34 いざ急展開!
今回は区切りを良くする為少し短めです
マーサが魔神王城を飛び出してから、二日が経った。
「未だに連絡が来ない……やはりマーサは吾輩に愛想を尽かしてしまったに違いない……」
アルディは書類の積まれたテーブルに突っ伏していた。
仕事が全く手についていない為、どんどん貯まっていく。
そんな主をメルドは呆れたような目で見ている。
「アルディ様、気持ちは分かりますが仕事をしてください」
「うぅぅうぅ……! マーサぁ……」
「完全に妻に逃げられたダメな夫になってますよアルディ様」
「うぐ……どう考えても反論の余地もない、妻に逃げられたダメな夫なのである」
「はぁ、これは重症ですね」
メルドはため息をついた。
マーサが飛び出した後、アルディは様子を見ることにした。
しばらくすれば連絡をくれる。そうすればすぐに呼び戻せると。
しかし、待てど暮らせどマーサからの連絡はない。
自分から連絡を取ろうかとも考えたがその時点で既に一日経っており、今更遅い等と言われることを恐れて余計に連絡出来なくなっていた。
「いい加減アルディ様から連絡してみたらどうですか? 多分もう機嫌を直してアルディ様からの念話を待っているんじゃないでしょうか?」
「うぐぐぐぐ……そうであろうか」
「きっとそうですよ」
「……やはりまだ心の準備が」
「では準備が出来るまで仕事をしてください」
「ううううう……マーサは≪鉄の街≫なぞにどうやって、何をしに行ったのだ……。今何をしているのであるか、マーサ……」
アルディは嘆いた。
圧を増していく目の前の仕事に。
愛する妻を迎えに行けない自分自身の弱さを。
▽
鉄の街アインボックス。
中央大陸の東部にその街はあった。
いくつもの鉱山に囲まれており、金属を採掘する為に作られた街だ。
街は金属製品で溢れ、他の場所には無い武器も沢山作られている。
ファンタジーな世界観のこの世界において、少し独特な場所である。
そこから専用の鉄道で五分程の距離にある鉱山。
マーサはそこにいた。
「――えいっ!」
ピッケルが壁に突き刺さると、いくつもの鉱石が地面に転がった。
マーサは拾うこともなく、再度ピッケルを振るう。
何度か繰り返した後、ピッケルを下ろして息を吐いた。
「――ふぅ。うん、今日もいい感じ!」
紫色をした丈夫なツナギに身を包み、マーサは楽しそうな笑みを浮かべた。
軍手にオレンジ色のヘルメット、つま先に鉄板の入ったブーツ。
そして首には汗と土で汚れたタオル。
完璧な鉱夫であった。
「ミヤちゃん、こっち来て」
「メェ」
「これ持っててね」
「メェ」
「モジャも手伝うモジャ」
足元に転がる鉱石を拾おうとすると、モジャが現れて鉱石を一つ持って浮かび上がった。
そのまま、ミヤの背中に括りつけられた鞄へ入れた。
「ありがとうモジャさん」
「どういたしましてモジャ!」
お礼を言うと嬉しそうに揺れながら、更に石を拾うのを手伝ってくれた。
すぐに全ての鉱石を回収した。
モジャは満足そうにミヤの毛皮の中へ帰って行った。
「ミヤちゃん、もうちょっと奥へ行ってみよう!」
「メェ!」
ミヤはいつものんびりとした顔をしているが、力は強い。
そして山羊の特徴として、悪路に強い特性も備えていた。
マーサは鉱石を掘ってはミヤの背中の鞄に積み込み、次のポイントへ向かった。
ピッケルを振る様子は楽しそうで、落ち込んでいる様子は全く見えなかった。
マーサが何故鉱山でピッケルを振るっているのか。
そのきっかけは、二日前に遡る。
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