15 いざ決裂!
本日二回目の更新です!
外部の攻略サイトを読んでいるフリをしていたメリアは、仮想ウインドウを閉じる。
「いい方法があったよ」
「どうしたらいいの?」
「さっき言ったように取引画面を開いて、そこにその装備を入れるの。それでそのまま確定を押さずに待ってて。そうしたら渡さなくても見れるみたいだから」
「分かった」
メリアの指示に従い、マーサは装備を解除した。
そして取引申請を行いメリアがこれを受諾。
画面が開いたところで、ストレージから装備を移動。
メリアの最初の計画ではこのまま渡してもらう予定だったが、完全に渡すことをマーサが拒んだため、まずは性能の確認を優先させた。
「それじゃあちょっと確認させてね」
「うん、ゆっくり見ていいよ」
「ありがと」
メリアは適当にお礼を言いながら、装備の詳細を開いた。
そこには驚愕の数値が記載されている。
(は……!? なにこの数値。レア度と品質両方SSS!? 付与されてるスキルも最高クラスのものばかり。これも、こっちも!? 一式全部こんな感じなわけ!?)
メリアは愕然とした。
装備一式の余りの高性能っぷりに。
そして、それをマーサに贈った相手がいることに。
(魔神王って、このゲームのラスボスじゃん。どうやったらサービス開始二日目でそんなアイテム入手出来てしかもそれをマーサなんかに貢げるわけ!?)
この装備は魔神王から魔神姫であるマーサへ贈られたものであるが、メリアは答えに辿り着けなかった。
まさかゲーム初心者が魔神王を魅了するなどと誰も考えない。
「どう? それってすごいの?」
「そりゃ……まぁ、結構レアなんじゃない?」
「そっかー。あ、コーラお代わりしよーっと」
価値を分かっていないマーサに対して反射的に声を荒げそうになったが、ぐっと堪えた。
下手に価値を知られるのは面倒だと判断した為だ。
(危ない危ない。この子のアホみたいなペースに乗せられないようにしないと。焦っても損にしかならないし)
「ねぇマーサ、この装備私と交換しない? もっとあんたに似合う装備作ってあげるからさ」
「え?」
マーサは困惑した。
予想外の申し出だったからだ。
その隙にメリアは畳み掛ける。
「ね、いいでしょ? かっわいいの作ってあげるよ。武器とかもつけるから、ね? アドバイスとかもあげたんだしさ?」
固まるマーサに対して、メリアは成功を確信していた。
何せマーサはチョロい。
ちょっとのことでも恩を感じるし、人を信じて疑わない。
その性格で良いように利用され、学校でも孤立していることをメリアは知っている。
「ごめんねメリアちゃん、それは出来ないよ」
「え、なんで? もっといいの用意してあげるって」
「このアイテムは大事な人にもらったものだから、何と引き換えにするって言われてもあげられないんだ、ごめんね」
「は、はぁ!? 友達がいないあんたに優しくしてやったのに、なんなのその態度!」
「え、あの」
「いいから黙って寄越しなさいよ! 採掘しか出来ないあんたと組んでくれるプレイヤーなんて、私しかいないんだから!」
「……メリアちゃん、それってどういう意味?」
「この際だから言っとくわ。あんたのステータスとスキルは、採掘専用の構築。戦闘も含めて他のことは一切出来ないからレベル上げもしんどいし、今更軌道修正したって苦労するだけで出来上がるのは劣化バランス型。そんなゴミみたいなキャラと一緒に遊んでくれるのは、私だけって事」
「この構築はメリアちゃんがおススメだって……」
「おススメなのは間違いないよ。一番最初の、輝石を掘る期間だけの話だけど」
メリアの告白を聞いたマーサは酷くショックだった。
友人だと思っていた相手にはただ利用されただけ。
悪意に鈍いマーサでも、ここまではっきりと言われてしまえば実感するしかなかった。
「……ごめん、私もう帰るね」
「あ、ちょっと!」
取引画面を閉じ、アイテム一式を元通り装備する。
そしてマーサは個室を飛び出した。メリアも後を追う。
向かう先は西の門。
魔神王城に帰る為人目につかない場所を目指したかったが、マーサはこの街のどこにどんな場所があるかほとんど知らない。
だから馴染のある場所へ向かっていた。
「ちょっと!」
「っ」
そんなマーサの腕をメリアが掴む。
レアアイテムを逃がすまいと必死だ。
「そのアイテム私のでしょ! 返しなさいよ!」
「えっ……!?」
「返してよ! 泥棒!」
「え、え?」
メリアの台詞に、マーサは混乱してしまう。
マーサの装備一式は間違いなくマーサのものだ。
だからこそ、修羅場に慣れていないマーサは状況を把握するのに時間がかかり、戸惑いの声が洩れるばかりで何も言えない。
「おいおい、泥棒だってよ」
「うわ、すっげぇ可愛い装備だな。ありゃ相当なレアもんだぜ」
「あれを盗まれたのか、可哀そうに」
「ひどいやつだな、晒してやろうぜ」
メリアが喚き続ける間に、騒ぎを聞きつけたプレイヤー達が集まって来た。
事情は分からないからこそ、声の大きい方の意見がよく通る。
周囲のほとんどが、マーサが装備品をだまし取ったと認識していた。
「あ、や、これは私ので」
「早く返しなさいよ! 泥棒!」
かろうじて反論しようとするも、メリアの声にかき消される。
その言葉は誰の耳にも届かない。
「そうだそうだ!」
「可愛いからってなんでも許されると思うなよ!」
「スクショゲットー! 晒し上げてやるからな!」
「そんな、これは私の……」
「今ならその装備を返してくれるだけで許してあげるけど、どうするの?」
メリアは勝ち誇った顔でマーサに迫る。
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