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自分から追放された元貴族令嬢ですが許せないので見返します  作者: 創造執筆者
五章 クレハの躍進
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74 大暴走

クレハがタコ天を従業員たちにふるまったその日、クレハはキュリスを去っていた。クレハの湯の経営は王妃からの頼みでロドシアにすべて任せていたからだ。もちろん、タコ天のことに関しても全面的に任せている。彼女は確かに問題がありそうだが王妃からは優秀だからだと、懇願されたためクレハは試用期間としてロドシアに任せてきたのだ。


クレハはしばらく経って抜き打ちでクレハの湯の様子を見に行ってロドシアが問題ないようであればその後も任せようと考えていたのだ。とはいっても、彼女は王妃付きのメイドの1人であるため、定期的に王妃の元へ帰る必要があるようだが、その場合は信頼できる他の従業員に業務を任せるらしい。




クレハが王都に到着すると、無事にリマニ伯爵との会談を終え、クレハの湯の準備が整ったことを王妃に伝えるために王城へと訪れていた。今回の事業には王妃が特に力を入れており、経過を報告してほしいとキュリスに旅立つ前に命じられていたからだ。


すでに門番に話は通してあったのだろう、門番に事情を話すと早速、王妃の元へと案内された。




「クレハ、キュリスの街の領主とはうまく話が付きましたか?」


「はい、おかげさまで領主様にも全面的に協力していただけることになりました。これも王妃様や陛下のおかげです。感謝いたします」


「いいのよ、クレハの言っていたお風呂が完成したら私も遊びに行くんだから。それよりも、ロドシアが迷惑をかけていない?あの子、本当に美容のことになると目がないんだから。誰かとそっくりだわ」


王妃はクレハにそう話すと隣に控えているサラにジト目を向ける。そんな王妃の目など気にしないかのようにサラは以前クレハが話していた竜田揚げを王都に出店する話に関して尋ねる。その行動に、ついに王妃は何も言わなくなってしまった。


「クレハ様、あんな風呂狂の話よりも竜田揚げの件はいったいどうなったのですか?すでにお店と従業員はこちらで用意していますよ、早くオープンしましょうよ」


「ちょっと待ってくださいよ、それに関しては、まだ何も決まってないのですよ。なんで場所や従業員が決まっているんですか?それに、それらの代金はいったい誰が払うと思っているんですか?」


「そんなのはすべて私の自腹で払っています。竜田揚げのためであれば全財産を投げうってでも惜しくはありません!」


サラの強行にクレハまでも頭を抱えてしまった。すでにクレハの目の前にいる王妃は目が死んでいる。


「いいですか、いくらサラさんがお金を出したとしても、お風呂屋などのやることが多いのでしばらくは無理です」


「それならば問題ありません、以前の塩のように竜田揚げもすべてこちらが業務を行いますので、クレハ様には売り上げの50%をお渡しします。ああ、なんて良い考えなのでしょうか!」


サラは腕を組み、ドヤ顔で得意げに話す。


「サラさん、あなた売り上げの50%って言いますけどそれでは従業員の給金も払えないですよ」


「そんなことはありません、竜田揚げであれば天下をとれます!だから50%でも大丈夫です!」


クレハはサラがここまで言っても聞かないのであれば、もうどうしようもないと考えそれを受け入れる。クレハとしてはサラが竜田揚げを売り出してくれるのであれば何もしなくても商会に売り上げが入るため、竜田揚げの作り方を教えた。サラに説明を終えるとようやく、王妃の目に光が戻ってきた。


「クレハ、サラがごめんなさいね。なんだか私に仕えてくれているメイドってこんなのばっかりね、いったいどうしてこんなことになったのかしら。まぁ、彼女たちは優秀だからいいのだけれど。今日はもうピトリスに帰るの?」


「はい、あまり商会を空けたくないですので。かれこれ1週間も空けているので、心配ですから」


「そう、今日はありがとうね。また、お風呂が完成したら教えてね」


「かしこまりました、それに、向こうで新しい食べ物を開発しましたので、ぜひお食べになって下さい!」


クレハの言葉に王妃は楽しみにしていると答えるだけであったがサラは違った。今にもその食べ物に関して聞きたそうにクレハを見つめる。サラからの無言の圧力を気にしつつも、ここでは用意できないことを話す。


「クレハ様、い・ま・す・ぐ・それを出してください。さぁ、早く!」


「それは無理ですよ、食材はキュリスにしかありませんから。食べたいなら新しくできたお風呂屋で食べてください」


その言葉を聞き、サラはいつものごとく行動を起こす。


「そうですか、王妃様、私しばらく休暇を取らせていただきます」


「一応聞きますが、何のために休暇を取るのですか?」


王妃のこめかみには若干血管が浮き出ているがサラは気づいていない。


「そんなの、決まっています。クレハ様の新商品を食しに行くためです!」


「ダメに決まっているでしょう、そんなこと許しません!」


今にも部屋を飛び出しそうなサラを王妃は取り押さえ、必死に抑え込む。しかし、サラは何かにとりつかれているかのように、ものすごい力を発揮し、そこから脱出しようとする。


「イ・ヤ・で・す。私は新作料理を食べるんです!」


「誰か!誰かいますか!このおバカを紐でぐるぐる巻きにしなさい、頭が冷めるまでしばらくそのままで食事は抜きです!」


その言葉に、いっきに兵士がなだれ込む。いくらサラでもその数には勝てなかったのか、徐々に抑え込まれている。


「ちょっと、あなたたち何をしているんです!私には使命があるのです、ちょ、はなして」


クレハはこの騒ぎを見なかったことにし、王城を去った。最後に見た光景はサラがぐるぐる巻きにされ、泣きながら”新作料理~”と連呼している姿だった。このままいけば明日にはピトリスの街へと帰ることができるだろう。ルークに久しぶりに会うことを楽しみにしながらピトリスの街へと向かった。


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