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68 クレハの新事業

クレハは王に許可をもらい早速、自身の考えを話し始める。


「ありがとうございます。まず、次に開店する店舗ですがキュリスの街でお風呂屋をしたいと考えています。そこで陛下にお願いしたいのは、塩の精製の際に捨てている苦みの液体を商会に頂けたらと考えています」


「話は聞いている、確か海水から塩を作る際にすべての水を無くすのではなく、少しだけ液体を残すのであったな。そして、その水が塩が苦くなる原因とか?」


「はい、おっしゃる通りです」


「それで、その苦い水を使って風呂屋とはどういうことなのだ?」


クレハは王の問いに待っていたと、説明を始める。


「ご説明させていただきます。確かに通常のお湯でもお風呂屋はできますが、その苦みの水をお風呂に混ぜることによってお肌や体に良い効果が期待できるのです。それに、キュリスの街は港町ですので潮風がきついですから、お風呂屋という点でも需要は大きいと思います」


それを聞いていて反応を示したのは国王でなく、やはり王妃だった。そんな王妃を見て国王は呆気に取られている。


「クレハ、それは本当なんですか?その水を入れるだけでお肌にも良いというのは」


「はい、ふつうのお湯でお風呂に入るよりも、よほどお肌にいいと思います」


「陛下、ぜひクレハのお願いを聞いてあげましょう。その苦い水もどうせ捨ててしまうものならクレハに渡しても何の問題もありませんよね」


王妃は目を輝かせながら王へ進言する。王妃の熱意に若干引いている気もするが王はそれを無視して許可を出す。特に捨ててしまうものであれば問題ないと考えたからだ。


「それくらいなら問題ない。キュリスの領主には私から話を付けておこう。どうせ捨てるものだ、タダでいい。それとナタリー、キュリスにお風呂ができても我々は入りに行けないぞ。遠すぎるだろう」


その言葉に王妃の輝いていた眼は光を失う。しかし、クレハなら何かできないかと思い、期待を寄せた目でクレハを見つめる。


「クレハ、なんとか王都でそのお風呂に入れませんか?」


「それは、残念ながら難しいです。申し訳ありません」


「そうですか、仕方ありませんね。あなたでも無理でしたらあきらめましょう」


王妃の落ち込み様は見ていられないほどすさまじかった。しかし、クレハにはどうすることもできないため黙っていることしかできない。それを見かねた国王が助け舟を出す。


「仕方ない、今回の一件でアディー商会の不正に気付いたのはナタリーだからな。もともと、気づかなかったらこの話もなかっただろう。今度、風呂が完成したら旅行にでも行こう」


「本当ですか、陛下。絶対約束ですよ!」


王妃は大喜びで子供のように喜んでいるのだった。王の許可も出て、キュリスの街でクレハ商会の新事業が始まる。


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― 新着の感想 ―
[一言]  最後まで《終わってはいませんが》楽しく読むことができました。  作者様 お疲れ様です。ありがとうございました。
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