19 いざペット召喚!
本日六回目の投稿です!
部屋の外はもうすっかり夜になっていた。
マーサはググッと伸びをする。
ステータス画面を四時間も見続けた疲れが解れていく。
「アルディちゃんはまだ忙しいのかなぁ」
今日はアルディと共に食事を摂る約束をしていた。
が、当のアルディは仕事を放置していた為にメルドに引き摺られていった。
そして三十分程前、本来であれば食事の時間に一度メルドが部屋を訪れた。
先に食事をとのことだったが、アルディを待ちたいと断っていた。
それから迎えはまだない。
「ただ待つのも勿体ないし、今の間にスキルを試しちゃおうっかな!」
マーサはスキル一覧を開く。
選んだスキルはペット召喚。
タップすると、召喚可能な動物の一覧が表示された。
「うわぁ、たくさん種類がある!」
犬、猫、兎等のメジャーなところからマイナーなところまで。
その数なんと百種類。
更に、各種族の中でも細かく細分化されているこだわりっぷりである。
一覧を見たマーサは目を輝かせる。
動物が大好きなのに家庭の事情で飼うことが出来なかったことが理由である。
「どの子にしようかな~」
ペット召喚のスキルはレベル1につき、一体のペットを登録することが出来る。
登録して以降は、その個体を召喚及び送還する時にも使用する。
「えーっと、猫もいいし、犬もいいけど……せっかくだからリアルじゃ触る機会の無い子がいいなぁ」
しばらく悩んだ後、マーサは三種類のペットを決めた。
「名前も決めたし、入力、完了!」
三体の種類と名前を決めたマーサは、一度に召喚することにした。
ポチッとな。
確定を押すと同時にどこからともなく光が溢れ出した。
「ヒン!」
「メ!」
「ピ!」
光が集まり、三つの形を成した。
それぞれが両手に乗るサイズの子馬、子山羊、鷹のヒナである。
通常では有り得ない小ささだがここはゲームの世界。
召喚したばかりのペットなのだから、どれだけ小さくともおかしくはないのだ。
「ちっちゃい! 可愛い! なにこれ、可愛い!」
「ヒン?」
マーサはよく見えるよう、三匹の前に膝を付いた。
小さな仔馬は首を傾げた。
黒い毛並に、額の一部分だけ白い箇所がある。
「よーしよし、君の名前はペガちゃんだよ!」
「ヒヒン!」
マーサが名前を呼びながら撫でると元気よく鳴いた。
ペットは成長するにつれて大きくなり、そして進化させることが出来る。
ペガというのは、いつか羽の生えたペガサスになることを祈って名付けられた。
「君はグリちゃんで、君はミヤちゃん!」
「ピ!」
「メ!」
鷹のヒナと子ヤギの頭も優しく撫でていく。
いつか立派なグリフォンに進化するよう祈ってグリ。いつか立派なカシミヤ山羊に進化するよう祈ってミヤと名付けられた。
「もう、皆可愛いー!」
「ヒン!」
「ピ!」
「メ!」
余りの可愛さに、マーサは三匹纏めて抱きしめた。
まだ小さいので怪我をさせないよう優しく、注意を払っている。
抱きしめられた三匹共嬉しそうに鳴いた。
ミヤに至っては目を細めて寝る態勢である。
マーサは三匹を抱きかかえたまま、ベッドに腰掛けた。
そのまま半透明のウインドウをつつく。
「簡略化されてるけど三匹にもちゃんとステータスあるんだね。頑張って育てなきゃ!」
≪ペガ≫
種族:仔馬
LV:1
HP:10
MP:8
スキル:なし
≪グリ≫
種族:鷹(雛)
LV:1
HP:8
MP:5
スキル:なし
≪ミヤ≫
種族:仔山羊
LV:1
HP:12
MP:5
スキル:なし
三匹の感触を確かめながらゴロゴロしていると、不意に部屋の扉が開いた。
やって来たのは部屋の主アルディであった。
「マーサ! 待たせてすまなかったのである!」
「アルディちゃん! 見て見て、可愛いでしょ!」
「ヒン!」
「ピ!」
「メ!」
マーサは身体を起こすと、歩み寄ってくるアルディを出迎えた。
そして腕に抱く三匹を自慢するように突き出す。
その笑顔はとても可愛らしく、アルディはそちらに目線が釘付けになっていた。
「? どうしたの?」
「ああいや、なんでもない。ほお、確かに可愛いが、こやつらはどうしたのだ?」
「私のペット! この子がペガちゃんで、この子はグリちゃん! それでこの子がミヤちゃんだよ!」
「そうか、よろしく頼むぞ三人共。マーサのことをしっかり守るのであるぞ」
「ヒヒン!!」
「ピピ!!」
「メェ!!」
アルディの声掛けに答えるように、三匹は力強く鳴いた。
「こやつら、中々見込みがある。流石はマーサのペットだ。これは将来が楽しみであるな」
「ほんと? アルディちゃんにそう言ってもらえると嬉しいなー!」
「しかしこやつら、一体何を食べるのだ?」
「なんだろう……お肉?」
「ピ!」
「肉を好むのはグリだけのようだな」
「後は……野菜とか?」
「ヒン!」
「メ!」
「こやつらは野菜か。よくあのようなものが食えるな」
「アルディちゃん、好き嫌いは駄目だよ?」
「ぬ、こやつらだって好き嫌いがあるではないか」
「この子達はそういう生き物だから仕方ないんじゃないかな?」
「ぐぬぬ、そういうものであるか。努力はするのである」
「アルディちゃんえらーい!」
「ふっはっはっは、吾輩は魔神王であるからな! や、野菜如き大した相手ではないわ! わーっはっはっはっはは――」
「そのお言葉、確かに聞きましたよ」
「――は?」
アルディがゆっくりと振り返る。
そこには、にこやかな笑みを浮かべるクール執事風男装美女の姿があった。
「メルドさん! この子達見て見て!」
「あら、可愛らしいですね。マーサ様のペットですか?」
「そうだよ!」
「あ、ああそうだメルドよ。こやつらに最高の肉と野菜を用意してやってくれ」
「かしこまりました」
「では頼んだぞ!」
素早く去ろうとしたアルディの肩には、既にメルドの手が置かれていた。
「それはそれとして、アルディ様にとって野菜は大した相手ではないのですよね?」
「あ、いやそれは」
「アルディちゃんはちゃんとお野菜も食べられるよ! ね、アルディちゃん!」
マーサの純粋な瞳がアルディを見つめる。
真っ直ぐな信頼を正面から浴びせられたアルディに、有耶無耶にすることなど出来なかった。
「わ、吾輩の食べっぷりを見ておくがいい! 野菜大盛りマシマシで持ってくるのである!」
「かしこまりました。それでは皆様、食堂の方へどうぞ」
「はーい。みんなも行こ! ほら、アルディちゃんも!」
「ヒン!」
「ピ!」
「メ!」
「う、うむ。……吾輩、生きて帰れるであろうか」
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