85 内通者の捜索
国境付近で戦争が行われていたころ、王妃からの命令で裏切り者の特定を極秘裏に行っていた兵長は王都のスラム街を訪れていた。兵長の調査によって城の関係者の1人がここ最近、頻繁に訪れているということが分かったのだ。
元々、兵長はスラムの出身であったため顔が利く。そのため、普段スラムに入ってこない人間が頻繁に出入りしていると自然にその情報が入ってくるのだ。その人物を確認するため、ここ数日、ずっと張り込みを行っていた。
情報をもたらしたスラムの住人と共に例の人間が出入りする場所で今日も張り込みを行っているとターゲットが一人で現れた。その瞬間、兵長に緊張が走る、目の前にいる人物は本来であればここにいるはずがない人間だからだ。
兵長はその人物がここで何をしているのかを隠れて観察していると、そこにフードを深くかぶった男らしき人間が現れる。
「おい、次の仕事だ。どうやら、我々がさらったクレハとかいう女が逃げ出したらしい、知っているか?」
「ええ、全く見張りの兵士は何をやっていたのかしら。気づいたら城に帰ってきて本当にびっくりしたわ」
「その女のことだ、すでに上層部はあの女に利用価値がないと決定を下した。だから次の作戦のおとりになってもらう。あの女を始末しろ」
「ちょっと待って、今は無理よ。王妃が心配して、あの女がいる部屋の前には常に兵士が待機しているの。しかもあの女の部下のルークってやつもずっといるし」
「ならお前は兵士だけ何とかしろ、女とその部下もろとも始末する。決行は明日の夜だ」
「分かったわ、明日の夜ね」
彼らは話を終えるとすぐにその場を立ち去って行った。彼らがいなくなるのを確認すると兵長はこのことを王妃に伝えるためにすぐに行動を移す。
兵長が王妃の部屋を訪れると王妃のそばにはサラが控えていた。しかし、裏切り者の件に関しては極秘のため、王妃はサラを退出させる。
「王妃様、失礼いたします。私です、例の件に関して緊急の連絡がございます。」
「兵長ですか、例の件に関してですね。サラ、二人にしてくれますか?」
「かしこまりました、王妃様」
サラが退出するのを確認すると兵長は先ほどスラムであったことをすべて報告する。
「兵長、それは事実なのですか?本当に間違いないことなのですね」
「私の命に懸けまして、今話したことに嘘偽りはありません。明日にはクレハ様とルーク様が襲われます。私に案がありますので襲撃者を生きたまま捕らえます。そいつを尋問して聞き出せば今話したことが事実であるとお分かりになるはずです。クレハ様とルーク様、私の信頼できる部下にのみ、このことを伝えましょう。こちらの動きをあまり知られたくありません」
「分かりました、許可しましょう。すぐにとりかかって下さい」
王妃は聞かされた報告の内容にしばらく頭を抱え続けた。
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