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追放貴族は最強スキル《聖王》で辺境から成り上がる~背教者に認定された俺だけどチートスキルでモフモフも聖女も仲間にしちゃいました~  作者: 丘/丘野 優
第3章 《煉獄の森》の外

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第78話 素材の扱い

「……あぁ、やっぱり駄目になってしまってるか。まぁ、そりゃ当然だよなぁ……」


 残念そうにそう呟きながら、手にあるものを見つめた俺である。

 そんな俺の声を聞きつけて、カタリナが近寄ってきた。


「どうかしたの?」


 そう尋ねる彼女に、俺は手に持ったものを見せる。


「いや、これを見ればわかるだろう?」


 首を傾げて、しかしそれなりに知識も豊富なカタリナだ。

 それがなんなのかすぐに理解して、


「……砕けた魔石?」


 と尋ねてきた。

 俺は頷いて言う。


「その通りだ」


 これで俺が残念そうだった意味も察したらしい。

 魔石はそれ自体が価値あるものだ。

 エネルギー源としても、宝石としても、魔道具などの素材としても有用な、万能の素材といってもいい。

 ただ、その価値は大きさなどに左右される。

 砕かれた状態でも無価値にはならないまでも、まっさらな状態よりは遥かにその価値が落ちることは言うまでもなかった。


「でもスケルトンキングを倒すためには仕方なかったことでしょう? 報酬も、十分出すつもりよ」


 それで補填してはどうか、と提案してくるカタリナ。

 まぁ、そもそも報酬は俺たちに護衛を頼んだ時点で確定している。

 その価格はかなりのもので、俺たちのようなクラスの冒険者に払うような額ではない。

 もちろん、それは俺たちが彼女たちを助けた時の手腕を知っていて、それを期待していたからこそ出た額だろうが。

 ともあれ、俺は頷いて、答える。


「それは分かってる。でも、こいつがあれば魔導具作りも出来たんだがな、と思ってさ。それにあれくらい強力だったんだから、もう一つくらい、体内に魔石があってもよかった。残念だけどなかったがな」


 実際、スケルトンキングの体内には、都合二つの魔石があった。

 マタザが破壊した胸部と、そして俺が砕いた頭部の中の魔石だ。

 魔物が持っている魔石は、必ずしも一つではないのだ。

 しかし、流石に三つ目はなかった。

 あったらもっと強力だったかもしれないことを考えれば、むしろそれで運が良かったとも言えるが。

 ただ、なかったものはなかったで仕方がない。

 同じ思考に辿り着いたのか、カタリナは言う。


「魔石の他に取れる素材はないの?」


 彼女は冒険者ではなく、魔物の素材に詳しいわけでもないからこその質問だろう。

 基本的なことは知っているだろうが、スケルトンキングの素材はこれとこれで、と答えられるようなものではない。

 そもそもスケルトンキングなんて、滅多に出現しないような存在だからな。

 特殊な場とか、不死者系統の多い迷宮とか、そういうところでなければ出会えないような存在である。

 俺は彼女に答える。


「あるよ。まぁ、見ての通り、骨それ自体しかないけどな……ま、これはこれでいい素材か。他の魔物の魔石と組み合わせて魔導具作りに役立てるか」


 スケルトン系の魔物の素材は、骨そのものだ。

 削って鏃や槍の穂先にしたり、砕いて飲むタイプの薬品の材料にしたり、建材などに溶かし込んで触媒にしたりなど、使い方は色々ある。

 意外に使える素材だ。

 まぁ、今回のスケルトンキングのものは色が黒いし、特殊すぎて薬品とか建材とかの用途としては安心して使えそうもないが。

 俺が自分で武器や魔道具を作るのに役立てるのが一番だろうな。

 そう思って呟いたセリフだったが、カタリナはそれを聞きつけて尋ねてくる。


「ところで、当たり前のように魔導具作りするって言ってるけど、どれくらいのものが作れるの? 先の縄くらいのものを普通に?」


 作れること自体は疑っていないあたり、彼女もだいぶ俺に毒されつつある気がする。

 ただ、物分かりの良い貴族令嬢は俺は割と好きな方だ。

 何を説明しても自分の常識の内側でしか行動しない貴族令嬢というのは、意外に少なくないからだ。

 頭が柔軟なのはただそれだけで美点である。

 俺は答えた。


「いやまさか。あれは相当なものだぞ。そう簡単に作れるもんじゃないさ。いつかは、って思うけどな」


 軽く答えた言葉だったが、カタリナの頭脳を甘く見ていたのは俺の方だったのかもしれない。

 なるほど、と彼女は頷いてから、


「……ということは、あれは貴方が作ったものではないのね。意外だわ」


 そう言った。

 すぐにそういうところに行き着くあたり、やはり頭の回転が早いなと思う。


「俺をなんだと思ってるんだ……まぁ、言わないでおこうと思ったけど、あれは俺の師匠に当たる人が作ってくれたものだ」


 これくらいのことはもう話してもいいか、と思った俺はそう口にする。

 具体的な名前とか人物についてはとてもではないが話せないけれど。

 アストラル教会に属する剣の聖女です、なんて言ったら流石のカタリナとて卒倒してもおかしくはないからだ。

 それだけ有名で、恐ろしく、そしてとてもではないが教会以外の味方になりそうもない人物だ。

 俺の場合、運が良かっただけなんだよな、本当に。


「魔導具作りはその人に教わったというわけね?」


 教わった、というか技能を借りて身につけ、そして厳しい技能の酷使を経て自らのものとした、というのが正確な表現になるだろう。

 しかしこれについてもカタリナにはまだ、話せない内容だ。

 俺は曖昧に頷きつつ答える。


「まぁ、そうなるかな……一応、基礎だけは学校に通ってる時に……おっと」


 少しばかり余計な情報を入れたのは、本当は聞いて欲しくない部分をぼかすためだ。

 案の定、カタリナはそちらの方に気を取られて、俺が一番聞かれたくない部分に疑問を持つことをしなかった。


「今のは少しわざとらしいわよ。そんな簡単に口を滑らせるわけないものね」


 ただ、わざとだ、ということは理解したようでそんなことを言った。

 やはり油断はできないな、と思いつつ、会話を楽しみながら返答する。


「そりゃそうだろう。ま、カタリナはもう俺が元貴族だって知ってるわけだしな。これくらいはいいだろう」


 カタリナには、その部分についてはもう知られている、理解されている、という前提で話して行った方が楽だからそうすることに決めている。

 だからこそのセリフだった。

 これをカタリナは前向きに捉えたらしく、


「……そうね。少しは信用してもらえた、と取っても?」


 と尋ねてきたので、俺は頷きながら、


「少しはな。でも人は簡単に裏切る。いつか敵対する可能性もあるとは思っているよ」


 そう答えた。

読んでいただきありがとうございます!

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― 新着の感想 ―
[気になる点] スケルトンキングの持ってた高価な魔法剣は回収出来ないのかな
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