65 確信
王妃の命令を受けた大会委員会の代表は部下たちにもう一度アディー商会が提出したコインを調べさせる。しかし、部下からの返事は前回と同様だ。
「どうだ、何か見つかったか?」
「いえ、何も見つかりません。特に偽物でもないようですし、問題ないかと。ただ、一点気になるのがほかの商会が提出したコインに比べ、些か汚いような気がしますが」
代表は部下の言うことが気になり、確認をとる。
「汚いというのはどういうことだ?誰かが汚したのか?」
「いえ、これは何というか、劣化しているような?でもそんなことはありえないですよね、今年使われているコインが劣化するなんて早すぎますよね」
「おい、それって本当に今年のものなのか?そういえば、去年コインを作ったときにコインを作製した奴がうっかりミスをして例年のデザインとは少しだけ違ったコインがかなりあったはずだ。まぁ、元々そこに違いがあると分かっていなければ分からないような変化だったが。少しそれを見せてくれ、もし汚れたコインが今年造られたものなら、そんなことはないはずだ」
代表は汚れたコインを注意深く観察する。すると、去年報告されたミスがあるコインが複数見つかった。また、他の商会から提出されたコインを確認したがそのすべてがミスのないコインだった。
「おいおい、これもあれも例のコインじゃないか。ということは、これは去年造られたもの。これは王妃様に報告しなければ。おい、助かった、今日はもう休んでいいぞ」
代表は急ぎ、王妃の元へこのことを報告に向かう。
王妃が自らの部屋でくつろいでいると部屋をノックするものが訪れる。
「王妃様、私です。アディー商会が提出したコインに関しての報告をお持ちいたしました」
「入って下さい」
代表は王妃に椅子に腰かけるように言われ、早速報告を行う。報告を聞いている王妃の顔は次第に笑顔が消えていく。
「一応聞きますが、誤って去年のコインが流出したり、去年のコインを住人たちが間違えて使ってしまったなどはないのですね?」
「それはないと思います。去年のコインが流出したのであれば他の商会から提出されたコインの中にも混じっているはずですが、それもありませんでしたし、住人が間違って使ったにしては数があまりにも多すぎます」
「そうですか、どうやら不正が行われたようですね。おそらく、それほど去年のコインが混じっていたということは去年に換金を行わずに今年の分とまとめて換金したのでしょう。それなら売り上げが大きくなるのは当たり前です。これは晩餐会の時が楽しみですね、いったいどんな顔をして出席するんでしょうか?楽しみですね」
王妃はただただ笑みを浮かべるのであった。
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