄剣に火鼠の鎧まであるじゃねーか。これってテストだとそこそこ先で手に入ってた装備だろ」


「A賞だからね、そのくらいの価値がないと」


「おいおい、ガチャ何回引けたんだ?」


「四十回くらい」


「ってことは輝石が一万二千個か!?」


「友達のステータスとスキルを採集に全振りして、三日間ずっと採掘させるとか酷すぎんだろ」


「本当よねー。付き合い長いけど、メリアちゃんのそういうとこ鬼だわー」


「廃人マジこえーわ」


「それな」


「ガチ廃人のあんたたちに言われたくないし。別に、オススメしただけでそうしたのは自己責任だし? このアイテムだって、交換しただけなんだから人聞きの悪い事言わないでよね」


「何と交換したんだ?」


「≪地獄への招待状≫」


「あー、あのハズレS賞か」


「オープニングイベントが特別席で見れる、ってやつか。そりゃゴミだわ」


「でっしょー。でもS賞なのは間違いないから。五千いるβテスターがガチャ引きまくっても、五人しか当選しないアイテムなんだから釣り合いは取れてる筈。それに、B賞も一個返した」


「B賞でハズレ枠って何があったかしら」


「ハズレ渡した前提なのは何で?」


「お前の性格的にだよ」


「なんだっけほら、あれだ、あれ……そうだ、≪身代りの宝珠≫じゃね?」


「釈然としない。……正解だけど」


「ほらあってるじゃねーか」


「それってどんな効果だったかしら?」


「どんな攻撃も完璧に防ぐ。ただし、対象は選べない。つまり、どれだけ低い威力の攻撃だろうと一撃受けた時点で防いで、そのまま消えちまう」


「あー、理解したわ」


「タイミング選べればまだ使い道あるんだけどな。低レベルで攻撃を食らわないなんて不可能だから、早々に使って消えてしまう悲しいアイテムだ」


「もうあいつの話はいいって。それよりも、早くこの装備を分配して狩りに行こうよ。一般プレイヤー共にスタートダッシュ決めてやらないと」


「おう、そうだな」


「メリアの頑張り、有難く使わせてもらうぜ」


「私はこの杖をもらうわね」


「ちゃんと私に感謝して使ってよね」


(ふふ、長峰さんって馬鹿よね。扱いやすくて助かったわ。βテストすっぽかすような、お遊びでやってるあいつには採集しか出来ないゴミキャラがお似合いよ)



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ