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58 露店祭前日

クレハがピトリスの街に帰ってきた日からしばらく経ち、今日は再び王都に向かう日だ。今日までにクレハとルークは露店祭でクレハ商会を抜けている間にも商会を続けるためにクレハの宿で働いている従業員に対して商品の製造方法や販売方法などの教育を行っていた。そのかいもあって今では立派に仕事を任せられるほどに成長していた。


今クレハ達は王都に向かうための準備を終え、残る従業員たちと最後の別れを告げていた。


「それでは私たちは今から王都に向かいますね。私たちがいない間の商会は任せますね」


「はい、お任せください会頭。留守の間は私たちが商会を守ります。会頭、ルークさん露店祭で優勝して下さいね!」


「もちろん、やるからには優勝一択よ!ねっ、ルーク」


「そうですよオーナー!たくさん売ってクレハ商会の名を王国に轟かせますよ!」


クレハとルークはそう意気込むと二人で王都へと旅立つ。




クレハとルークが王都に着くと早速露店の準備を始める。露店祭は明日から始まるため、準備を急がなければならない。幸いなことに露店自体は大会委員会が貸し出しているため、自分たちで調達する必要はない。特徴のない露店の目の前に着くとクレハはあたりを見渡す。


抽選会の時にも確認したがクレハたちの露店がある場所はあまり人通りが良いとは言えなかった。しかし、いまさらそのことを嘆いても仕方ない。クレハはこんな時のために周囲の目を引く看板を作製していた。


クレハはどれだけ美味しい竜田揚げを露店祭で売り出しても客が誰一人と来なければ意味がないと考えていたからだ。


「ルークこの看板を設置したら明日の仕込みを始めますよ!」


「はーい、オーナーちょっと味見もしていいですか?僕あの竜田揚げがすっかり好きになっちゃいました!」


「少しだけですよ。ルーク、なんだかサラさんみたいね」


ようやく明日は露店祭1日目、自らの商会が王に認められるために商人たちは己のすべてをかけて戦う。その戦いが本当の実力によって行われるものかはクレハたちはまだ知らない。




コーカリアス王国・王城

「クシュン」


「あら、サラ風邪ですか?」


「失礼しました王妃様。特に風邪などではないと思うのですが?」


「では、あなたのことを誰かが噂しているのかもしれませんね。明日は待ちに待った露店祭ですもの。きっと食べ物を出す商会がサラが商品を食べつくしてくれることを望んでいるのだわ」


「王妃様、いくら私が食べ物に興味があるからってそこまでではないです」


「あら、そうなの?それはごめんなさいね」


「そうです!気に入ったとしてもせいぜい店の商品の8割くらいしか食べませんよ」


「サラそれはあんまり変わらないと思いますよ。すでに手遅れでしたか」


王妃は自分に仕えているサラの残念な言動に一人、頭を抱えるのだった。


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