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66 茶番

クレハはルークと共に王城へと訪れていた。今日は晩餐会のため、二人ともなんだか楽しげだ。

周囲は王国の貴族たちだろうか、きらびやかな服装をしている者たちばかりだ。二人も今日は晩餐会とあって貴族たちには劣るものの、恥ずかしくない服装をしていた。


クレハ達はここにいるはずであろうノイマンを探していると、兵士が王の入場を告げる。みな、王の元へと目を向ける。


「さて、みな今日は集まってくれて礼を言う。今日は露店祭で3位まで入賞した商会を呼んでいる。そしてみなには露店祭で1位になった商会を紹介しておこう。クレハ商会の会頭、クレハ前へ」


王のその言葉に周囲の貴族たちは騒然とする。なぜならば、露店祭で優勝していたのはアディー商会と聞いていたからだ。当然驚いているのは貴族たちだけでなくアディー自身だ。


「陛下、お待ちください!優勝したのはわが商会のはずです。クレハ商会は優勝でなく、準優勝です」


アディーは王に進言するが、その問いに答えを返したのは王妃だった。


「いえ、間違っていませんよ。確かに優勝はクレハ商会です、先日の発表は些か不備がありました。大会委員はどうやら今年以外のコインも計測していたようです。そのため、今年の分だけを数えれば優勝はクレハ商会です」


王妃の言葉に周囲の貴族たちはざわつく。しかしその言葉に一番驚いていたのはアディーだった。彼女は先ほどの驚きとはまた違ったような驚き方をしていた。それは、まるで何かを焦っているようだった。


「王妃様、いったい何をおっしゃられているのですか?今年以外のコインとは何ですか、私には身に覚えがありません」


「あら、それはおかしいですね。偶然にもあなたから提出されたコインが今年製造されたものでないことが分かりましてね、なぜかそのコインがあなたの商会から提出されたコインにしか含まれていなかったんですよ?これが偶然の確率っていったいどれくらいでしょうね?」


アディーはいよいよ自分が疑われていると焦りだしているのがはたから見ていても分かる。


「王妃様、これは何かの罠です。きっと私を何者かが陥れようとしているのです」


「残念ながらその手は使えませんよ、すでにあなたの商会の人間から前年度の露店祭での売り上げと換金された金額が異なっていることは調べがついています。もちろん、あなたがコインを換金せずに保管することを命じていたことも。少しお話をしただけでペラペラとしゃべってくれたらしいですよ」


王妃の決定的な言葉にアディーは言葉を失う。アディーは自らの終わりを悟り、力なくうなだれる。彼女たちのやり取りを見ていた国王は裁きを下す。


「アディー商会の会頭、アディー。露店祭で虚偽の報告、および意図的に王国を騙そうとした罪により、優勝を取り消し、商会の権利および全財産をはく奪する。以後すべてのアディー商会の財産の権利は王国に移るものとする。即刻この場から立ち去るがよい」


アディーはいつまでたってもその場を去らず、兵士たちが彼女を連れていく。みな、国王を騙そうとしたアディーに対して冷ややかな目を向けるがこの場にただ一人だけ、彼女を心配そうに見つめる者がいた。


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