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20 いざ転職!


 マーサはアルディとの食事を大いに楽しんだ。

 その後はすぐにログアウトし、そのまま眠りについた。


 翌日。

 早めに目を覚ました真朝は、すぐにログインした。

 今日はやりたいことがあったのだ。


「おはようマーサ。今日は早いのだな」


「おはようアルディちゃん! き、昨日はちょっと疲れてただけだからね! これくらいが普通だよ!」


「ふふ、そうであるか」


 ベッドに横たわるマーサの側にはアルディがいた。

 優しく微笑む姿に、マーサは元気一杯の挨拶を交わす。

 朝の挨拶をしただけの僅かの時間。

 少しの触れ合いでも幸せな気持ちになる。

 そんな状況に二人の笑顔はいっそう輝く。


「ヒン!」


「ピ!」


「あ、ペガとグリもおはよう! ミヤはまだ寝てるね」


「マーサが起きたというのに呑気な奴だな。うりうり」


「メ……」


 アルディが仔山羊の額を指でつつく。

 まだ眠そうなミヤの口からは微かなうめき声が漏れる。


「そうだアルディちゃん、またお願いしたいことがあるんだけど……」


「うむ、言ってみるがいいぞ」


「神殿に行きたいんだけど、近くだとどこがあるかな? スターレだと遠いから、どこでもいいんだけど」


「神殿? どこぞの神に祈りでも捧げるのか?」


「神様にお祈りしたいっていう訳じゃないんだけど、転職をしたくって」


「ほう、それが噂に聞くクラスアップという奴か。冒険者はクラスという神共から授かった力を持っているのだったな」


 マーサが素直に説明すると、アルディは興味深そうに頷いた。

 NPCに対してゲームのワードを使っているが特に問題はない。

 ある程度であれば不備の無いよう自動的に変換されるのである。


「神殿であればどこでもいいのであるか?」


「うん、多分」


「どこでもいいのであれば、我が魔神王城にも神殿はあるぞ!」


「え、あるの?」


「うむ。城を作った際に力が入り過ぎてな、隣に立派なのを作ったのである! 早速案内してやろう!」


「ありがとうアルディちゃん!」


「では行くぞ者共! ミヤもいい加減起きるのである!」


「メェ……」


「アルディ様。今日は朝から今後の侵略に関しての申請の確認を処理する予定になっていますが?」


「げぇ、メルド!」


「あ、メルドさん。おはよう」


「ピ!」


「ヒン!」


「はい、おはようございますマーサ様。グリ、ペガもおはようございます」


 入口にはクール系男装の美女、執事兼秘書のメルドが立っていた。

 マーサの寝顔を見つめていたアルディがいつまで経っても仕事に来ない為、迎えに来たのである。


「すまぬマーサ、案内はメルドにしてもらってくれ」


「うん大丈夫だよ。お仕事がんばってね!」


「マーサああああ……」


「メルチ、アルディ様を引きずって行ってください」


「……アルディ様、仕事はちゃんとしないとダメ」


「ああああああああぁぁぁぁぁ……」


(アルディちゃんってこのお城で一番偉いんだよね? 皆仲が良いんだなぁ)


 どこからともなく現れたメルチが指示通りにアルディを引きずって行った。

 アルディは魔神王。この城の最高権力者である。

 その割に扱いが雑だが、日常的な光景だ。

 マーサも持ち前の懐の広さで特に疑問は持たなかった。

 

「ではマーサ様、行きましょう」


「あ、はい。皆はここで待っててね」


「ヒン!」


「ピ!」


「メ……」





 魔神王城横の通用口から徒歩一分。

 城に寄りそう様にそれは建てられていた。

 黒い大理石のような石材で組まれ、刺々しさのある見事な彫刻が随所に設置されている。


 メルドが重厚感のある木の扉を開けた。

 促されるままにマーサは中へ足を踏み入れる。

 メルドが続くと同時に壁にかけられた燭台に一斉に火が灯った。

 

「こちらが我が魔神王城に建設された神殿です」


「わぁ、これはすごい……荒れ果ててますね」


 礼拝堂のみのシンプルな内装。

 ステンドグラスはヒビだらけ。

 壁にかかった幕は破れ放題穴だらけ。

 礼拝客が座る為の席も今にも崩れ落ちそうなベンチが並んでいる。

 全てが埃塗れで、マーサが足元に視線を向けるとはっきりと足跡が残っていた。


「ええ、そう褒めていただけるとアルディ様も喜ぶと思います。この埃などは最高級魔界砂パウダーを模した物を生成して撒いたそうですよ」


(今のって褒め言葉になるんだ……)


「これもアルディちゃんの趣味なの?」


「はい。こちらは暗黒魔神式の建築技法を主に用いつつも、アルディ様なりのアレンジを加えて建築されていますね」


「なるほどー」


 アルディが丹精込めて建てた神殿。

 そう考えるとこの建物も愛おしく感じてきた。

 ベンチを撫でたり謎の邪神像を眺めてから、ふと本来の目的を思い出した。


「メルドさん、転職ってどうやるか知ってる?」


「はて、冒険者の行うクラスアップについては詳しくありませんね」


「ですよね」


(昨日ヘルプを読んだ時にそこまで詳細を読んでなかったのから、ついでに見とけば良かったなぁ)


 困った時のヘルプ頼み。

 今回も数分と経たずに目的のページを発見した。


『転職の方法。レベルを上限まで上げた後、神殿に祀ってある神像へ祈りを捧げることで可能性が表示される』


(ふむふむ、なるほど)


 マーサは書いてある通りに祈りをささげるべく神像の前に立った。

 膝を付き、胸の前で両手を組む。

 神像を見上げていると、禍々しい邪神像が可愛く見えてきた。


(なんだかアルディちゃんみたい)


「アルディちゃん、お願い。転職させて……!」


 ポン。


 ついアルディに祈りを捧げたが、祈りは無事に伝わったらしい。

 半透明の画面がマーサの前に現れた。

 そこにはいくつかの選択肢が表示されている。


『クイーン』

『ダークプリンセス』 

『魔神姫』


 マーサは即座に魔神姫を選択した。

 即断即決。

 一切の迷いは存在しなかった。



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