353 うっかり告白
それはクレハがこの学園に来てもうじき、一か月が経とうとしていた頃だった。もともと、クレハ商会の会長を務めている優秀な人間が教師としてこの学園にやってくるとギュラー以外の人間には歓迎されていたが最近ではその傾向がさらに強くなっていた。
「クレハ先生、この香りどうですか!クレハ先生の商会の香水をつけてみたんですよ。クレハ先生の所のは手ごろな価格なんで私でも買うことができますよ。ありがとうございます。」
「これはレモンの香りですね。とっても爽やかでお似合いですよ。」
クレハ商会の香水は手ごろな価格であり、種類も豊富であるため、学園にも広まっており、女子生徒などはかなりの人数が使用している。
そうなってくると当然、香水の事業を行っているホルイン家と生徒たちの間で比較されるようになるわけで・・・。
「ねぇ、この香水、良いと思わない。」
「ほんと、香りも日によって変えられるうえにそんなにお金もかからないし、助かっちゃうわよね。」
「そういえば、私、一回だけ、ホルイン家のバラの香水を使ったことがあるんだけど、この香水とどう違うか分からなかったわ。それなのに、信じられないほど高いんだもの。香りも一種類しかないから普段から使うものでもないし。」
「あぁ、確かにその話は聞いたことがある。有名なんだけど、それだけなのよね。物も変わらないのなら安くて種類も多いほうが良いわよね。」
ブランドという力だけでホルイン家が今まで努力を行わずにいた結果、クレハ商会の香水と比較を行うと一目瞭然となってしまったのだ。
そんな風に学園中の女子生徒たちの間でクレハ商会の香水が有名になればギュラーの耳にその話が入らないはずがなかった。
「ふざけんな、てめぇ!なんのつもりだ!」
いつもの様に授業が始まり、クレハが教室にやってくると突然、ギュラーが彼女に怒号をぶつける。
「えっ、急に何の話ですか?」
「香水の件だよ、香水の件!言ったよな、学園長が変態ってことをばらされたくなければ言うことを聞けって!」
「あっ、・・・。いや、学園長の本性をばらすのは私は別にいいんですけど、そんなことを大声で言ってしまえば秘密は秘密でなくなりますよ。」
「あっ、・・・。」
ギュラーは自分の発言に咄嗟に口をふさぐも既にクラスメイト全員に聞かれてしまった後だった。もちろん、リゼランは二人の会話を隣で聞いており、頭を抱えてしまっている。
ついに、学園長の秘密、彼女が信じられないほど変態であるということがバレてしまったのだ。
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