42 いざ追加依頼!+ニュース
ギルドを後にしたマーサは一軒のアクセサリーショップへとやって来た。
目的は勿論、頼まれた依頼の報告である。
依頼自体はギルドから発行されているものだが、マーサが依頼を受けるきっかけはこの店の店主に頼まれたことだ。
困っている店主の頼みを聞く代わりに魔神王アルディエルへのプレゼントを作成してもらう約束となっている。その為もあり、マーサは張り切って鉱山へと向かったのである。
「店長さん、いますかー?」
「はいはい、いますけどお売りできるものは何も――冒険者さん? こんなに早く帰って来るなんて、何かありました? まま、まさかどこか怪我でも? でもでも無事帰って来られて良かったです」
「店長さんに頼まれてた依頼、片付けてきました!」
「ええっ!?」
驚く店主に、マーサは明るい笑顔で説明した。
鉱山で大量のプリザーブドプリズムを討伐し、そのままの勢いで原因と思われるタコ型モンスターまでも撃破したことを。
それにより鉱山ももうすぐ解放されるかもしれないということを。
「えっと、すみません、お客さんそれ、マジですか?」
「本当だと思います。私はよく分からないけど、ギルドマスターのダリガンさんがそんなことを言ってました」
「ダリガンさんが……それは確かにマジっぽいですね」
アインボックス支部のギルドマスターダリガンは、見掛けによらず誠実で知識深いことでよく知られている。
鉱山がモンスターに占拠された今回の事態に対しても、解決に向けて方々に手を尽くしていた。
更に、金属が不足する中で立場の弱い工房等に代わり金属の配分の交渉にも臨んだ。
色々なタイミングが重なった結果問題が長引き結局力は及ばなかったとしても、住民の多くがその姿を知っている。
店主の女性もその内の一人であり、ダリガンへの信頼は厚かった。
「はい、だから安心してください!」
「ありがとうございます! ……こんなに早く問題を解決してくれるなんて、お客さんはすごい冒険者なんですね!」
「そんなことはないんですけどね、あはは……」
鉱山の攻略を自分の力でした覚えがないマーサは、店主からの賞賛に苦笑いを浮かべた。
「そんなことありますって。それじゃあ、鉱山の調査が終わって問題が無い事が確認されたらすぐにでも採掘が始まると思います。多少時間はかかるでしょうけど、金属の流通が再開して値段も落ち着く筈です。そしたらすぐにでも依頼の品に取り掛かりますね!」
「やった。楽しみにしてますね」
「任せてください!」
店主はそれなりにある胸を張って、鼻から大きく息を吐いた。
「ちなみにどのくらいかかりますか?」
「正確には分からないですが、安全確保と、採掘再開の準備と、後は採掘した後の流通も争奪戦になるだろうから……早くとも二週間くらい?」
「二週間!?」
「それでももうすぐ材料が手に入ると思えば短いですよ!」
「うーん……」
店主の顔は明るい。
手が出せない価格帯となっても尚吊り上り続ける値段。
在庫は無く蓄えも徐々に減っていく。増していく不安。
そんな状況に比べれば、終わりが見えた時点でもう一寸先は光でしかない。
反面、マーサは困ったような表情を浮かべた。
家出をしてここにいるマーサは、お詫びを込めて魔神王へサプライズプレゼントを贈るつもりであった。
そんな中で連絡もなく二週間も過ごせばどうなるか。マーサの脳内では悪い想像がどんどんと膨れ上がっていく。
(いくらアルディちゃんでも二週間も連絡しなかったら嫌われちゃうよね。もう一生仲直り出来ないかも……! そうなったら私、どうしたら……!)
「お客さん? お客さーん、大丈夫ですか―?」
「――はっ。駄目です、そんなには待てません!」
「それでもダリガンさんが頑張ってくれてこれくらい、っていう期間なんですよ。普通だったらもっと掛かると思います」
「でも二週間はちょっと長すぎて……そうだ!」
どうしても二週間待つことに抵抗のあるマーサは名案を思い付いた。
名案過ぎてマーサの脳内を占めていた不安が全て消し飛んでしまったかのような満面の笑みを浮かべている。
「私が掘ります!」
そうして、ギルドに取って返したマーサはダリガンから特別に許可をもらい、装備を整えた上でペットのミヤと共にアイン大鉱山へと乗り込んだ。
採掘の鬼と化したマーサは掘って掘って掘りまくり、街に戻ることもなく二日間が経過した。
〇〇市で十五日、VRゲームをプレイ中の女子学生の腹を包丁で刺して殺害しようとしたとして、同級生が逮捕されました。
殺人未遂の疑いで逮捕されたのは同市在住の女子学生倉持容疑者です。
警察によりますと倉持容疑者は十五日午前十時ごろ、同じく学校に通う十代女子学生の腹部を包丁で突き刺し、殺害しようとした疑いが持たれています。
物音に気付いた家族が警察に通報したことで発覚しました。被害者の女子学生は病院に搬送されましたが、意識不明の重体で回復の目途は立っていないとのことです。
倉持容疑者は「刺したのは間違いないが、殺すつもりはなかった」と容疑を否認しているということです。
関係者によると当時、二人は一緒に遊んでいたVRゲームの中での口論の結果、事件に繋がったとみられるという事です。
警察は二人の間にトラブルがあったとみて、詳しい事件の状況などを調べています。
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