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追放貴族は最強スキル《聖王》で辺境から成り上がる~背教者に認定された俺だけどチートスキルでモフモフも聖女も仲間にしちゃいました~  作者: 丘/丘野 優
第4章 旧アジール村にて

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第99話 コネの使い所

「……それでその開拓村の村長に会いたいってわけか。なるほどな」


 ミドローグの宿、取った二人部屋でそう言ったのはドワーフの少女、メリクーアであった。

 対面には当然クザンがいて、今日酒場で得た情報について話しているところである。


「そうなんだ。でも一つ問題があってさ。どうもその開拓村の場所、まだ公表されていないらしくて……」


 そう、あのあと、様々な人間に開拓村の場所を尋ねてみたのだが、その正確な場所については誰も知らなかった。

 大雑把な方角とか、その程度のことしか分からなかったのである。

 ただ、これ自体はそれほど不自然なことではない。

 今まで存在しなかった位置に、これから村を作ろうというのだ。

 そんな段階の村の位置について、それほど多くの人間がよく知っているというのはむしろ少ない。

 だが、冒険者組合などに直接尋ねても答えてくれなかった。

 これはおかしい話だった。

 対応してくれた職員によれば、まだはっきりとした位置が定まっておらず、その状態で人が押し寄せるようなことになっても対応が出来かねるため、必要な人員以外の行き来を制限するために正確な場所については教えかねる、ということだった。

 行商人や大工、それに鍛治師などの商人や職人には必要に応じて伝えるということも言ってたので、全く場所が定まっていないというわけではないようだが、少し不自然である。

 それ以上に、クザンにとっても困った話で、ノアというのがあのノアなのかを確認するためにはそこに行くしかない。

 それなのに場所が分からないのでは。

 そういう話だ。

 これを聞いたメリクーアは、


「あー、そいつは困ったもんだな……その開拓村の話については私の方でも聞きはしたけどよ。確か、旧アジール村、とかいうところだって話だったが」


「え、村の名前、分かったのかい? それなら、その村を調べれば……」


「いや、相当昔に廃村になった場所らしい。地図にも載ってねぇってよ」


「……望み絶たれるの、早すぎないかな? まぁ、仕方ないか……でもどうにかして場所を見つける方法を探さないと」


 がっくりとしながらそんなことを呟きつつ、クザンは、あ、と気づいて言った。


「そういえば、メリクーア。そんな話を聞けるってことは、そっちは鍛治師組合から仕事をもらえることになったってことでいいのかな?」


 部外者にそんな話はしないだろう。

 そう思っての言葉だったが、これにメリクーアは笑顔で頷き、


「おうよ。どうも、鍛治師組合長が私の親父と昔からの知り合いだったらしくてな。そのコネで……」


「へぇ、世間って狭いものだね。でもちょっと不満そうなのはどうしてかな?」


 メリクーアは笑顔だったが、少しばかり納得いかないというか、自嘲気味な表情に見えたからこその質問だった。

 これにメリクーアは、


「いや、腕じゃなくて親父の威光で仕事をもらう感じになるからよ。どうもな……」


 なるほど、職人の矜持の問題らしかった。

 けれど……。


「別にいいじゃないか」


「え?」


「それならその腕を、仕事で見せてやればそれでさ。もしかしたら、周りの鍛治師は所詮コネで、とか言うかもしれないけど、実際に仕事がしっかりしてるなら、きっとそのうち何も言えなくなるはずさ」


「で、でも……」


「僕もそうだったから。大丈夫だよ」


 事実、クザンは騎士団の所属していた時、頻繁にそのようなことを言われた。

 特に、従騎士になる前、従者をしていた時が最も言われた。

 栄えある公爵騎士団である。

 たとえその従者の地位だとて、そう簡単に手にれることはできないところだ。

 けれどクザンは父親が副騎士団長であり、だからこそ容易にその地位についたように見えたのだろう。

 実際、かなりすんなりと入団が決まったような記憶はある。

 入団試験もなかったくらいだ。

 ただ、入団それ自体はともかくとして、普段から副騎士団長である父には極めて過酷な訓練を課されていた。

 それも含めると、どれくらい楽だったかは疑問だ。

 入団試験も、一応見学したのだが、あんなに楽でいいのかと疑問に思ったくらいである。

 それなのに、しばらくの間、クザンはコネ扱いが酷かった。

 まぁ、試験も受けずに入ったわけだから仕方がないわけだが……いっそ試験を受けさせてくれればよかったのにと思うくらいだ。

 それでも普通に受かることはできたと思う。

 まぁ、父や他の騎士団員からすれば、確実に受かるだろう人物の試験などしても時間の無駄だ、と言う感覚だったらしいと後で聞いたが。

 それにコネだなんだと言われたくらいで折れるようであれば、入団試験を受けて入っても同じだとか。

 あらゆる意味で厳しい話だったが、今にして思えばその通りなので文句はなかった。

 実際、色々言っていた奴らの方が、徐々に耐えられずに消えていった。

 最後に残ったのは、何も言わなかった奴か、最後まで敵視することをやめずに真正面からぶつかってきたような奴らばかりだった。

 最終的に彼らは同期として極めて良い関係を築けたので、まぁそう言うことなのだろうと今では思っている。

 メリクーアだとて、同じことだろうとも。


 そんなクザンの言葉に、メリクーアは、


「お前……すげぇな。でも、分かったよ。とりあえず、与えられた仕事を頑張ってみるぜ……だが、その前にだ」


「うん?」


「旧アジール村の場所、知りたいんだよな」


「まぁね。それがどうかした?」


「いや、私の方でちょっとなんとかしてみようと思う。どうせいろいろ言われるコネなんだ。こう言う時に使ってもいいだろう」

読んでいただきありがとうございます!

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