4 いざステータス! ☆
本日二回目の更新です!
マーサは三日間、ゲームの中ではひたすらピッケルを振り続けた。
最初はメリアの指示に従っていただけだったが、段々と楽しくなってきた。
今までピッケルを振って鉱石の採掘などしたことがなかった為、とても新鮮に感じたのだ。
また、一度やり始めたら熱中するマーサの性格も一つの要因だった。
「ただ叩くよりも、このくらいの角度で刃先を入れた方が手ごたえがいい気がする……?」
ガッ。コンッ、コロコロ。
「……うんうん、やっぱり違うね! 当たる場所によっても微妙に違う気がするかな? もっと色々試してみなきゃ!」
こうしてマーサはスキルの性能も十分に発揮して、楽しんで採掘生活を送った。
三日という時が過ぎるのはあっという間だった。
正午丁度から一般プレイヤー達がログイン可能となる今日こそが、正式な意味でのサービス開始日となる。
正午の五分前、一番最初の拠点となるスターレの街からほど近い山岳エリアの崖にマーサはいた。
飽きもせず、ひたすらにピッケルを振るっていたのだ。
ピピピピピ。
事前にセットしていたアラームが鳴ってようやく、マーサはその手を止めた。
「あ、もうこんな時間。熱中してたら三日間なんてあっという間だったなー。んんー……ぷはぁ!」
ピッケルをストレージに放り込み、ぐぐっと背中を伸ばした。
筋肉が伸びる心地よさが溜まったところで大きく息を吐いた。
ゲームの中とは思えない心地よさに、マーサはすっかりご満悦だ。
「メリアちゃんとの待ち合わせは十九時だから、しばらく寝よーっと」
▽
マーサは目を覚ますと、簡単な食事を済ませてすぐにログインした。
徹夜明けの疲れなど感じない程に、≪CPO≫の世界にのめり込んでいる。
視界が切り替わると、薄暗くなった街並みが広がっていた。
溢れかえるプレイヤー達。
話題の最新ゲームは伊達ではない。
超クオリティーのVR世界を楽しもうと、沢山の人が押し寄せていた。
「うわぁ、すっごい人! 邪魔にならないように避けておかないと」
人混みを避けるように、待ち合わせ場所へと向かう。
以前と同じ西の門。
その途中、男女の話声がマーサの耳に入った。
「ステータスってどう振ったらいいんだ?」
「は? キャラメイクん時に説明されてたろ?」
「されてたが、よく分からんかった」
「マジかお前。ステータスとスキルはこのゲームの肝だぞ。適当に振ったりしたらゴミ扱いされて一生ソロだぞお前」
「うっへ、マジかよ。まだ振ってないから説明してくれよ」
「はぁ、しょうがないな、よく聞いてろよ」
気心の知れた二人の男の会話のようだった。
その内容に、マーサは興味を持った。
(ステータスとスキルって、そういえば私もちゃんと知らない気がする。全部メリアちゃんに任せちゃってたし……。やっぱりそういうのって良くないよね!)
マーサは、ゲームに疎い。
≪CPO≫の基本操作すら、採掘に必要な部分だけしか教わっていない。
それらは正式サービスが開始してから説明すると、メリアがそう約束してくれたからだ。
(まだ待ち合わせまで三十分もあるし、自分でも少しは調べておかなきゃ!)
マーサは二人の男に駆け寄り、元気な笑顔を向けた。
「すみません!」
「うぉ……!?」
「なんだ……!?」
「私もステータスとスキルに関してよく知らないんですけど、教えてもらってもいいですか!?」
「お、おう? いいんじゃねーか? なぁ、俺のついでに教えてあげても」
「おう、勿論いいぜ。むしろこいつなんて放っといて丁寧に教えてあげちゃうぜ」
「おい」
「嘘嘘、冗談だって。そんな怖い顔すんじゃねーよ」
「ゲームだからって女の子に変な事したら通報するぞ」
「そっちかよしねーよ! いやマジでしないからほんと止めてください!」
「まあ、説明してくれるらしいよ」
「そんじゃま、いっちょ説明すっかね」
「あはは、ありがとうございます!」
▽
「まだ時間もあるし、一度ステータスをしっかり確認しておこっと」
マーサは親切な男性プレイヤーの説明を聞き、ステータスとスキルについて知識を得た。
あくまでも基礎的な知識ではあった為、おさらいを兼ねて自分のステータスを確認することに決めた。
「ステータス!」
ヴィン、という音と共に半透明の青いウインドウが現れた。
≪マーサ≫
クラス:プリンセス
Lv:1
HP:20/20
MP:10/10
Str:0
Vit:0
Agi:0
Dex:0
Int:0
Luc:100+10
【装備】
頭:
肩:
上半身:初心者の革鎧
下半身:初心者のハーフパンツ
右手:初心者用短杖
左手:初心者用小盾
足:初心者ブーツ
装飾品:
装飾品:
【クラススキル】
魅了
幸運の星
【一般スキル】
ドロップ率向上(中)
レアリティ向上(中)
採掘術(中)
運搬(小)
【称号】
なし
「ええっと、Strは力、Vitは体力、Agiは素早さ、Dexは器用さ、Intは魔法力、Lucは幸運、だったよね」
教えてもらった内容を呟きながら文字を目で追っていく。
自分のステータスを始めてじっくりと見たマーサはとあることに気が付いた。
「幸運にしか振ってない……?」
幸運以外の数値は見事にゼロだった。
「でもメリアちゃんが私の為に考えてくれたんだから、これが一番あってたんだよね。それでええっと、スキルは≪クラススキル≫と≪一般スキル≫に分かれてて、≪クラススキル≫はクラス特有のスキルで、レベルを上げていくと習得出来るんだよねー」
マーサが習得している≪クラススキル≫は、≪魅了≫と≪幸運の星≫の二つ。
「これって、メリアちゃんがくれたデータには載ってないけど、なんだろう……多分読んでも分からないから後でメリアちゃんに聞こうっと」
βテスターがβテスト時にランダムで選択されていたクラスを選択すると、ボーナスが得られる仕様であった。
それはステータスポイントやスキルとして反映される。
マーサの場合は、≪魅了≫という一つのスキルを得た。
効果は、一番最初に五秒間目を合わせたNPCを魅了し、支配下に置くというもの。
βテスト時は街のNPCを魅了して遊ぶくらいしか使い道の無かった外れスキルである。
「≪一般スキル≫は行動で習得出来るスキル。最初は低い効果でも使っていくと成長する。だからメリアちゃんにもらったデータだと≪採掘術≫は極小なのに、中なんだね。あはは、おもしろーい!」
キャラメイク時に≪一般スキル≫を三つ習得出来る。
メリアは≪ドロップ率向上(極小)≫、≪レアリティ向上(極小)≫、≪採掘術(極小)≫を習得させたのだ。
そしてマーサの的確な反復により、スキルが成長した。
「よし、しっかり確認したし、メリアちゃんまだかなー」
ステータス画面を閉じたマーサは、ご機嫌な様子でメリアの到着を待った。
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