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55 抽選会

今日、クレハは王都にある大会委員会で開催される露店祭の露店を出店するための場所を決める抽選会に来ていた。毎年、大通りに面している露店の売り上げが高い傾向にあり、各商会はこの抽選会に気合を入れて臨んでいる様子だった。


クレハは一人で来ているため、知り合いのノイマンがここにいないかを探し始める。周囲を確認するとノイマンとその娘であるライラが二人で話していた。クレハは久しぶりに会ったライラにも挨拶をしていきたいと二人の元へと向かう。


「お久しぶりです、ライラさん。こんにちは、ノイマンさん」


クレハの声にノイマンとライラの二人は振り返る。その声の主がクレハと分かり二人は笑顔で挨拶を返す。


「こんにちは、クレハさん」


「あら、クレハさんじゃない!久しぶりね、最近商会の方はどう?」


「はい、最近は新しい事業も展開していて順調なくらいですよ」


「そういえば、うちの紹介で雇った従業員が働いている宿屋があったわね。うわさに聞くと、とっても寝心地が良いベッドがあるらしいわね。今度お邪魔しようかしら」


「ぜひ、いらしてください。きっとご満足いただけますよ。そういえば、露店ではどんなものでも売れるとのことですが、ノイマン商会ではどんなものを売る予定なんですか?」


クレハはノイマン商会がどの商品をもとに露店で商売を行っていくのかが気になり、二人に尋ねる。その問いに答えたのはノイマンだった。


「我々の商会ではお酒を出そうと考えています。最近、他国で質の良いお酒を見つけましてね、その味が大変気に入りましたので、今年はそちらで勝負をしようかと。クレハ様はどのようなものを販売するのですか?」


「私の商会では竜田揚げという食べ物を提供するつもりです」


「ほう、初めて聞く名前ですね、ですがクレハ様が出される食べ物であれば間違いないでしょう。ぜひ露店祭の時にはお邪魔させていただきます。」


「ありがとうございます。きっと食べると驚かれると思いますよ」


クレハたちがそんな話をしていると、大会委員会と思われる男が抽選会に来ている商人たちに抽選会を始めることを伝える。大会委員は露店を出店できる場所にあらかじめ番号を書いたものを張り出す。商人たちが抽選会にて番号の書いた紙をそれぞれ一枚引き、自分たちの出店場所を決定する。


続々と商人たちが番号の書いた紙を引いていく。ノイマンとライラの二人と共にクレハも番号の書かれた紙を引きに行く。クレハは自分の引いた番号と張り出された店の場所を示す番号を確認する。


(はぁ、私のクジ運はとことん悪いようですね。立地なんて商売の基本でしょうに)


クレハの引いた紙が指し示す番号は露店が立ち並ぶ一番端の方で立地条件としては最悪であった。そんな結果にクレハがため息をついているとノイマンたちが話しかけてくる。


「クレハさん、抽選の結果はどうでしたか?」


「ノイマンさん、どうやら私の運は最悪のようですね」


クレハはそう言いノイマンたちにクジの結果を見せる。それを確認すると、ノイマンは顔をしかめる。


「これは、どうやらクレハさんのおっしゃる通りのようですね」


「仕方ありません、そういえばノイマンさんたちはどうだったんですか?」


クレハは自分を心配しているノイマンたちのクジ運はどうだったのかを尋ねる。


「私たちは運よく大通りに面した場所に出店できることに決まりました」


ノイマンはクレハに笑顔を向けながら自身の引いた紙をクレハに見える。


「うらやましいですわ。わたしなんてクジ運に見放されていると言いますのに。ですが、それでもノイマンさんたちとの勝負に勝って見せますわ!」


クレハは再び気合を入れ、ノイマンたちに意気込みを示す。そんなクレハたちにどこからか憎らし気な声をかける者がいたのだった。


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