73　ゲテモノな新料理

ロドシアが我に返ったのは悲鳴を上げてしばらくのことだった。

「ちょっと、会頭！これは何ですか、こんなもの食べられるわけないでしょう！どうかしているんじゃないですか、病院に行ってください！」

「これはタコという立派な食材ですよ、しかもすごくおいしいんです」

クレハは笑顔たっぷりでロドシアに説明するが全く信用されていない。そこでクレハは実際に食べてみればわかると、ロドシアに料理の準備を依頼する。

「まぁ、実際に食べてみればこの美味しさに気づきますよ。とりあえず塩とレモン、小麦粉、卵、油を買ってきてください。この材料ならばここでも簡単に手に入りますから」

「分かりました、買い物はしますが絶対に私はそれを食べませんよ！」

ロドシアは渋々、クレハの言うとおりに買い物に行くのであった。しかし、クレハの言うことを全く信じていないようだ。

ロドシアが買い物から戻ると材料を受け取りクレハは作業に取り掛かる。クレハの言うことは信じていないものの、従業員たちはどのようにタコを調理するのかが気になり、作業を見守る。

「まずは、タコの下処理ですね、これはヌメリがすごいのでとにかく塩でもみ続けます。これだけ塩をふんだんに使えるのはこの街だけですね。さて、何回か塩を流したり、付けてもんだりしたら、下処理は完了です。これでヌメリ取りは終了です。続いて天ぷら液を作ります、小麦粉、卵、水を混ぜて完了です、簡単でしょ。あとは天ぷら液にタコを付け、熱した油に入れて揚げるだけです。いい感じに揚がれば塩とレモンをつけて食べます。タコ天の完成です」

クレハは早速できた料理を従業員たちに勧める。先ほどから調理している時に漂っている良い匂いが従業員たちの食欲を刺激するが、もともとの形があれだったため、だれも手に取ろうとしない。

そこでクレハは一番にタコ天を食べ始める。下処理を丁寧に行っていたため、臭みもなくプリプリとしていて、とても美味しく感じられる。クレハの美味しそうな顔に、従業員たちも恐る恐る口に運ぶ。

「これは美味しいです。あんな気持ち悪い外見なのにこんなにおいしいなんて信じられません」

「ほんと、びっくりだな。想像していたより全然美味しいじゃん」

従業員たちにはかなり好評であり、瞬く間に揚げたタコ天は無くなっていく。そんな中、一番食べているのはロドシアだった。

「会頭、これ美味しいですね。こんなにおいしいのであればもっと早く教えてほしいですよ」

「だから美味しいといったではないですか、というかあなた食べすぎではないですか？」

「食べられるうちに食べておかないと、次に食べられるのがいつになるか分かりませんから」

「それなら大丈夫ですよ、クレハの湯でエールと共にこのタコ天を出そうと思っていますから、あなた達はいつでも食べることができますよ」

この言葉に従業員たちから歓喜の声があがる。

「会頭、最高です！一生会頭についていきます！」

ロドシアはサラと同様にとても調子がいい性格のようだ。