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36 クレハの宿での事件

クレハ商会では翌日の商品のための準備を終えルークは最後の片付けをし、クレハは残りの仕事をルークに任せ、休もうとしていた。しかし、彼女は何とも言えないような胸騒ぎのせいでなかなか寝付けないでいた。


彼女が、ふと商会の窓からクレハの宿を見るとそこには複数の人影がいた。ここは貿易都市でもあるので夜中でもある程度、人通りはあるが、そこにいる人影はじっと何か目的があるようにクレハの宿を囲んでいたのだ。


クレハは彼らが強盗でこの時期に宿に泊まっている金持ち商人たちをねらっているのではないかと考えた。クレハはルークがまだ商会に残っているのを確認し、衛兵を呼んでくることを頼んだ。


「ルーク、いますか」


「あっ、オーナーまだ休まれていなかったんですね。どうかされましたか?」


「ルークすぐに衛兵を呼んできてください。強盗かもしれません、クレハの宿がすでに大人数の者たちに囲まれています。私は従業員たちにこのことを知らせるために奴らの気を引きます」


ルークはクレハに促されるように商会の窓からクレハの宿のほうを見るとそこにはかなりの人影がクレハの宿を取り囲んでいた。クレハがおとりになると告げるとルークは恩人であるクレハにそのようなことをさせるわけにはいかないと自らがおとりになることを申し出る。


「それはダメです。僕が奴らの気を引くのでオーナーが衛兵を呼んでください」


「しかし、それではあなたが」


「オーナー!僕はあなたに多大な恩があります。こんな時くらい返させてください!」


クレハは頑なに自分がおとりになると言うルークに根負けし、ルークに別れを告げると少しでも早く衛兵を呼ぶために詰所へと走る。


「ルーク、絶対に無茶はしないでください。約束ですよ。破ったらクビですからね」



クレハが去って行ったあと、ルークは自らを鼓舞するため、頬を両手でたたく。しかし、誰も気づいていないが彼の膝は人知れず笑っていたのだ。ルークは宿の従業員と宿泊客を守るために、キッチンにある調理器具を持ち彼らに向かっていく。




ルークが彼らの元につくと、まさにクレハの宿に押し入ろうとしている瞬間だった。その行為にルークは彼らが強盗であると確信し、従業員や宿泊客に知らせる目的もあり、大きな声で彼らに叫びかける。


「お前たち、いったい何をしているんだ!」


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