27 いざ宣戦布告!
プレイヤー達のスタート地点であるスターレの街。
中央大陸にあるその街は、始まりの首都と呼ばれるそれなりの規模の街である。
沢山の人で賑わっていたそこは復活した魔神王の尖兵により、大きな被害を受けた。
そこからが、ゲームの本当の始まりだった。
まずは復興キャンペーンが開催。
困っている街の住人達からのクエストが大量に発生した。
プレイヤー達がそれを達成するごとに、復興ポイントが溜まる。
復興ポイントが一定のラインへ到達すると特別なイベントや、施設や機能を解放する為のクエストが発生する。
これにより、プレイヤー達は自由度を上げる為に日夜復興に励むことになった。
特に大きいのが、転送装置の存在だった。
このゲームのワールドマップはかなり広い。
現実と同じような縮尺で言うとユーラシア大陸程の広さがある。
これを普通に移動するのはゲームの世界と言えど苦労が勝る。
このゲーム内時間は加速等のされていない等速である為尚更だ。
それを解決するのが、転送装置。
各街に張り巡らされた魔力ネットワークを使用して、瞬時に移動する設備である。
ある程度大きな街にはこれが存在しているからこそ、広大なマップであろうと気軽に冒険することが出来るのだ。
しかしそれも、壊れていなければの話である。
だからプレイヤー達は必死に復興活動に勤しんでいる。
「ふー、今日も滅茶苦茶貢献したぜ」
「おうお疲れ。どのくらいクエスト達成したんだ?」
「とりあえず五つだな」
「それはすげぇな! 納品系か?」
「そうだな。最近はとにかく鉱石を運びまくってるぜ」
「討伐系は段々減って来たし、俺もそっちにシフトするかな。転送装置の解放に備えて新しい装備も欲しいが、タイミングが難しいな」
「この街の生産設備は汎用的な物らしいからな。他の街で作る方が色々機能が増えるらしいぞ」
「そこなんだよ。でも今の装備じゃ既に物足りなくなってきてるのがなぁ……まぁしばらく我慢するか」
「それなら一緒にクエスト受けるか? 儲けが良さそうなクエストがあったんだが人数が必要らしくてな。復興ポイントも多めなんだがどうだ?」
「よっしゃ、いっちょやるか!」
街のそこかしこで、プレイヤー達は楽しそうに活動している。
ただ漫然とするよりも目標と目的が明確な方が楽しめるだろうという運営の判断だったが、好意的に受け入れられていた。
午後八時になった。
空を暗雲が多い、巨大な画面が空中に映し出される。
『愚かな人間どもよ! 吾輩は魔神王アルディエル・ゴールドライト!』
「アルディエルちゃんだー! キター!」
「これが次のイベント予告か。どんな感じになるんだ?」
「褐色ロリキター!」
「あれ、なんかもう一人いるぞ!」
「なんだあの美少女は!?」
「おいあれって」
「あの子この街で見たことあるわ!」
高らかに名乗ったのは魔神王アルディエル。
その傍らにはもう一人の少女の姿があった。
『そしてこっちは吾輩の伴侶、≪魔神姫≫マーサである! 先日婚礼の儀を挙げた! 祝福するが良い!』
『ちょっ、アルディちゃん!? 今それ言うの!?』
『まぁまぁ、良いではないか。ゴミ共とはいえ滅ぶ前に吾輩達を祝う権利くらいはくれてやろうではないか』
『そ、そういう意味じゃなくって……!』
アルディは高らかに宣言した。
それに慌てたのはマーサである。
まさかそんなことをプレイヤー達に言うとは思っていなかった為、顔を真っ赤にして恥ずかしがる。
「アルディエルちゃんが結婚……!?」
「褐色ロリと美少女の結婚、アリだな」
「アリアリアリアリアリアリアリアリ!!アリーヴェデルチ!」
「うわ! あまりの尊さに倒れたぞ! おい、こんなとこでさよならすんな!」
「魔神王の奥さんって本当だったんだな……」
「オメデトー!」
「なにあれ尊い」
「おお、桃源郷はあそこにあったのか」
「アルディちゃんだってよ! アルディちゃんだってよ!」
「おめでとおおおおおおおおおおおお!! 幸せになってねええええええええええええ!! ああああああああああああああああああ!!!」
プレイヤー達はそのやりとりに大興奮。
一部のプレイヤー達はテンションが上がり過ぎて倒れ、一部のプレイヤーは浄化されたように大人しくなる。
たった十数秒のやりとりだというのに凄まじい威力である。
『せっかくの機会だ、バシッと決めてやるのである!』
『ええ!? 私が!?』
『これも≪魔神姫≫としての公務である、頑張れ!』
『うぅ、人前苦手なんだけど……!』
アルディが下がり、マーサが前へ出る。
緊張した様子のマーサをプレイヤー達はジッと見つめる。
シンと静まり返るスターレの街。
極限の集中力である。
NPC達はこの異様な光景に脅えていた。
『わ、私は魔神姫マーサ! 愚かな人間共を滅ぼすので、か、覚悟してくだしゃっ――さい!!!』
(噛んじゃった……!)
(噛んだのである)
最後に噛んでしまったのを気合いで誤魔化そうとしたが、バレバレだった。
しかし、プレイヤー達には大いに受けた。
「「「うおおおおおお!!」」」
「可愛い!」
「滅ぼされたい!」
「噛んだのも可愛い!」
「頑張った! 偉い!」
「とっ、とうと、尊い!!」
プレイヤー達が大興奮する中、画面の中では再びアルディが前に出る。
マーサは真っ赤になった顔を両手で押さえ、俯き加減で後ろに下がった。
耳まで真っ赤で大変可愛らしい。
『そういうことだ。一か月後、吾輩達は進軍を開始する! だが安心するが良い、まずは小手調べだ。しかし、その小手調べで滅んでしまっては興ざめである。せいぜい備えておくことだな!』
『わーっはっはっはっはっは!』
アルディの高笑いを最後に、画面は消え去った。
空も元通りだ。
しかし、プレイヤー達の興奮は冷めやらない。
口々に今の映像について語り合うのであった。
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