10.魔王信仰
どんどん進めるんじゃよ
「――さて、これで終わりか」
足下に転がる襲撃者達を見渡しながらそう呟き、ざっと彼らの人数に当たりを付ける。
全部で五十人は居たか? ……よくもまぁ、これだけの人数を動員できたものだ。
俺が王子のパーティーに居た時は数人の魔族が闇討ちを狙ってくる事はあったが、これだけの人数の人間が襲って来た事はなかった。
ここに来て大きな組織が王子を狙って動き出したとでも言うつもりか? ……出来すぎている。
少なくとも俺の追放と連動した動きと見るべきだろう。
「……やはり、ウーゴが怪しいか」
奴を同じパーティーメンバーの人間として見るならば、唐突に俺を追い出そうとした理由が感情的なそれとしか理由が付けられない。
だが、奴が最初からリオン殿下を狙った組織の回し者として過程するならば俺の存在が邪魔だったから、という辻褄の合う理由が出来る。
しかしだ、ここまではミレーユ様に報告する前にとうに至っていた考えでしかないし、ウーゴの立場になって考えても何故あれほど性急とも言える追い出しに掛かったのかが謎だった。
「なるほどな……」
その謎が、今回の襲撃者達の衣服に刺繍された無貌の天使に掛けられた首輪という、忌むべき『魔王信仰』のシンボルによって氷塊する。
遥か昔に聖王国とその属国を建国した初代聖王と、それに従う初代王達によって滅ぼされ、その遺骸を封印された世界の破壊者たる魔王……それを信仰し、崇め、有り難るなど理解できんが、組織的な犯罪を行う危険な連中であるのは事実だ。
だがその魔王崇拝者であるならば、恐らくは魔族共と交流が――いや、魔族共に利用されていてもおかしくはない。
ウーゴは曲がりなりにもリオン殿下の身内からの紹介と聞いてた……だからこそ、宮廷内の陰謀の一環として護衛の俺を排し、その上で宮廷内との関わりを排除する為に外でリオン殿下を始末するのだと思っていた。
「アイツも魔族絡みだったとはな」
ウーゴがあれだけ焦って俺を追い出しに掛かったのも、自分達が崇拝する魔王の眷属たる魔族を俺が幾人も屠った事に起因するのだろう。
まぁ、要は自分達よりも遥かに目上の奴らに責任を追求されて進退窮まったからこその強引な追い出しと見るべきか。
まぁ、全ては単なる憶測でしかないし、本当にウーゴが俺の事が嫌いだからという理由だけで追い出した可能性もまだゼロになった訳ではない……か、今はそんな事を考えるよりも――
「――オラァ! さっさと目的を吐けやオォン?!」
完全にストリートチルドレンの頭を張っていた時の名残りというか、地が出ているアリサを止めに入るべきだろう。
恐怖の撲殺乙女と呼ばれていたアリサの凄みは伊達ではなく、傍で見ているアビゲイルが完全に怯えて涙目になりながら震えている。
凄まれている方の魔王崇拝者もあまりの圧力に失神しかけていて、これでは情報を引き出すのも難しいだろう。
「――アリサ」
「――ひゃっ!」
背後からアリサの肩を叩いて声を掛けると想定外の悲鳴を出されてしまい、思わず手を引っ込める。
「……すまん」
「……なんだよ」
「いや、なんだ……俺が代わろう」
彼女の耳が真っ赤になっている事には触れないでおこう……それよりも情報を引き出す事が優先だ。
「さて、洗いざらい吐いて貰おう」
「ははっ、ハハハハ……ハッーハッハッハッ! 誰が貴様らの様な奴隷に――ガァァァアッッ!!!!」
反抗的な男の首を右手で掴み、死なない程度の電流を流し込む。
白目を剥き、痙攣しながら白い煙を吐き出す男に今度は軽めの電気ショックを当て、無理やり意識を覚醒させる。
「――ぷはぁっ?! ……はぁ、はぁ……?」
「吐く気になったか?」
「な、なん……? なにを――ガァアアッ!!」
「さっさと吐け」
「ひっ! ま、待て――ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!」
男が素直になるまで何度も何度も、死なない程度に電流を流し込み続ける……傍でアリサとアビゲイルがドン引きしている気がするが、これが一番早いのだから仕方がない。
これをすると対象者が失禁などをしてしまうが、多少の見栄えの悪さには目を瞑って貰おう。
経験上これが一番確実で、効率が良いのだから――
アレン「(口下手で尋問とか出来ないから)経験上これが一番効率が良い」




