77 胸騒ぎ
クレハが王都に旅立つ前にルークはクレハから商会を任されていた。今ではクレハの宿で働いている従業員たちにも手伝ってもらっているため、クレハがいなくても商会の業務は順調にまわっていた。クレハからは一週間程度で帰ってくると言われていたため、ルークはクレハの帰りを待ち望んでいた。
しかし、すでにクレハが王都に向かってから十日以上が経過していた。最初のうちは馬車が遅れているのだろうと、心配はしていなかったが、これほど遅れているとなるとさすがに心配になってくる。ルークと共に商会で働いている従業員がクレハは何かトラブルに巻き込まれているのではないかとルークに尋ねる。
「ルークさん、会頭がここまで予定と違った行動をとったことがありませんよね。もし何か用事があれば以前も連絡を入れていたはずです。これは何かトラブルに巻き込まれたのではないでしょうか?」
「確かに、ここまで連絡がないのはおかしいですね。王都に向かえば何か分かるかもしれません。ここは任せていいですか?僕はオーナーを探しに行ってきます!」
「大丈夫です、任せてください。ルークさん、会頭をお願いしますね」
ルークはクレハを探しに王都に到着したものの、どこから手を付ければいいのか分からず困惑していた。しかしそこで救世主が訪れることになる。
「ルーク様じゃないですか、クレハ様に言われて竜田揚げの様子を見に来たのですか?」
ルークに話しかけてきたのはサラだった。サラはクレハが竜田揚げの売り上げの様子をルークに頼んで見に来ているのだと考えていたが、ルークの様子から違うようだった。
「いったい何のことですか?そんなことよりも、オーナーを見かけませんでしたか?全然連絡が取れなくて探しているんですが?」
「クレハ様ですか?それなら三、四日前に、ピトリスの街に帰られましたが、お会いしていないんですか?」
「帰った?ですが十日以上オーナーとはお会いしていません。それに、三、四日まえに王都を出発したのであればピトリスに到着していてもおかしくありません。どうしよう、オーナーに何かあったのかも」
ルークは次第にクレハのことが心配になり、どんどん顔色が悪くなっていく。サラは急を有する事態であると王妃の元に報告を行うために、ルークを王城へと連れていく。
「とにかく、王妃様に報告してみましょう。王妃様ならきっと力になってくれます」
「王妃様、失礼します。ルーク様が参られました。お通ししても大丈夫でしょうか?」
王妃は自らの部屋で休んでいるとメイドのサラから声を掛けられる。クレハではなくルークが訪ねてくるとは少々不自然な気もしたが、まずは話を聞いてみようと許可をする。
「ええ、大丈夫よ。通してちょうだい」
「失礼します、実はクレハ様なのですが、あれから商会に帰っていないということでルークさんが探していられたんです。あれから三、四日経過しているため、少々不自然だと考えたため、王妃様にご報告をと」
「確かに変ね。ルーク、今までこんなことはあったのかしら?」
「いえ、こんなことは今までありませんでした。オーナーが期日までに帰るといった時には必ずそれまでに帰られていました。ですので、ほかの従業員もとても心配していまして」
「分かったわ、そういうことなら私に任せて頂戴。兵士たちに命じて調べるさせるわ、あなたは少し休みなさい。部屋を用意させるから、なにか進捗があるまで休んでいなさい」
「待ってください、僕にも何か手伝わせてください。じっとしているなんて嫌です」
「いいえダメです。あなたは今は休むべきです。そんな精神状態では、むしろ足を引っ張るだけです。休まないのであれば、あなたにクレハの情報は渡せませんよ」
「分かりました。王妃様の言うとおりにいたします」
ルークは渋々、王妃の命令に従う。言いつけを守るルークを確認すると王妃は急ぎ兵士たちにクレハの足取りを調べさせるのであった。
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