45 いざ完成!
用意はしていたのですが、投稿が遅くなりました、すみません
加工した金属を携えて、マーサはアクセサリーショップへとやってきた。
早速とばかりに材料を積んで行くマーサに店主は驚きすぎて言葉を失っていた。
「あ、あ……」
「これくらいあれば足りますか?」
手始めにとばかりに取り出したのは、各種金属のインゴット。
鉄、銅、銀、金、ミスリル、それらが二十ずつ。
それぞれサイズが違うのは一個あたりの重量が五百グラムに統一されているからである。
「……店長さん?」
「え、ええええ!? 金に銀にミスリルまで! しかもどれもこれだけの数って、流石冒険者さん! 仕事が早いですね!」
「プレゼントの為に頑張りました!」
「そうでしたそうでした。冒険者さんの期待に応えられるよう精一杯作らせて頂きます!」
マーサがモンスターを討伐したり、金属を用意したのは勿論人助けの意味もある。
しかし、アルディへ贈るプレゼントという想いがあったからこそ、マーサは二日間不眠不休で採掘を続ける事が出来たのだ。
「では、冒険者さんの希望とかお聞きしていいですか?」
「分かりました。指輪はもらったのがあるので、他のものにしようと思ってて……」
「あ、すみません、せっかくなので馴れ初めとか赤裸々な想いとかそういうのまるっと全部語ってもらってもいいですか? きっとその方が素敵なものが出来ると思うんですよ」
「ええっと、少し長くなっちゃうかもしれないんですけど、迷惑になりませんか?」
「ええ勿論! 絶望の中にいた私を救ってくれた冒険者さんより優先するものなんてほとんどありませんよ!」
「分かりました。では初めからいきますね」
「ばっちこいです! あ、山羊さんには毛布しいておいてあげますね。睡眠は大事ですからどうぞこちらで横になってください」
「メェ」
マーサはアルディとの惚気話を楽しそうに語って聞かせた。
時々恥じらいながら、時々落ち込みながら。それでもほとんどの時間、幸せそうな表情を浮かべていた。
そんなマーサの顔を見て、店主も気合いも増していった。
店を救ってくれた大恩人。
その大恩人が大切な人へ贈るサプライズなプレゼントを最高のものにすることが出来る。
それほど嬉しい事はなかった。
「と、いうような感じでいいですか?」
「なるほど、とても素晴らしいお話を聞けました。これはもう気合いが入りますね!」
たっぷり五時間程話したところでマーサは満足そうに〆た。
その顔に疲れはなく、清々しい笑顔を浮かべている。
店主に語る内に、自分の中にあるアルディへの愛情としっかり向き合うことが出来たのだ。
対する店主も全く疲れは無い。
焼けるようなその愛に感化された彼女はその迸るエネルギーを早く作品にぶつけたくて仕方がないのである。
「それでは注文通りの内容で作成しますね。少々お待ちください」
「はい、お願いします!」
「豪華魔導船に乗ったつもりでいてください!」
マーサが深く頭を下げたのを見た店主は、自信満々に告げると店の奥へと消えていった。
何かを叩いたり削る音を聞きながら待つこと数分。
何かを成し遂げたような満足気な顔の店主が姿を現した。
手には布に包んだ何かを持っている。
それを静かにカウンターに置いた後、店主はマーサへと輝く瞳と笑顔を向けた。
「会心の出来ですよ! これはもうファンタスティックウルトラ神話級間違いなしです!」
店主は自慢げな顔で布を開いていく。
そこには黄金に輝く王冠があった。
「わぁ……」
その煌めきに、マーサの瞳も輝いていく。
美しさに感嘆の呻きしか漏れない。
それは、八枚の板を並べて輪にしたような八角形の王冠だった。
下半分は細かな彫刻が施してあるがこれは何かを形作る為ではない。
きめ細やかなレースような穴を空けた板にもう一枚同じように掘った板を重ねたそれは、光を幾重にも反射して黄金に輝く為の細工であった。
そして八枚の板の上半分は、交互に並ぶよう二つの形に切り抜かれていた。
月と太陽。
二人が永遠に寄り添い共に歩んで行くという願いを込めたモチーフである。
「これが私の魂を込めた一作、その名も≪ゴールドライト≫です!」
「すごい、すごいです店長さん! とっても素敵です……!」
「そうでしょう!? 正直私もドン引くくらいド凄いものが出来て驚きました」
予想以上の出来は店主自身ですら一瞬真顔になる程であった。
それはマーサのスキルにより金属の質が最高ランクになっており、さらには作成時に低確率で発生する
超大成功を引き当てたことも大きく影響していた。
先程の店主の台詞もその結果を受けてのものである。
「ありがとうございます店長さん。これを持ってアルディちゃんのところに帰ろうと思います」
「ええ、ええ、その熱い想いを伝えるお手伝いが出来たこと、とても嬉しいです。もう思い残すことはありません、ありがとうございました!」
「そんな、お礼を言うのは私の方で――あれ?」
気付けば店主は消えていた。
店の灯りも消え、所々空いている隙間から差し込む光だけが≪ゴールドライト≫を輝かせていた。




