38 いざ鉱山!
モンスターの名称を変更しました
マザーオブプリズム→プリズムイーター
マーサの提示した条件に、女性店主は即座に頷いた。
職人にとって作品を作ることは生きることと同義。
その人生を救ってくれる代価としては安いものであると判断したのだ。
「分かりました。材料さえなんとかしてもらえたら私の全身全霊を持って作ります!」
「ありがとうございます」
「それにしても旦那様って、その歳で結婚してるんですか?」
「えっと、実はそうなんです」
「いいですねー。お相手がいて羨ましいです」
旦那様とは魔神王アルディのことだ。
褐色ロリの称号から分かる通り性別は女であるが、王と呼ばれていたりするのでマーサの中では旦那様
なのである。
それからしばらく、店主と女子トークを済ませたマーサは店を出た。
向かう先は冒険者ギルド。
アニメやラノベでも定番のあれである。
このゲームの世界にも存在しており、クエストや各種サービスを受けることが出来る。
冒険者ギルドへと到着したマーサは、早速とばかりに立派なドアを開けた。
そして中へ入る。
酒場の併設された冒険者ギルドは、閑散としていた。
(……あれ? 冒険者ギルドってもっとこう、騒がしい場所じゃないの?)
いくつかある受付の内、職員がいるのは二人だけ。
大量の紙が貼られた大きな掲示板。
冒険者らしきNPCが飲んだくれている酒場。
困惑しながらもマーサは受付へと向かう。
優しそうな若い女性NPCがカウンターの向こうで暗い顔をしていたが、マーサに気付いて姿勢を正した。
「すみません」
「冒険者ギルドへようこそ。ご用件をお伺いします」
「アクセサリーショップの店長さんに鉱山にモンスターが出るって聞いて、なんとかしたくて来たんですけど、依頼ってここで受けるんですよね?」
「はい、そうなりますが……見たところ駆け出しのようですが、大丈夫ですか?」
「えっと、多分?」
「詳しい事情は聞いていますか?」
「モンスターが出るようになった、としか」
「分かりました。それではご説明いたします」
鉱山に出るようになったのは、≪プリザーブドプリズム≫という名前のモンスター。
外見は五十センチ程の歪な卵型。表面は凸凹で薄ら光るという不思議な見た目。
光を反射するもの全般を好んで食べる。
食べ物を見つける為に暗い場所を好む。
性格は凶暴で、人を見つけたらすぐに襲い掛かり排除しようとする。
主な攻撃手段は体当たりと光属性の魔法。
このモンスターの特に危険な要素はその数。
どうやって増えているかは不明だが、鉱山の中に沢山湧いてしまっており、生半可な強さでは一匹倒す前に次がやってきて押し潰される。
というような説明をマーサは受けた。
「今はどういう状況なんですか?」
「分かりました。そちらもご説明します」
現在、スターレが襲撃を受けた影響で世界中の転送装置が使えなくなっている。
だから冒険者も、偶然街に滞在していた者達しかいない。
その為戦力は少なく、兵士と冒険者を動員しても一つの鉱山でなんとか採掘出来ている状態である。
なんとか採掘された僅かな鉱石も街や大きな工房に抑えられ、数が街全体で不足してしまった。
という事情も続けて聞いた。
ここまで聞いても、断念するという選択肢はマーサには無い。
むしろなんとかしたいという思いが強くなった。
「私に任せてください!」
「分かりました。クエストの受注を受け付けます。でも、危険を感じたらすぐに戻ってきてくださいね」
「はい、ありがとうございます!」
こうしてマーサは初めてとなるクエストを受けた。
内容はとても単純。プリザーブドプリズム30体の討伐だ。
内容はともあれ、クエストを受けたことでマーサは周辺の鉱山に立ち入ることが可能となった。
現在は兵士によって封鎖されていてクエストを受けた冒険者以外は入れないようになっていたのだ。
マーサは気合い充分、ミヤと共に鉱山へと向かった。
正規のルートでは周辺の鉱山を周る内に情報を集め、鉱山地帯の中でも特に大きいアイン大鉱山へと入る為のクエストを発生させる。
そしてダンジョンと化したアイン大鉱山の最深部でプリザーブドプリズム大量発生の原因となった≪プリズムイーター≫との戦いが始まる。
のだが。
(とりあえず私達が出てきたところに行ってみよっかな)
マーサが向かったのは、転送装置のあった場所。
その洞窟こそが、アイン大鉱山への入り口であった。
討伐クエストを受けたとはいえ、大鉱山へ入る為のクエストはクリアしていない。
その状態では入口を守るNPCに追い返されるだけで中へ入る事は出来ない。
「おやマーサ様。いきなりどうしたのですか?」
「討伐クエストを受けて来たからプリザーブドプリズム? っていうモンスターを倒しに来たんだ。この中いっぱいいる?」
「ええ、それはもう掃いて捨てる程いますよ」
「それじゃあ討伐して来ても良い?」
「ええ、どうぞ。この者の記憶はこちらで都合の良いように改ざんしておきますので思う存分狩って来て下さい」
「……へ、ひへ」
「ありがとう! 行こう、ミヤ!」
「メェ!」
マーサはミヤと共に大鉱山へと突入した。
偶然とコネが生んだ奇跡のショートカットであった。
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