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32 いざ暴走!

本日二回目の更新です!


 魔神王城の食堂は二つある。

 一つは使用人達が使用する賑やかな場所。

 もう一つは魔神王と幹部である暗黒四魔神のみが使用する事を許された、専用の場所である。

 魔神姫でもあるマーサも、主にこちらで食事を摂っていた。


 今日の昼食は仕事の合間を縫ってくれたアルディと一緒だ。

 立派なテーブルに対面で座り、二人とも笑顔で食事を口に運んでいる。


「マーサ、今日は何かしたいことがあるのか?」


「うん。私、乗馬がしてみたいの」


「ほう、乗馬か。ペガもすっかり立派になったからな」


「うん!」


 アルディが目線をやった先にはマーサのペット達がいた。

 体高二メートルを超える黒に近い紫の馬。

 全長二メートル程の大きな(わし)

 体高一メートル程のモコモコした深紫の山羊。

 先日の夜通しの狩りの成果である。

 

「吾輩も一緒に行きたいが――」


「ダメです」


「――悲しい現実である。メルド、頼めるか?」


「はい。任せてください」


「うむ、頼んだぞ。食事が済んだらすぐに行くか?」


「うん、せっかくだしそうするね」


(ペガの背中に乗るの楽しみだなー!)


 マーサはペガの背中に乗るのを楽しみにしていた。

 背中に乗る為に馬という種族をペットに選んだと言っても間違いではないのだ。

 本当はペガサスに進化してからの予定だったが、先日の狩りでは僅かにレベルが最大まで達しなかった。

 

 乙女であるマーサは≪食いしん坊≫という称号を得たことに若干のダメージを受けていた為、今日は狩りをする気にならなかった。

 だから空は飛べないまでも、立派に成長したペガの背中に乗りたくなったのであった。


「しかし、吾輩も一緒に行きたかったのである」


「私も一緒に行きたかったけど、お仕事なら仕方ないよ」


「うぅ、分かる。分かっている。それでも一緒に行きたかったのである……!」


「アルディちゃんは魔神王なんだからそれくらい我慢しないと」


「むぅ、ちょっとくらい我儘を言うくらい良いではないか! マーサは吾輩のことどうでもいいのであるか!」


「そっ――そんなこと言ってないじゃん!」


「いや、そう思っているに違いない! だから仕事しろなんて言えるのである!」


「あ、アルディちゃんだって! お仕事だからって私のことメルドさん達に任せてばっかり! 本当は私の事なんてどうでもいいんだ!」


「な――そ、そんなことないのである! 吾輩だってマーサと遊びたいのを必死に堪えてだな――」


「もういいもん! アルディちゃんはちゃんと仕事してて!」


 マーサは食堂を駆け出していく。

 困ったように見つめていたペット達も後に続く。

 アルディも追いかけようとしたが、メルドが進路を遮るように立っていた。


「マーサ様の仰る通り、アルディ様はお仕事がありますので。ここは私に任せてください」


「ぬぅ……こんなメンタルでは仕事にならんぞ?」


「仕事してください」


「ぐぬぅ」


 アルディは困ったようにうめき声をあげた。

 恋愛などしたことのないアルディには、まだ上手く感情をコントロールすることが出来ないでいた。

 そしてそれは、マーサも同じ。

 故に、見てる側からは理解出来ない程の些細なきっかけで喧嘩になったのであった。





 場所は魔神王城の裏にある屋外訓練場。

 兵士達が日夜訓練をする場所であり、いくつかの施設が併設されている。

 向こうには広大な死の荒野が広がっている。

 魔神王城は正面に嘆きの森、裏手には死の荒野が広がっているのである。


「それではマーサ様、乗馬をしましょう」


「メルドさん……」


「良い気分転換にもなります。せっかくですからどうぞ」


「……うん、ありがとう」


 メルドから装備を受け取ったマーサはペガに装着していく。

 大人しくしてくれるペガのお陰で、乗馬用の装具は難なく装着できた。


「それでは乗ってみて下さい。ペガは立派な体格をしているので高いですが、ゆっくり乗れば大丈夫です」


「うん」


「左脚を(あぶみ)にかけて、右足で地面を蹴って脚を向こう側へ回してください。その時にしっかり左足に力を入れてくださいね。行きますよ」


「う、うん……!」


 メルドに補助をしてもらいながら地面を蹴る。

 マーサの身体はひらりと舞い上がる様に、ペガの背中に乗った。


「やった、ちゃんと乗れたよメルドさん、ペガ!」


「はい、お上手です」


「ヒヒン!」


 応えるようにペガも鳴いた。

 ミヤとグリも傍らで喜んでいる。


「ではどんどん行きましょう」


「うん!」


 まずは歩く練習と止まる練習から始まった。

 とはいえここはゲームの世界。

 そしてペガはマーサのペットである。

 具体的な指示を動作で出さなくとも声での指示に従う上に、考えるだけでもペガには指示が伝わっていた。


 一時間もしない内に、マーサは完璧に乗りこなすことが出来るようになった。

 今では訓練場内をそれなりの速度で走っていた。


 メルドは柵の外側で見守り、グリはミヤの毛を文字通り鷲掴みにしてペガに合わせて上空を旋回していた。

 その()はさながら捕食者と獲物である。


「すごい、すごいよペガ!」


「ヒヒン!」


「そろそろ戻ろうかな。ペガ、ゆっくりスピード落として」


「ヒヒン!」


 それなりに楽しんだマーサはペガに指示を出した。

 段々とスピードが落ちていく。

 徒歩に近い速度にまでなった時、ふと先程の暗い気持ちが再び顔を出してきた。


「……はぁ。アルディちゃんに酷い事言っちゃった。まだ怒ってるかな……怒ってるよね」


「ヒヒン?」


「どうしようペガ……このままどこかに走り去りたい気分だよ」


「……ヒヒン!」


「えっ、あっ!?」


「マーサ様!?」


 マーサの気持ちを汲み取ったペガは突然最高速度まで加速して走り出した。

 向かう方向は死の荒野。

 木で出来た柵をあっさりと破壊して、マーサを乗せたペガは飛び出していった。


「なんて速さ……! 今から馬を用意して――間に合わない! 至急アルディ様に報告をしなくては!」



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