40 シルドラ家の悪夢再び
諸国会議が終わり、ライスオット帝国に帰還したライスオット帝国の宰相は諸国会議で貿易がうまくいかなかった原因であるシルドラ家当主であるクリフを王城にある執務室に呼び出す。
宰相は諸国会議で止まっていた仕事を片付けながら、クリフを待つが、その形相は誰が見ても不機嫌だった。そんな中、クリフが宰相の元を訪れる。
クリフは宰相に呼ばれた理由が自らに何か頼みごとがあるのではないかと考えていた。そのため、できるだけ宰相からの報酬を引き上げた後に、少し低めの報酬で折れることによって宰相に貸しを作ろうとしていた。それによって、第四皇子との娘の婚約破棄をなかったことにしようと考えていたのだ。宰相が言うことであれば王も聞き入れるはずだと。
クリフは宰相との話し合いでどのように話を進めていくのかを考えながら扉をたたく。
「およびですかな、宰相殿。私に用とは何でしょうかな?何か私に頼み事でもありますかな。もしそうであれば、ほかならぬ宰相殿の頼みですので私にできることならお手伝いさせていただきます。しかし、ぜひ私の娘のサンドラと第四皇子との結婚を王に認めていただけるように宰相殿から一言いただければ私のやる気もさらに上がりますかな」
クリフを罰するために呼び出した宰相はクリフがなぜ呼び出されたかも理解しておらず、そのうえ、自らに対して、のうのうと要望を告げる様に、もともと不機嫌であった顔がさらに不機嫌になる。
しかし、クリフは自らの願いを申し出るだけでそのことには気づいていない。そんなクリフについに宰相の怒りが向けられる。
「シルドラ伯爵!貴殿を呼び出したのはコーカリアス王国の商会に関してだ!コーカリアス王国の王妃のお気に入りの商会に手を出すとは何事だ。国際問題にでもしたいのか?貴様からすぐに貴族としての身分を取り上げることもできるのだぞ」
「ちょ、ちょっとお待ちください!いったい何のことなのですか?いくら他国の商会とは言え、コーカリアス王国の王妃のお気に入りの商会には手を出しません!何かの間違いです」
クリフは身の潔白を申し出る。その姿に宰相はクリフが自分に隠しているのだと思いさらに怒りを向ける。
「嘘を申すな!コーカリアス王国の王妃のお気に入りの商会、クレハ商会の会頭を呼びつけたにもかかわらず、まるで盗賊のように会頭を脅し商品を手に入れたと王国の宰相から聞いたのだぞ!」
その言葉を聞き、ようやく宰相が何のことを言っているのか理解したクリフは宰相に自らの考えを告げる。クリフはサンドラとマーラが商会を脅し商品を手に入れた際のことを聞き、その商会のことを調べさせたのだ。すると、その商会とはもともとシルドラ家にいたクレハのことだったのだ。クレハはシルドラ家では何をされても、ただ黙っているだけであったため、そのことはばれるはずがないと考えていた。
しかし、クレハのことを気に入った王妃は独自にクレハの素性を調べ上げ、そのことに気づいていたのだ。そのことを知らないクリフは宰相に言い訳をする。
「宰相殿、それは誤解です。あれはもともとわが家の娘でしたが使えないため、追い出したのですよ。そのため、あれに関しては私がどうしようと問題ありません」
この時、宰相は初めてコーカリアス王国の王妃のお気に入りの商会の会頭がシルドラ家を追い出された者だと分かったのだ。自国の貴族家から追い出された人間が他国の王族に気に入られているということはライスオット帝国に見る目がなかったということになり、帝国の失態を周囲に触れ回っていると同義である。そのため、宰相の怒りは限界を迎えた。
「きさまぁ!何を言っているのか分かっているのか。貴様の追い出した娘が王国の王妃に気に入られているのだぞ!この意味が分かるか!それに、貴様とクレハ商会の関係が安泰であれば諸国会議での王国との貿易で赤字を出すこともなかったんだぞ!この失態はいずれ償わしてやる!話は終わりだ、さっさと出ていけ」
宰相に部屋を追い出されたクリフは最後まで何を言われているのか理解できなかった。
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