64 疑念
露店祭が終わった夜、王妃は露店祭の結果に疑問を持ち、大会委員会の代表を呼び寄せていた。
「さて、あなたを呼んだのはほかでもありません。優勝者に関してです。司会が言うには昨日に比べ売り上げが5倍になっていたとか?しかし、そんなことがあり得るのですか?私が聞いた話ではこの商会は特に行列ができているという報告もなく、その状態で優勝するほど売り上げるとは,
にわかには信じられないのですが?」
「確かに私もその点に関しては少し不自然だと考えていました。しかしながら、アディー商会から提出されたコインは祭りの結果と同一の金額です」
「では、そのコインは本物ですか?偽造などは?」
「それもありません。部下に確認させたところ確かに本物のようです」
「そうですか、それでは私の思い過ごしでしょうか?代表、最後にもう一度アディー商会が提出したコインを確認してもらえますか?」
「かしこまりました。確認いたします」
大会委員会の代表は王妃の命を受け、再びコインを調べに向かう。王妃の様子に隣に控えていたサラは何かあるのではないかと考える。
「王妃様、アディー商会の不正を疑われているのですか?」
「ええ、さすがにあの結果はおかしいわ。ですから、不正を疑ったのですが、思い過ごしかもしれませんね。ところでサラ、あなた今日のお昼はいったいどこに行っていたのかしら?私、あなたに用事があったから何人かのメイドに探してもらったんですけど、だれ一人見つけられなかったのよ、不思議なものね。」
サラは王妃の言葉に顔を背け、次第に冷や汗をかき始める。
「申し訳ありません。今日はわたしも露店祭ということで忙しかったので様々な場所に出入りしていました。そのため、メイドたちと会わなかったのでしょう」
「そうですか、それは仕方ないですね。そういえばサラ?なぜだかあなたからニンニクのにおいがするのですがなぜでしょうね?私の記憶が正しければクレハの所ではニンニクがたくさん入った竜田揚げというものを販売していたとか?これは偶然でしょうか?」
王妃の抜け目のない推理にサラの表情はさらに硬くなる。しかし、サラは名案と王妃に自らのアリバイを告げる。しかし、そこでサラは墓穴を掘ってしまう。
「いやですね王妃様、私が最近ダイエットのために野菜中心の食事をしていることをご存じのはずなのに、肉料理を食べるわけないじゃないですか?」
「へぇー、肉料理ですか?サラ、あなたはすごく勘がいいのですね?私は竜田揚げと聞いても、いったい何の料理か想像もつきませんよ。あなたはよく肉料理だと分かりましたね?」
王妃はサラに向かってこれ以上ないほどの笑顔を向ける。笑顔であるはずの王妃の顔を見るサラからは冷や汗があふれていた。
「サラッ!あなた仕事を抜け出してクレハの所に食べに行きましたね!」
「す、すみません。ですが、あのクレハ商会の新料理なのですよ、これを食べないなんて食に対する冒涜です!」
「なにを開き直っているんですか?あなたとはゆっくりとお話をする必要がありますね。覚悟してください!」
その夜、王妃の部屋からは一人のメイドの泣き声が聞こえたとか、聞こえなかったとか。
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