76 今も昔も変わらないもの
「私たちは二人とも同じ施設にいる子供でした。あの頃の私たちは特に仲が良いということはなく、あまり関わり合いがありませんでした。ですが、ある時、私がいたずらをしてご飯抜きの罰を受けているときにロドシアが自分のご飯を分けてくれたんですよ、その時のロドシアはまるで女神さまのようでした。そこから彼女のことを姉と慕うようになり、どこへ行くにも、いつも一緒だったんです」
「確かに、あの時のサラの絶望の仕方と言えば今でも思い出せますね。それなのに、ご飯を少しあげるだけで、あれほど目を輝かせるなんてチョロい子でしたね」
王妃とクレハはサラの昔の話を聞き、サラが昔と全然変わっていないと二人で笑いだす。
「というかサラ、あなた子供のころと変わっていませんね」
「確かに王妃様の言う通りですね。食べ物に関してサラさんは今も昔も変わりませんね」
そんな二人に不服なサラはプリプリと怒り出す。
「王妃様、クレハ様、私はそんなにがめつくありません。食べ物を必要とすることは人間として当然の行動です。」
「いやいや、サラはがめついよ。もっとお姉ちゃんである私みたいにならないと!」
ロドシアはドヤ顔で鼻を高くしている。しかし、そんな二人を見ていて、王妃とクレハはどっちもどっちだと笑い出すのであった。
クレハはここで話を戻そうと王妃に今後の予定を尋ねる。
「王妃様はしばらくこちらに泊まっていかれるのですか?」
「ええ、しばらくはこっちで休暇を楽しむわ。サラと一緒にね」
「あなたはどうするの、こっちでゆっくりしていくの?」
「私は商会をあまり空けるわけにはいきませんので、今日だけこちらで泊まっていきます。ルークに1週間で帰ると言っていますので遅れてしまえば心配させてしまいますし」
「そうなのね、じゃあ今日はみんなでゆっくりしていきましょうか。ロドシア、今日くらいはお風呂に入ってないでちゃんと働きなさいよ」
王妃の指摘にロドシアはギョッとする。
「も、もちろんですよ王妃様。いつも通り、皆様のおもてなしをさせていただきます」
しかし、そんなロドシアを王妃はジト目で見ている。いつもサラとロドシアに接していることもあり、今のロドシアが嘘をついていると見破っていたのだ。
ロドシアはそんな王妃の目に耐えられずその場を去っていった。ロドシアの行動はサラと血が繋がっていないにもかかわらず、そっくりな行動をとっていた。
その夜、クレハと王妃はクレハの湯の代名詞であるお風呂を堪能した。クレハが考えていた通り、苦い水を加えたお風呂は肌に潤いを与え、入浴前と比べハリが出ているようだった。その効果にクレハも王妃も大満足だった。
王妃たちが寝静まろうとしているとロドシアに用があった王妃はサラにどこにいるのかと尋ねるが一向に見つからない。王妃はもしやと思い浴場に向かうと入浴を行っているロドシアが発見された。そんな決定的な現場を目撃されロドシアは王妃からの説教を受けるのだった。
翌朝、クレハはルークが待つピトリスの街へと帰っていった。しかし、クレハが商会の扉を開くことはなかった。
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