345 目撃
学園長はクレハから放たれた予想外の発言に先ほどの自信満々の表情を一瞬で無くしてしまう。
「え~っと、一体どういうことでしょうか?」
「学園長はこの学園の実態を把握していなかったということですね。」
クレハはこの学園に来てからというもの、ギュラーの態度があまりにも酷いものであるということをすべて話す。
「なんと、そんなことが。」
「あぁ、そう言えば、そんな生徒がいれば私が何をやっても学園長が何とかしてくれるんですよね。このまま教師としての期限が来る前に爆発して伯爵家ともめてしまっても良いですか。」
「えっ、あぁ、ええっと、いや、・・・。」
「あれ、以前そんなお話をされていませんでしたっけ?」
学園長が以前のクレハとの話を思い出し、目をそらしているとクレハはニヤニヤとしながら彼女に尋ねる。別にクレハとしては彼女を責めているわけではないがここまであからさまに動揺しているとストレス発散もかねて弄りたくなってしまったのだ。
「あははっ、いえ、あれは売り言葉に買い言葉でして・・・。」
「なるほど、学園長は自分が約束したことも守ってくれないんですね。はぁ、この国の最高教育機関の長である人物がそのような方であったとは、私は悲しいです。およよよっ。」
「む、むぐっ。」
クレハは泣きまねをしながらチラチラと学園長を見ると彼女は完全に言いよどんでいた。
「ふふっ、冗談ですよ。私だって子供じゃないんですから、教師としての務めはちゃんと果たしますよ。教師であるうちは彼の家には喧嘩は仕掛けませんよ。」
クレハが冗談であると学園長に伝えるも彼女は何かのスイッチが入ってしまったようだ。
「分かりました、分かりましたよ。私の務めは生徒たちを守ることですが、一人の問題児よりも全体の利益を優先します!何をしても私が責任を取りますからどうか教師を辞めないでくださいよ~。ふがっ、ふがっ、ぶはっ。」
学園長は急に泣き出しはじめ、鼻水をクレハに塗りたくりながら顔をうずめるのだった。ちなみに、その際にクレハの匂いを嗅いでいるのはご愛敬だ。そんな時だ、地面に何かが落ちるような音がしたのは。
その音にクレハと学園長が振り向くと、いつもはおとなしそうなリゼランが大きな口を開け、見てはいけないようなものを見てしまった時の表情を浮かべていたのだ。
「が、学園長、一体何をなされているのですか・・・・・。」
「あっ、いや、これはですねリゼラン先生、えっと、あぁ、これはクレハ様の祖国に伝わる挨拶の方法なんです!独特ですよね、アハハハッ。」
学園長は今までクレハ以外に隠していた自分の本性がリゼランにバレてしまったと何とか誤魔化そうとするがどう考えても無理な言い訳である。
「で、でも、先ほどからクレハ先生の匂いを気持ち悪い声を上げながら嗅いでましたよね。」
「えっ。」
「学園長、その言い訳は無理がありませんか。素直に認めればいいじゃないですか、自分は超が付くほどの変態だって。あと、この服、ダメになったので弁償してくださいね。あなたの体液が付いた服なんて気持ち悪くて着る気になれませんから。」
「が、学園長、嘘ですよね・・・。」
もはや、リゼランが学園長を見る目は今までの尊敬したまなざしではなく、汚物を見るような冷ややかな目であった。
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