21 いざレベル上げ再び!
本日二回目の更新です!
無事に転職を済ませたマーサは執務室へとやって来た。
アルディへ転職を報告する為だ。
その腕には三匹のペットを抱えている。皆すやすやと熟睡中だ。
扉を開けてくれたメルドへ小さくお礼を言い、中へ足を踏み入れた。
机に向かっていたアルディが笑顔でマーサを出迎える。
山のように積まれた書類に囲まれて死んだような顔をしていた先程までとは、全く違う表情だ。
「アルディちゃん、転職出来たよ!」
「おお、無事終わったか。吾輩が建てた神殿でも祝福を受けることが出来たのだな」
「うん大丈夫だったよ。そういえばあの神殿ってどんな神様を祀ってるの?」
「勿論吾輩である」
「えっ、アルディちゃんなの?」
「うむ。何せ神々の連中とは完全に敵対しているからな」
「なるほどー」
「それに吾輩、魔の神の更に王であるし。だから神殿で祀る存在など吾輩しかおらんのである! 吾輩を崇めよ!」
「アルディちゃんすごーい!」
「わっはっは! もっと褒めて!」
「アルディちゃん最高! 可愛い! 大好き!」
(それじゃああの神様の像はやっぱりアルディちゃんだったんだ)
自らが祈りを捧げた存在がアルディだったと知り、マーサは少し嬉しくなった。
≪魔神姫≫という称号もクラスも、アルディからの贈り物ということになるのだから。
「あ、あまりストレートに褒められると照れるのである……!」
「照れてるアルディちゃんも可愛い……!」
「も、もういいぞマーサ!」
照れるアルディに可愛がるマーサ。
そんな二人を黙って見つめるメルドもまた、内心では可愛さに悶えていた。
「うぇっほん! ……それで、今日はこれからどうするのだ?」
「んーっと、レベル上げしたいんだけど、この辺で丁度いいところってある?」
マーサのレベル上限は転職によって50から100へ大幅にアップした。
それに、召喚したばかりのペット達のレベルは1。
成長の為にレベル上げに行きたいと思うのは自然なことであった。
「そうか。メルド、任せたのである!」
「分かりました。マーサ様、こちらへ」
「え、あ、うん」
「メルチ、ゴッスルとミッシュに連絡を。狩りの時間です」
「分かった」
どこからともなく現れたメルチは、指示を聞いてまたどこかへと消えた。
メルチは魔神王城のどこにでもいるのだ。
▽
マーサは≪嘆きの森≫へやって来た。
嘆きの森は高難度ダンジョン。
正式サービスから数日しか経っていない現状で足を踏み入れたプレイヤーはマーサ以外には存在しない。
魔界自体、シナリオの進行上まだ入ることの出来ないエリアである。
そんな森の中に場違いとも言える物が設置されていた。
暗黒アカシアで作られたウッドチェア。そしてテーブル。
木のぬくもりにすっぽりと身体を包み込まれるような体勢で、マーサは椅子に収まっていた。
(レベル上げに来た筈なのに、なんだろうこの状況……)
膝の上には小さなペット達がすやすやと寝息を立てている。
「メルド様、拠点設営完了致しました!」
「メルド様、総員配置につきました!」
「ご苦労様です。それでは作戦を開始します」
「「はっ!」」
「あの、メルドさん?」
「マーサ様、御飲み物はどうなさいますか? 暗黒レモネードと暗黒アイスティーをご用意しておりますが」
「……暗黒レモネードで」
「かしこまりました」
(ま、いっか)
マーサは考えるのをやめた。
椅子の左右にはメルドとゴッスル。背後に回復魔法をかけ続けるメルチ。
そして周囲を五十人程の精鋭達が固める。
その他の精鋭達は三人一組で森に散っており、適宜モンスターを釣り出してくる。
一体ずつ連れてこられたモンスターは待ち構えているミッシュの手によって屠られる。
くつろいでいるだけでわんこそばの如く運ばれてくる経験値。
二体程倒されたところでペット達の身体が大きくなってきたので、地面に下ろされていた。
すっかり目が覚めたらしく、興味深げに周囲を眺めている。
テーブルに置かれた器には野菜スティックが盛られていた。
マーサはそこから一本摘まむと、立派な山羊に成長したミヤへ差し出した。
「はい、ミヤ!」
「メェ!」
ボリボリボリ。
「はい、ペガにもどうぞ!」
「ヒヒン!」
ボリボリゴリゴリ。
倒されたモンスターは既に二十を越えている。
ミヤと同じく、ペガも現実の大人の馬と遜色ない大きさに成長していた。
「マーサ様、グリ用の生肉でございます。こちらはこの森でも採れるエンペラースネークのもので、強い滋養強壮の効果を持っています」
「ありがとメルドさん! おいでグリ!」
「ピィ!」
マーサの呼び掛けに、ミヤの上にいたグリが肩へ止まった。
フォークで差し出された生肉を美味しそうに啄む。
グリも立派な鷹へ成長していた。
「よしよし、良い子だね」
グリの頭を撫でると、気持ちよさそうに目を細めた。
そこへペガが鼻先をマーサの顔に擦り付ける。
ミヤも負けじと、肘置きに置いてあるマーサの左手を舐め始めた。
おかわりの要求だ。
「あ、あはは、ミヤもペガも今おかわりあげるからちょっと待って」
モンスターの悲鳴とダメージエフェクトが飛び散る中、マーサ達は完全にリゾート気分であった。
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