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63 優勝者の発表

いよいよ露店祭の売り上げが発表される。広場には商人たちだけではなく、住人達も結果を見に来るために多数、広場に訪れていた。そのうえ、優勝者には国王自ら褒美を取らすため、何をもらうのかという興味から大勢の住人たちがここを訪れていた。


「オーナー、やっぱりドキドキしますね。僕たち優勝できるでしょうか?」


「ルーク、こういう時は弱気になってはいけません!」


売り上げの結果が気になり、ルークは弱気になっている。クレハでさえも周囲の緊張感に影響されてか心臓がドクドクしているのが自分でも聞こえるようだった。


大会委員たちがいるところに、兵士たちに護衛された国王と王妃が訪れる。いよいよ結果発表の準備が整ったのだろう。会場の活気は最高潮を迎える。


「さぁ、みんなー、いよいよ露店祭の売り上げの発表だ!1位から3位にランクインした商会は後日、王城に招かれるぞ!その上、優勝した商会には陛下自ら褒美を頂けるらしい!いったい何が頂けるのか?それではまずは第3位の発表だ!第3位はノイマン商会!これは意外だ、昨日は首位であったのにもかかわらず3位、これはダークホースが2体もいるのかー?」


会場では自分たちが呼ばれる瞬間はまだか、まだかと必死で大会委員を見つめる者たちばかりだ。そんなまなざしを気にも留めず、大会委員は2位を読み上げる。


「続いて第2位!クレハ商会だ!これは昨日と順位は変わらず!しかし、昨日に比べ売り上げは圧倒的に伸びているぞ!例年であれば優勝していた金額だ!」


クレハ達は自分たちの商会が2位の段階で呼ばれてしまい、優勝できないと分かり非常に残念そうな表情をしている。


「オーナー、優勝できませんでしたね、残念です。あれだけ売れていれば優勝できると思っていたのに」


「仕方ありません。どれだけ努力しても結果が全てです。結果を出したときに初めてその努力が認められるのです。とはいえ、1位になれなかったのは悔しいですね。」


クレハ達は2位だった。次はいよいよ第1位の発表だ。今年の優勝者が一体どの商会なのかを委員が読み上げる。


「いよいよ今年の優勝者の発表だ!みんなー!準備はいいな、今年の優勝者は・・・・アディー商会だ!昨日に比べて売り上げが5倍になっているぞー!いったい何があったんだ!おめでとうアディー商会!」


会場の観客たちが一斉にアディー商会に称賛の言葉を贈る。クレハは自分やノイマンにあれほど失礼な態度をとっていたアディーがまさか優勝するとは考えてもみなかった。


「まさか、あの商会が優勝するするとは思いませんでしたね。昨日から売り上げが5倍になるなんていったいどんな手を使ったのかすごく気になりますね」


クレハは商売に関してはどこまでも貪欲である。ルークとクレハに後ろからノイマンが声をかける。


「クレハさん、お互い優勝は残念でしたね。まさかアディーが優勝するとは思いませんでした。それに勝負は私たちの負けですね」


「ノイマンさん、確かに順位は私たちのほうが上ですが優勝できなかったのでこの勝負は引き分けみたいなものですよ」


周囲はクレハたちの話に耳を貸しておらず、優勝者が王からどのような褒美をもらえるのかに関心がいっていた。優勝者であるアディーが王の前へ呼び出される。


「優勝者のアディー商会、優勝の褒美として王国に商会の支店を立ち上げるときは1店舗のみに限り、国からその経費と従業員を全面的に支援しよう。さらに、その店舗には私の名を使うことを許そう。今後もアディー商会が発展することを期待している」


商人たちはその褒美に驚く。当然であろう、店舗を構えるだけでもかなりの金額がかかるうえ、従業員集めも大変だ。それを1店舗ではあるが国が負担してくれるという。そのうえ、その店舗には王の名を用いてもよいと言われているのだ。これは、その店舗がコーカリアス王国の国王が公認の店舗であるということを指し、その集客力は計り知れない。


「感謝いたします。今後ともアディー商会をよろしくお願いいたします」


「うむ、覚えておこう。また、3位までに入賞した商会は後日、晩餐会に招待しよう。それでは、これにて露店祭は閉幕だ!」



王の言葉によって露店祭は終わりを迎えた。かくして、露店祭は幕を閉じたのだ。みな、露店祭の余韻に浸っており、笑顔があふれている。しかしその中には心からの笑顔ではなく、不敵な笑みを浮かべているものが一人いた。そして、露店祭の結果に疑問を浮かべる者もいたのであった。


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