331 帝国商人への対抗策
「おい、もしかしてお前も例の件で呼ばれたのか?」
「えぇ、ということは、もしかしてあなたも?」
ここには数多くの人間たちが集まっており、どうやら本人たちはその心当たりがあるようだ。そんな彼らが自分達を呼び出した人間の存在を今か今かと待っているとそこに現れたのはクレハ本人であった。
「皆さん、お集まりいただきありがとうございます。さて、今回皆様をお呼びした理由は把握されているかと思いますが私からの要件は一つです。皆さん、私と商人として契約を行いませんか?」
ここに集まった人間たちはその理由を把握していたため、クレハの言葉はある程度、予想していた。しかしながら、それでもこの現状には驚きを隠せないのである。
なぜ、彼らが驚きを隠せないのかと言えばここに呼び出された彼らの正体は保険事業を真似し、結果的には店を畳むことになった商人たちだったのだ。
「ま、待ってくれ、あんた俺たちがどういう人間か分かっているんだろ、そんな人間と何で契約なんかするんだよ。」
彼等はクレハからすれば自分の商売を真似した人間たちで、そんな彼らに対して彼女が良い感情など抱いていないと考えていたのだ。だからこそ、彼女の口から商人として契約を結ぼうという話が上がったことに疑問を感じ得なかったのだ。
「もちろん、承知していますよ。しかし、私にも色々事情があるんですよ。ですが、これは皆さんにとっても美味しい話ですよ。お店が無くなった皆さんが元の生活に戻るチャンスでもあるんですから。」
「えっ、それってどういうことですかい?」
「既にあなた方が畳んだ店をうちの商会で買い取っています。しかしながら現状ではその店を運営していく人間がいません。さて、そこで相談ですがそのお店を一番うまく運営していくことが可能な人は誰でしょうか?そう、ここにいる皆さん一人一人です!」
王妃の話では店を畳むことになった商人が大量に出てきてしまったせいで帝国の商人の勢力が増してきたのだ。それならばと、クレハは売りに出されている彼らの元の店を買い取り、その店で商人たちを働かせればよいと考えたのだ。
これこそが、様々な商品を売り出している帝国の商人たちに対して同様の商品を売り出すことができるクレハの計画だったのだ。
そのうえ、店の権利自体はクレハ商会であるため、クレハ商会の商品も追加で提供することができ、更なる集客力が見込める商店になると彼女は考えていたのだ。
店を失った商人たちからすれば一番の問題はその働き口だろう。だからこそ、彼らにとってクレハの提案は非常に魅力的であった。しかしながら、これは自分たちに非があるとはいえ、結果的にはクレハに店を乗っ取られているようなもので否定的な意見の者もあらわれるのであった。
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