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46 海水塩の普及

王がアルタル王国の件で連日の会議に疲れが隠せなくなっているところに、王妃が彼の部屋を訪ねる。


「陛下、陛下!塩が、塩が作れました!これで問題もすべて解決します」


王には彼が愛すべき王妃が信じられないことを言っており、自分は過労のせいで夢でも見ているのではないかと考えていた。


「陛下!聞いておられますか?塩ができたのです。これでアルタル王国の無茶な要求を聞かなくても大丈夫です」


そう告げる王妃の言葉に王の脳は次第に覚醒する。


「ナ、ナタリー本当に塩ができたのか?」


「はい、これができた塩です。是非食べてみてください」


王はナタリーが差し出した塩を一つまみする。本来であれば毒見役を通さず口にものを入れることはないが、この時はナタリーが持ってきたことと、連日に続く会議のせいでそのようなことは考えず、塩を口に入れる。普段の塩では感じられないような柔らかな味に王は驚きを隠せない。


「うまい、しっかりとした味で甘みもある。それにとてもまろやかだ。ナタリー、これはいったいどうしたのだ?」


王はこの塩を王妃がどこで手に入れたのかを訪ねる。


「以前お話しした、商会の会頭に何かアイデアがないかを尋ねたところ海水から塩を作ったのですよ」


「なに、この塩は海水からできているのか?だが、海水からできた塩は苦くて食えたものではなかったのではないか?」


「その会頭は苦くない塩の作り方を知っていたのです。すでに、製造方法も聞き、売り上げの一部を渡すことで、国で販売を行うという話になっています。ですので、すぐにでも生産に取り掛かれます」


王妃の手際の良さに驚きつつも、すぐに問題を解決するために至急、塩の製造に取り掛かるように命令を出す。そして、王妃にその塩の製法をもたらした商会の会頭はどこにいるのかを訪ねる。


「それでナタリー、その塩の製法を知っていた商会の会頭はどこにいるのだ。我が国にとって多大な貢献をしたのだ。ぜひ、王である私から直接礼を言いたいのだが」


「陛下、その商会の会頭であるクレハは既に帰りました。しかし、彼女はいずれまた何かをなすでしょう。その時に、お会いするのはいかがでしょう?」


「そうか、そうであるのなら仕方ない。また次の機会にするとしよう。その時は今回の件も含めて、私からの礼と褒美を出そうではないか」


「そうしていただくと私もうれしいですわ、陛下」


王と王妃は今まで大変だった問題が解決したため久しぶりに二人で笑いあったのだった。そこには先ほどの王の疲れた顔はなかった。



それからしばらくして、コーカリアス王国には美味しい塩が普及し始めた。


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